一類感染症


(1)エボラ出血熱
[定 義]
 エボラウイルス(フィロウイルス科)による熱性疾患である。

[臨床的特徴]
 潜伏期間は2〜21日で、平均1週間、針刺しによる場合は6日で、発症は突発的である。初期症状は発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、咽頭痛で、次いで下痢、腹胸部痛が続く。一過性に皮膚発疹が出ることもある。その他滲出性の咽頭炎、結膜炎、黄疸、浮腫が見られる。発症3日後から出血傾向が見られる。点状出血、 幹部出血に続き、消化管出血、嘔吐があらわれる。死亡例の90%で重篤出血が見られている。ヒトからヒトへの感染は、血液、体液、排泄物等との直接接触により、空気感染は否定的である。

[報告のための基準]
 ○ 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの
  (材料)血液、血清、剖検材料及び生剖検皮膚(ホルマリン固定)など
   ・病原体の検出
     例、ウイルスの分離など
   ・抗原の検出
     例、ELISA法など
   ・病原体の遺伝子の検出
     例、PCR法など
   ・血清抗体の検出
     例、IgMあるいはIgGの免疫蛍光法あるいはELISA法による検出など

 ○ 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体か抗原が検出されたもの
   (病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものを含まない)

 ○ 疑似症の診断
   臨床的特徴に合致し、以下の疾患の鑑別診断がなされたもの
   (鑑別診断)他のウイルス性出血熱、チフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱等

[備 考]
 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものについては、法による報告は要しないが、確認のため保健所に相談することが必要である。

 

(2)クリミア・コンゴ出血熱
[定 義]
 クリミア・コンゴウイルス(ブニヤウイルス科)による熱性疾患である。

[臨床的特徴]
 潜伏期間は2〜9日。初期症状は特異的ではない。時に突発的に発生する。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐がみられ、続いて咽頭痛、結膜炎、黄疸、羞明及び種々の知覚異常が現れる。点状出血が一般的にみられ、進行すると大紫斑も生ずる。特に針を刺した部位から拡がる。重症化するとさらに全身出血、血管虚脱を来し、死亡例では消化管出血が著明である。肝・腎不全も出現する。血液と体液は感染力がきわめて強い。

[報告のための基準]
 ○ 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの
  (材料)血液、血清
   ・病原体の検出
     例、ウイルスの分離など
   ・抗原の検出
     例、ELISA法など
   ・病原体の遺伝子の検出
     例、PCR法など
   ・血清抗体の検出
     例、IgGのIFA、補体結合反応による検出など

 ○ 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体か抗原が検出されたもの
   (病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものを含まない)

 ○ 疑似症の診断
   臨床的特徴に合致し、以下の疾患の鑑別診断がなされたもの
   (鑑別診断)他のウイルス性出血熱、チフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱等

[備 考]
  当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものについては、法による報告は要しないが、確認のため保健所に相談することが必要である。

 

(3)ペスト
[定 義]
 腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌であるYersinia pestis の感染によって起こる全身性疾患である。

[臨床的特徴]
 リンパ節炎、敗血症等を起こし、重症例では高熱、意識障害などを伴う急性細菌性感染症であり、死に至ることも多い。臨床的所見により以下の3種に分けられる。

(a) 腺ペスト(ヒトペストの80〜90%を占める)
潜伏期間は2〜7日。感染部のリンパ節が痛みとともに腫れる。菌は血流を介して全身のリンパ節、肝や脾でも繁殖し、多くは1週間くらいで死亡する。
(b) 敗血症ペスト(約10%を占める)
時に局所症状がないまま敗血症症状が先行し、皮膚のあちこちに出血斑が生じて全身が黒色となり死亡する。
(c) 肺ペスト
ペスト菌による気管支炎や肺炎を起こし、強烈な頭痛、嘔吐。39〜41℃の弛張熱、急激な呼吸困難、鮮紅色の泡立った血痰を伴う重篤な肺炎像を示し、2〜3日で死亡する。


