健医感発 第89号
平成6年10月11日
都道府県
政令市 衛生主管部(局)長 殿
特別区
厚生省保健医療局
エイズ結核感染症課長

サーベイランスのためのAIDS診断基準の改訂について

 サーベイランスのためのエイズの診断については、昭和63年4月14日付健医感発第26号厚生省保健医療局結核難病感染症課感染症対策室長通知「サーベイランスのためのAIDS診断基準」に基づき行うようお願いしているところであるが、今般、わが国のサーベイランスのためのAIDS診断基準を別添の通り改訂することとしたので、その取り扱いについて遺漏なきを期されるとともに、医療関係者その他関係機関等に対する周知方につき、よろしくお願いする。
 また、これに伴い、平成元年2月10日付健医感発第14号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知の別添様式1、様式3、様式4、様式5を別添の通り改訂することとしたので、あわせて周知方等お願いする。
 なお、本通知は平成7年1月1日診断分から適用する。
 おって、「サーベイランスのためのAIDS診断基準について」(昭和63年4月14日付健医感発第26号厚生省保健医療局結核難病感染症課感染症対策室長通知)は廃止する。

 別添様式 1、3〜5 略 

別添

サーベイランスのためのAIDS診断基準

(厚生省エイズサーベイランス委員会、1994)

 我が国のエイズサーベイランス委員会においては、下記の基準によってAIDSと診断することとする。

I HIV検査で感染が認められた場合
 酵素抗体法(ELISA)又はゼラチン粒子凝集法(PA)といったHIVの抗体スクリーニング検査法の結果が陽性で、かつWestern Blot法又は蛍光抗体法(IFA)といった確認検査法の結果も陽性であった場合、または抗原検査、ウイルス培養、PCR法などの病原体に関する検査(以下、「病原検査」という。)によりHIV感染が認められた場合であって、下記の特徴的症状(Indi−cator Diseases)の1つ以上が明らかに認められるときはAIDSと診断する。
 なお、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15か月未満の児については、II によることとする。

II 周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15か月未満の児の場合
 周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15か月未満の児については、HIVの抗体確認検査が陽性であっても、それだけではHIV感染の有無は判定できないので、さらに以下の(1)または(2)のいずれかに該当する場合で免疫不全を起こす他の原因が認められないものをAIDSと診断する。

(1) HIV抗原検査、ウイルス分離、PCR法などの病原検査法が陽性で、特徴的症状の1つ以上が明らかに認められるとき
(2) 血清免疫グロブリンの高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少といった免疫学的検査所見のいずれかを有する場合であって、特徴的症状の1つ以上が明らかに認められるとき 

(特徴的症状)

カンジダ症(食道、気管、気管支又は肺)
クリプトコックス症(肺以外)
クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)
サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以上で、肝、脾、リンパ節以外)
単純へルペスウイルス感染症(1か月以上継続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの又は生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの)
カポジ肉腫(年齢を問わず)
原発性脳リンパ腫(年齢を問わず) 
リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
非定型抗酸菌症(結核以外で、肺、皮膚、頚部もしくは肺門リンパ節以外の部位、又はこれらに加えて全身に播種したもの)
10 ニューモシスチス・カリニ肺炎
11 進行性多発性白質脳症
12 トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)
13 化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌による敗血症、肺炎、髄膜炎、骨関節炎又は中耳・皮膚粘膜以外の部位の深在臓器の腫瘍が2年以内に、二つ以上、多発あるいは繰り返して起こったもの)
14 コクシジオイデス症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)
15 HIV脳症(HIV痴呆、AIDS痴呆又はHIV亜急性脳炎) 
16 ヒストプラスマ症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に、又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)
17 イソスポラ症(1か月以上続く下痢)
18 非ホジキンリンパ腫(B細胞もしくは免疫学的に未分類で組織学的に切れ込みのない小リンパ球性リンパ腫又は免疫芽細胞性肉腫)
19 活動性結核(肺結核(13歳以上)又は肺外結核)
20 サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)
21 HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)
22 反復性肺炎
23 浸潤性子宮頚癌
※19のうち肺結核、22、23は1994年の新たな診断基準で採用された特徴的症状である。
※※肺結核及び浸潤性子宮頚癌については、HIVによる免疫不全を示唆する症状または所見がみられる場合に限る。

