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第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

大阪HIV薬害訴訟原告団理事 藤原良次


 今回第6回アジア・太平洋エイズ会議に参加しましたので、その報告をさせていただきます。

 まずは、医療情報で目についたものから。「抗HIV治療を1ヶ月間中断し、その後治療を再開しても血液中ウイルス量が測定限界値まで下がった。」との報告がありました。詳しく述べると、2剤の逆転写酵素阻害剤と1剤のプロテアーゼ阻害剤を服薬していた患者が、他の疾患を患い、そのため服薬中止を1ヶ月行った。中断中はCD4値が300から100以下まで下がり、血液中ウイルス量も測定限界値から60万コピーまで上がった。1ヵ月後、中断前と同種の服薬を再開したところ、服薬1ヵ月後には血液中ウイルス量は測定限界値まで下がり,DNA量も中断前より減少した。しかし、CD4値は200代までしか回復しなかった。これにより、「服薬を中断してもウイルス量では成功する。」との結果が報告された。しかし、「CD4値の回復状況」「1ヶ月以上の場合はどうか」との問題もあるとの報告であった。この症例は1例であるが、治療において選択するかどうかは別にして、服薬中断の選択肢も可能になったようです。

  患者の立場から言うと、このような結果がほかにもたくさん報告されるようになれば、服薬をがんばることができるのではないか。と考える。島尾先生も「結核治療は服薬が半年間であることが、服薬アドヒアランスがよい一因になっているのでないか。」と言われていました。HIV治療も「何ヶ月間か服薬し、何ヶ月間は服薬なし」との治療になればなあ。

 C型肝炎治療において、インターフェロン単独では、600万単位を週3回投与のところを、リバビリン併用療法ではインターフェロン300万単位を週2回にすることが可能であるとの報告がありました。しかし、副作用についてはふれていないし、報告者にも効果、副作用の知識がないので、患者にとっていい報告かどうかは定かではありません。

  オーストラリアHIV感染者の心理調査では「鬱」「誰にも言えない」「現実を受け入れられない」「服薬上の問題」「経済的な問題」「ドラッグ・飲酒に逃げる」「家族・パートナー・友人の問題」「ドメスティック・バイオレンスの問題」等の問題を抱えているとの報告がありました。さらにこれらの問題を複数抱えているとの報告でありました。

 我々のピア・カウンセリングでも、同様の問題がある。違うところは、「ドメスティック・バイオレンス」の問題は起こっていないが、「子供がほしい」「社会復帰がしたい」等の問題が増えた。さらに、オーストラリア、我々双方に「死の恐怖、不安」の問題が表面化されなくなったのは、HIV感染症が慢性疾患になりつつあるからだと言えそうです。

  PWAルームでは地元患者さんと面談しました。詳しくは、プライバシーに関わることなので報告しませんが、彼にとっては経済的な問題、治療上での問題はなさそうでした。さらに、NGO「Queensland Positive People」発行のニュース、ホームページから、必要な情報をもらっているとのこと。報告者にも、申し込み用紙付きパンフレットとニュース最新号をくれました。又、彼は独自で、マルチビタミン等栄養補助食品、ハーブも試しているとのこと。報告者がC型肝炎にも感染していることを話すと、「是非試してみろ」と教えてくれました。

  ピア・カウンセリングをしていて、患者と時間を共有していると、あたたかい、優しい、快い気分になるが、国は違っても彼と話した時間も同じ気分になりました。

 次に、訪問したNGO「SAN MICHEL」の取り組みについて報告いたします。

  ここでは、HIV感染症患者が治療、検査時に滞在先を提供するのが主な取り組みだそうです。ここでは、滞在者のプライバシーを守る事を大切にしているとのことで、例えば、誰とも会いたくない人が滞在したなら、通常、滞在者ボランティアと一緒に食事をするそうですが、声掛けだけをし、その人の食事は後で取るなり、スナック等をいつでも食べられる様にする等の工夫をしています。しかし、滞在者同士の人間関係が大きな問題で、いやな思いをした人がクイーンランド州に悪い噂をながすそうでう。それとどこのNGOでも、必要な資金を集めることに苦労しているそうです。しかし、滞在者のQOLが向上したときは嬉しいとのことでした。どこのNGOスタッフも患者と向き合っている人の意見にそう違いがないものだと感じました。

  全体の印象としては、今回のテーマが「ブレーキングダウンバリアーズ」であり、スピーカーの一人は「隣人の情報を共有する良い機会だ」とスピーチしていたが、オーストラリアは日本同様、先進国のイメージがあり、その取り組みもHIV感染者・患者も含めた社会作りのための取り組みが大きなウエイトを占めています。それ自体は素晴らしいことでありますが、アジア・太平洋諸国の多くは、もっと前の問題、例えば、知識の普及、薬剤の供給を含めた医療体制の整備とかの、生死に関わる問題が存在し、日本やオーストラリアのように、慢性疾患になりつつある病気との認識での問題とは違う様な気がしました。すでに、ここでバリアーが存在しているようです。

  さらに、「予防努力が足りなければHIVは進行する」との認識はすべての国で一致するが、それに、予算をかけれる国とそうでない国とでは取り組み方法は違うのではないでしょうか。ここでもバリアーが存在しているようです。

  これらのバリアーを取り除くために努力するというのは簡単だが、おかれている状態が違えば、利害も違う場合があり、そのことによって敵対してしまうこともあるのではないか。それを埋めるための機会は、この会議だけでは足りないような気がする。これについて、世界中でどのような取り組みがなされているのかを報告者は詳しく知らないが、「同じものと違うもの」「一緒に取り組むものと別々に取り組むもの」等を誰にでもわかる様整理する必要があるような気がした。

 次回は日本で開催されるとのこと。報告者は自分の立場で出来る事を続けたい。それが、今よりもHIV全体の役に立てばと強く思う。

 最後に、ご一緒した方々のご活躍とご健康をお祈りし、又の機会にお会い出来ることを楽しみにしていることを付け加えて、報告を終えます。

以上