[報告のための基準]
 ○ 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断がなされたもの
  (材料)臨床材料(血液、リンパ節腫吸引物、痰、組織等)
   ・病原体の検出
     例、ペスト菌(Yersinia pestis)の分離・同定(染色後塗沫標本の鏡検も参考となる)など
   ・抗原の検出
     例、エンべロープ(FractionI抗原)抗原に対する蛍光抗体法など
   ・病原体の遺伝子の検出
     例、ペスト菌特異的遺伝子のPCR法による検出など

 ○ 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体か抗原が検出されたもの
   (病原体や抗原は検出されず、遺伝子のみが検出されたものを含まない)

 ○ 疑似症の診断

[備 考]
 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものについては、法による報告は要しないが、確認のため保健所に相談することが必要である。

 

(4)マールブルグ病
[定 義]
 マールブルグウイルス(フィロウイルス科)による熱性疾患である。

[臨床的特徴]
 潜伏期間は3〜10日間である。発症は突発的である。発熱、頭痛、筋肉痛、皮膚粘膜発疹、咽頭結膜炎に続き、重症化すると下痢、鼻口腔・消化管出血が見られる(エボラ出血熱に類似する)。マールブルグウイルスの自然界からヒトへの感染経路は不明である。ヒトからヒトへは血液、体液、排泄物との濃厚接触及び性的接触によりウイルスが伝播する。ドイツにおける大発生(1967年)においてはアフリカミドリザルの血液、組織との接触によるものであった。アフリカ(ケニヤ等)での発生例にはサルは無関係であった。治療法はなく、対症療法のみである。

[報告のための基準]
  (材料)血液、尿、咽頭スワブ等
   ・病原体の検出
     例、ウイルスの分離など
   ・抗原の検出
     例、ELISA法による特異抗原の検出など
   ・病原体の遺伝子の検出
     例、PCR法など
   ・血清抗体の検出
     例、免疫蛍光法、ELISA法など

 ○ 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体か抗原が検出されたもの
   (病原体や抗原は検出されず、遺伝子のみが検出されたものを含まない)

 ○ 疑似症の診断
    臨床的特徴に合致し、以下の疾患の鑑別診断がなされたもの
    (鑑別診断)他のウイルス性出血熱、チフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱等

[備 考]
 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものについては、法による報告は要しないが、確認のため保健所に相談することが必要である。

 

(5)ラッサ熱
[定 義]
 ラッサウイルス(アレナウイルス科)による熱性疾患である。

[臨床的特徴]
 発症は突発的で進行は緩やかである。マストミスに咬まれたり尿や血液に触れる、あるいは感染発症者の血液、体液、排泄物等に直接接する等の後、潜伏期間(7〜18日)を経て、高熱(39〜41℃)、全身倦怠感に続き、3〜4日目に大関節痛、咽頭痛、咳、筋肉痛、次いで心窩部痛、後胸部痛、嘔吐、悪心、下痢、腹部痛が認められる。重症化すると顔面頸部の浮腫、眼球、結膜、消化管出血、心のう胸膜炎、ショック。重症経過で治癒後は、一側あるいは両側のろう(難聴)を示すことが20%以上ある。発症期の症状はインフルエンザ様である。

[報告のための基準]
 ○ 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの。
  (材料)血液、血清、尿、咽頭スワブ及び剖検材料等
   ・病原体の検出
     例、ウイルスの分離など
   ・抗原の検出
     例、ELISA法など
   ・病原体の遺伝子の検出
     例、PCR法など
   ・血清抗体の検出
     例、IgM、IgGの免疫蛍光法による検出など

 ○ 当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体か抗原が検出されたもの
   (病原体や抗原は検出されず、遺伝子のみが検出されたものを含まない)

 ○ 疑似症の診断
    臨床的特徴に合致し、以下の疾患の鑑別診断がなされたもの
    (鑑別診断)他のウイルス性出血熱、チフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱等

[備 考]
  当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体や抗原は検出されず、遺伝子や抗体のみが検出されたものについては、法による報告は要しないが、確認のため保健所に相談することが必要である。

 

>>一覧表へ