(付記)AIDSに関連する特徴的症状の診断法

カンジダ症(食道、気管、気管支又は肺)
 内視鏡もしくは剖検による肉眼的観察又は患部組織の顕微鏡検査によって、カンジダを確認する。
 ただし、嚥下時に胸骨後部の疼痛があり、かつ紅斑を伴う白い斑点又はプラク(斑)が肉眼的に認められ、粘膜擦過標本で真菌のミセル様繊維を顕微鏡検査で確認できる口腔カンジダ症が存在する場合はカンジダが確定診断されなくとも食道カンジダ症と診断してよい。
クリプトコックス症(肺以外)
 顕微鏡検査又は培養によるか、患部組織又はその浸出液からクリプトコックスを検出することによって診断する。
クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)
 顕微鏡検査によって診断する。
サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以上で、肝、脾、リンパ節以外)
 顕微鏡検査によって診断する。
 ただし、サイトメガロウイルス性網膜炎は眼底検査によって、網膜に鮮明な白斑が血管にそって遠心状に広がり、数カ月にわたって進行し、しばしば網膜血管炎、出血又は壊死を伴い、急性期を過ぎると網膜の痂皮形成、萎縮が起こり、色素上皮の斑点が残るという特徴的な臨床像から診断してよい。
単純へルペスウイルス感染症
 1か月以上継続する粘膜、皮膚の潰瘍を形成するもの又は生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を合併するもので、顕微鏡検査又は培養によるか、患部組織又はその浸出液からウイルスを検出することによって診断する。
カポジ肉腫
 顕微鏡検査によって診断する。
 肉眼的には皮膚又は粘膜に特徴のある紅斑又はすみれ色の斑状の病変を認めることによる。
 ただし、これまでカポジ肉腫を見る機会の少なかった医師は推測で診断しない。
原発性脳リンパ腫
 顕微鏡検査もしくはCT又はMRIなどの画像診断法によって診断する。
リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
 顕微鏡検査によって診断する。
 臨床的には胸部X線で、両側性の網状小結節様の間質性肺陰影が2か月以上認められ、病原体が同定されず、抗生物質療法が無効な場合はLIP/PLH complexと診断する。
非定型抗酸菌症(肺、皮膚、頚部又は肺門リンパ節以外、又はこれらの部位に加えて全身  播種したもの)
 細菌学的培養によって診断する。
 糞便、汚染されていない体液又は肺、皮膚、頚部もしくは肺門リンパ節以外の組織の顕微鏡検査で、結核菌以外の抗酸菌が検出された場合は非定型抗酸菌症と診断する。
10 ニューモシスチス・カリニ肺炎
 顕微鏡検査によって、カリニ原虫を確認する。
 ただし、最近3か月以内に運動時の呼吸困難又は乾性咳嗽があり、胸部X線でび漫性の両側間質像増強が認められ、又はガリウムスキャンでび漫性の両側の肺病変があり、かつ、動脈血ガス分析で酸素分圧が70mmHg以下であるか呼吸拡散能が80%以下に低下しているか、又は肺胞−動脈血の酸素分圧較差の増大がみられ、かつ細菌性肺炎を認めない場合は、カリニ原虫が確認されなくとも、ニューモシスチス・カリニ肺炎と診断してよい。 
11 進行性多発性白質脳症
 顕微鏡検査もしくはCT又はMRIなどの画像診断法によって診断する。
12 トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)
 顕微鏡検査によって診断する。
 臨床的には、頭蓋内疾患を示唆する局所の神経症状又は意識障害がみられ、かつ、CT又はMRIなどの画像診断で病巣を認め、又はコントラスト薬剤の使用により、病巣が確認できる場合で、かつ、トキソプラズマに対する血清抗体を認めるか、又はトキソプラズマ症の治療によく反応する場合はトキソプラズマ脳症と診断する。
13 化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌による敗血症、肺炎、髄膜炎、骨関節炎又は中耳・皮膚粘膜以外の部位の深在臓器の腫瘍が2年以内に、二つ以上、多発あるいは繰り返し起こったもの)
 細菌学的培養によって診断する。
14 コクシジオイデス症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)
 顕微鏡検査又は培養によるか、患部又はその浸出液からコクシジオイデスを認めることによって診断する。
15 HIV脳症(HIV痴呆、AIDS痴呆又はHIV亜急性脳炎)
 就業もしくは日常生活活動に支障をきたす認識もしくは運動障害が臨床的に認められる場合、又は子供の行動上の発達障害が数週から数か月にわたって進行し、HIV感染以外にこれを説明できる疾病や状況がない場合をいう。これらを除外するための検査法としては、脳脊髄液の検査や脳のCT又はMRIなどの画像診断や病理解剖などがある。
 これらは、確定的な診断法ではないがサーベイランスの目的のためには十分である。
16 ヒストプラスマ症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に、又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)
 顕微鏡検査又は培養によるか、患部組織又はその浸出液からヒストプラスマを検出することによって診断する。
17 イソスポラ症(1か月以上続く下痢)
 顕微鏡検査によって診断する。
18 非ホジキンリンパ腫(B細胞もしくは免疫学的に未分類で組織学的に切れ込みのない小リンパ球性リンパ腫又は免疫芽未細胞肉腫)
 ここに挙げたリンパ腫に中にはT細胞性のもの、組織学的な型の記載のないもの、又はリンパ球性、リンパ芽球性、切れ込みのある小リンパ球性もしくは類プラスマ細胞様リンパ球性と記載されたものは含まない。
 顕微鏡検査によって診断する。
19 活動性結核(肺結核(13歳以上)又は肺外結核)
 細菌学的培養によって診断する。培養結果が得られない場合には、X線写真によって診断する。
20 サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌を除く)
 細菌学的培養によって診断する。
21 HIV消耗性症候群
 通常の体重の10%を越える不自然な体重減少に加え、慢性の下痢(1日2回以上、30日以上の継続)又は慢性的な衰弱を伴う明らかな発熱(30日以上にわたる持続的もしくは間歇性発熱)があり、HIV感染以外にこれらの症状を説明できる病気や状況(癌、結核、クリプトスポリジウム症や他の特異的な腸炎など)がない場合にHIV消耗性症候群と診断する。これらは確定的な診断法ではないがサ一ベイランスの目的のためには十分である。
22 反復性肺炎
 1年以内に2回以上の急性肺炎が臨床上又はX線写真上認められた場合に診断する。 
23 浸潤性子宮頚癌
 病理組織学的検査による。