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第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

せかんどかみんぐあうと 代表 大石 敏寛


オーストラリアで開催された第6回のアジア・環太平洋地域エイズ会議で、私が特に注目したのは、以下の3点です。

PWAと研究者の関わり

 会議初日、開会式では友人でもあるインドネシアのスザヌがスピーチをした。彼女のスピーチは、彼女の治療に対する考え方、研究者と患者の関係、94年に採択されたパリ・エイズサミットにまで踏み込んだ内容だった。例えば、治療を患者が受けるのは、権利であり、贅沢ではないという発言は、医療を当たり前のように受けている日本人では思いつかない発言であり、途上国のエイズの治療状況を反映している。また、研究者に協力する患者の生活は、改善されないで、研究で論文の成果をあげた研究者は地位や財力を手に入れていることでの矛盾点の指摘は、研究者と患者の関係をあらわしている。ならば、研究者と患者はエイズ問題を解決するためにどうすればいいか。それは、94年のエイズサミットで採択された宣言文でも述べているように、同等の関係で、患者自身もプロジェクトに主体的に参加していく存在であるという認識を、研究者・行政・医療従事者・患者・NGO、それぞれの立場の人々が今一度、思い出す必要があると考えます。エイズ問題において患者は被害者でも実験の対象者でもなく、関わる以上は同等の権利や財産を保障されるべきではないかと、スピーチを聞いて思いました。しかし、今回のスピーチは、これまで、様々な会議で患者が発言している内容であることを考えると、現在、日本を含め多くの国々で患者の状況に変化がないことは、この言葉の意味を理解していない人たちが多いと言えるだろう。

 

学校の外でのエイズの予防・啓発

 日本でも若者にエイズ教育を行うことが重要な課題になっている。若者に対するエイズ教育は、現在、日本でも授業の中に組み込まれてはいるが、若者にエイズを認識させ、予防に結びつかせる行動にまでは及ばない。

 さて、そんな中、学校の外での予防啓発に焦点をあてたセッションがもたれた。ベトナムでは、コンドームカフェというものが登場。カフェに無料のコンドームを置いてもらうだけでなく、そこから、カウンセリングサービスにつながるようにも工夫しているようだ。このカウンセリングサービスで、エイズやSTDなどの教育を行う。そうすることで、若者のコンドーム使用率が上がったという報告でした。また、中国では、インターネットを使ってのエイズ教育。予防・啓発だけでなく、電子メールによるカウンセリングやチャットを使ったシステムなど、若者のコミュニケーション手段をうまく利用している。

 日本でも、それなりの努力はされているが、漠然と呼びかけだけるだけのキャンペーンよりも、対象をしぼり(この場合は、若者)その対象の文化にあった予防・啓発活動が重要ではないだろうか。また、以前から、言われていることではあるが、カウンセリングを通じて予防教育を行うことも、エイズを身近に感じて理解してもらうためには、とても重要なことではないかと思う。

 

PWAのピアエデュケイションとサポートグループプログラミング

 アジア・パシフィック地域において、患者・感染者が自立していくためには、告知後、どう生きていくかが重要になってくる。それは、多くの国々では、差別・偏見を患者・感染者に対して持っていたり、感染者・患者自身が感染することで、自分自身に対する罪悪感を持ってしまうからである。そのために、感染後、多くの困難を乗り越えて、前向きに生きていくためには、感染者自身の意識を変えていく作業が重要である。

 さて、このセッションでは、各国で行われてきた感染者・患者の様々な支援を取り上げての発表であったが、特に、感染者・患者教育やサポートシステムが重点的に取り上げられた。発表されたのは、カンボジアと中国(香港2本)の事例であったが、共通していたことは、ピア・エデュケイションが重要であり、プログラムに盛り込んでいることである。ピア・エデュケイションによって、得られる効果は、共感による相互援助、感染者ライフの情報の共有、サポートネットワーク、他の感染者との出会いなどが上げられる。他の感染者との出会いや共感による相互援助は、同じ病を持っているからこそ成り立つものであり、ここに、当事者団体の存在の意味があると言えよう。

 他のトピックとしては、カンボジアでは、団体がないところから、外部の当事者団体が地元の感染者・患者を集め、一から団体を作ったことだ。そのために、ストラテジィ・プランニング、ニーズ・アセスメントが行われた。ストラテジィ・プランニングでは、1.地元のPWAによるオーガナイズ、2.カンボジアの感染者・患者のためのワークプランを立てる、3.行政の支援を得る方法、4.UNの資金援助の方法が取り組まれた。ニーズ・アセスメントで、だされたことは、トリートメント(伝統的な治療も含む)、人権、差別・自己嫌悪、職場、自宅介護、ピア・カウンセリング、ジェンダー問題など。

 中国では、感染者のためのセミナー、セミナーのデリバリーなどが、出された。

 このセッションでの感想としては、当事者団体の必要性として、経験の共有や共感が重要であり、それを支えるためのグループが組織されることで、多くの感染者・患者が自立することが可能になることが考えられる。また、組織は、感染者・患者のニーズを把握し、それを世間に伝えていくことで、差別・偏見を払拭することが可能であると考えられる。

 

  今回の会議参加は、私自身の今後のエイズの活動に活かしていけると思います。患者としての活動の姿勢や周りとの協力のあり方、若者へのエイズ教育、そして、当事者である感染者・患者同士の連帯は、現在の日本のエイズ問題でもまだまだ残されている問題であり、重要な意味を持っていると思います。