2.医療行為によるHIV感染の危険性

 我が国では未だ医療行為に伴うHIV感染例は報告されていない。1970年代初期の我が国でB型肝炎ウイルスの医療機関内感染が1年間に血液透析従事者の25%〜44%、他の医療従事者でも5%も発生した事態と比較して雲泥の差である。
 米国においては、未だ医療行為による感染でAIDSが発症した報告はない。しかし、医療従事者が職務上の不注意でHIVに感染する可能性は低いとはいえ、決してゼロではなく、職務にあたっては患者の血液や体液に接触したことにより抗体陽性となった医療従事者は、現在までに15例報告されている。これらのうちの大部分は、針刺し事故である。
 米国国立衛生研究所(NIH)、英国及びカナダの研究結果によれば、針刺し事故によるHIV感染の危険性は、全ての針刺し事故のおよそ0.5%程度であり、B型肝炎ウイルスに比べはるかに低く10分の1以下である。
 皮膚や粘膜が汚染されることは針刺し事故よりも多いと考えられるが、HIV感染の可能性はその物理的なバリアー作用、また血液中に入りにくいことを考えれば、針刺し事故よりもさらに低いと考えられる。