HOME >> 資料室 _ 関連学会情報 >> 第6回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(メルボルン)/2001年 >> 参加報告書

第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

国立感染症研究所 エイズ研究センター 室長 吉原なみ子


 輸血血液の安全性およびHIV診断試薬の精度管理について関係する研究者や実務担当者と意見の交換をし、より良い方法を日本に導入する目的で本学会に参加した。しかし残念ながら、本題に関する発表やシンポジウムは少なかったが同様なことに関心を持っている研究者や担当している人たちとの意見交換が出来たことは有意義であった。学会に引き続きWHOの「International workshop on laboratory quality assurance for HIV, HBV and HCV testing」がメルボルンのNational Reference Serology Laboratory(NRL) で開催され、その準備段階やサテライトには参加できたが日程の関係からworkshopには参加できなかった。事前に発表者やfacilitatorsとの意見交換が出来たのは意義があった。

 今回の学会ではアジアの供血体制および輸血検査、検査の精度管理を中心に出席した。日本ではスクリーニング検査にHIV抗体検査に加えて1999年1月からはNATが導入され、輸血用血液の安全性に努力している。また、すべての献血者のリストがコンピュータに登録されており、どの血液センターでも過去の献血時検査を一覧することができる。しかし、シンポジウムの「Blood safety in Asia and the Pacific」で問題になったのはアジアの多くの国は血液の安全性がいまだ確保されていない現状である。輸血後HIV感染をなくすためには供血者の質とHIV検査の精度が問題となる。まず、質の問題であるが多くの国では病院の院内採血が主であり、病院ごとに輸血制度が違っている。途上国では血液の不足が問題であり、売血または家族や親族の血液と言う名目の売血であり、真のボランティア献血は極わずかである。どうしたら売血から献血に移行できるか、また、各病院ばらばらな現行の輸血体制をいかにして全国統一なシステムにするかが話題になった。例えばボランティアによる供血制度がすぐには導入できなくても、ウイルスマーカー陰性の頻回供血者から採血することにより輸血後感染を減らすことができる。他の問題点としてはHIV検査の現状であるが何処の国でも輸血用の血液検査はHIV検査の中でプライオリティの第一番に揚げている。しかし、検査キットのサプライがWHOがキットを支給しなくなってからは特に都市部以外では不足している国が多々ある。NAT検査の導入はホンの一部の国の話題であり、多数の国はまだまだ先の問題である。検査キットの感度もまちまちであり、感染率の報告例を見ても、検査室のインフラなどを知らないと数字だけを鵜呑みにしては比較にならないことがわかった。

 検査キットの精度管理はオーストラリアやタイはきちんと実施されている。オーストラリアはキットごとにNRLからQCが配布され、検査のたびにQCをいれて検査するシステムが出来ている。このQCは一定の条件を満たせば海外の検査室でも入手が可能である。公的機関は通関料のみ、私的機関は輸送費および通関料を負担する。希望者はNRLに連絡をするかまたは吉原まで連絡があれば紹介できる。また、タイのNIHは約500の検査室を対象に昨年および今年、年4回パネル血清を配布して検査室のコントロールサーベイを実施した。これによってキットの精度と感度、特異性および検査室の技師の手技や能力をチェックしている。将来はオーストラリアと同じように各キットに合ったQCを作成して配布する予定である。オーストラリアはHIV, HBV, HCVのための各々のQCが用意されているがタイは1本のQCサンプルでこれらのウイルスの検査に使える血清を準備する予定である。日本はこのようなQCサンプルの配布は行われていない。

 また、QAについては基本的な技術教育、Trouble shooting, 実地教育、技術援助、ルーチンのQC, QAプログラムの作成及び実施が行われているかどうかが話題になった。特に海外援助の場合、機器のsupplyやdelivery、機器が地域(国)内でメンテナンスが可能か、スペアパーツが入手できるか、価格、有効期限、試薬の供給体制などを予め調査した上で援助すべきであるとUSAIDのインドネシアにおける国際協力例からの報告があった。まったく同感である。

 WHOのworkshopの主な議題はEQAS(External Quality Assessment Scheme), Kit evaluation, Selection and Validation of test kits, Testing Strategies, Laboratory maintenance, Quality Managementなどであった。参加者はIndiaとThailandから各2名, Malaysia, Nepal, Maldives, Sri Lanka, Macao, Korea, Papua New Guinea, Viet Nam, Philippines, Fiji, Tonga, UKが各1名、主催国のAustralia の16カ国であった。残念ながら日本からの参加者はなかった。

 今回の学会で気づいた点
  次回日本〔神戸〕で開催するので、参考になればと思い、気がついたことを記載する。

  1. Basic scientificな企画(plenary, workshop共に)が少なかった。
  2. ポスターの展示位置が指定されていなかった。したがって、socialのポスターの隣に疫学があり、その隣が臨床の発表であったりしたので、非常に見みずらかった。
  3. 当日に会場の変更があり、掲示や案内も適切ではなく、会場がわからないことがあった。
  4. abstractが番号順でなく、その上かなりの発表者のabstractがごっそりぬけていた(知っているだけで3人)。国などからFundを受けた場合abstractのコピーを提出することを条件に参加している国もあり、もしなければ全額変換することになると困っていた参加者がいた。途上国では参加費や旅費を自分で返還するのは難しいと思われる。
  5. 簡単なランチやディナーが会場に用意されていたので、無料で食べることができた。日本は物価が高く、また英語が通じないこともあるので次回の神戸の学会でもこのようなサービスがあればよいと思う。
  6. 開会式の時間が長く(18時から21時半)、終了時間が遅かった。 会場が寒かったこともあり、かなりの参加者が途中で退場していた。 私は両隣がフィリピンと韓国の知り合いと一緒だったため最後まで参加したが空腹と寒さで体調がおかしくなった。フィナーレの合唱はすばらしかった。 海外からハードスケジュールで参加している人も多いので、開催時刻、時間を考慮すべきであろう。  
  7. 今回エイズ予防財団の援助で学会に出席できたことは意義があったが日程の変更が出来なかったため、学会に引き続いて開催されたWHOのworkshopに参加できなかったことは残念であった。宿泊費を自己負担しても参加できるようになればより有意義であった。