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第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

国立国際医療センター 井田 節子


 ICAAPには今回初めて参加した。session によっては諸国が抱えている医療問題・社会問題が浮かび上がっていた学会であった。普段直接的にHIVの国際社会での生の声を聞く機会が少ない私にとってはよい刺激を与えられた。しかし今回は"バリアをなくそう"というメインテーマだったこともあると思うが、全体的にbasic science 領域の演題が少ないという印象であった。本当にエイズ医療の格差を縮めるためには、エイズという疾病がどこまで解明され、これからの医療の向上を目指してどのような研究が必要なのか、どこに問題点があるのかといった視点に根ざしたbasic science領域の研究発表がもう少しあってもよいと思われた。たとえばHIVの薬剤耐性の動向などは医療先進国と後続国の共有する大きな問題と思われるが、両地域で抱える問題点に自ずと差があると思われる。このような点についてももっと大きなスポットが当たってもよいと思われた。今後HIV感染症の社会的な問題点とbasic science 領域での研究とのかみ合わせがますます潤滑に行われることが期待された。

 私は今回この学会で、HIV感染男性同性愛者におけるA型肝炎感染症についての研究報告を行ったのでその概要をここで報告する。A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)による経口感染症であるが、しばしば男性同性愛者コミュニティーでの流行が報告され性感染症の一面も持っている。国立国際医療センター・エイズ治療研究開発センターの男性同性愛者のHIV感染者においても1998年から1999年にかけて約1年間にわたるA型肝炎の流行がみられた。これらの患者のHAV遺伝子解析により、このA型肝炎の流行は同一のウイルスによって起こっていることが明らかであった。今までにHIV感染者と健常人間でのA型肝炎感染症の差についての詳細な研究報告はない。そこで臨床症状、血液中のHAV量、HAVの血液中での存在期間、臨床症状と血中HAVの有無との関連について解析を行い報告をした。研究結果のみを次に示す。

1)HIV感染男性同性愛者では、血液中のA型肝炎ウイルス量は健常者よりも有意に高かった。2)血中のHAVの検出可能期間は、健常者ではmedianは22日間であったが、HIV感染男性同性愛者では53日間であり、HIV感染者では有意に長期間にわたってHAVが体内に存在することが明らかであった。3)肝機能検査のうちalanine aminotransferase はHIV感染者では有意に低値を示した。しかしalkaline phosphataseはHIV感染者では有意に高値を示した。4)HIV感染者では肝機能検査値が正常化し臨床症状が改善した後にも血液中にA型肝炎ウイルスが証明される例が存在した。糞便中ではHAV量は血液中よりも多く、また長期間にわたって検出されることが報告されている。これらのことからHIV感染同性愛者ではA型肝炎ウイルスを暴露する機会が健常者よりも長いことが推測された。

 HIV感染者にとっては現実的な問題であるせいか、この研究発表に関して多くの人が感心を示していた。

 最後に発表の機会を与えてくださったエイズ予防財団に深謝いたします。ありがとうございました。