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第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

特定非営利活動法人
Health and Development Service (HANDS)   竹中 伸一


女性用コンドーム

 第6回アジア太平洋地域国際エイズ会議「The Female Condom Experience: Applying Lesson learned(女性用コンドームからの経験:経験から応用へ)シンポジウムにおいて発表や議論された女性用コンドームの過去10年間の実践からの成果と最近の研究結果を報告する。

 

女性用コンドーム

先ず女性用コンドームとは、陰茎に装着して使用する男性用コンドームに対し、膣内に装着して使用する避妊具である。外陰部と膣内の双方をおおう構造により、精子の進入を防ぎ、エイズを含む他の性感染症(STI=Sexually Transmitted Infection)に感染する危険を減少させる働きがある。材質はポリエーテルウレタン、形状は長さ170mm、幅80mm、厚さ約0.05mm、膣の内側に緩やかに合うように柔らかな袋状の鞘の形で、両端に柔らかいリングが付いている。開口部のリング(外リング直径70mm)は膣の外側に用具をとどめ、膣入口周辺をおおうもので、底部のリング(内リング50mm)は膣内に挿入し固定するためのものである。鞘部分全体に潤滑ゼリー(ポリジメチルシロキサン)が塗布されている(取扱説明書より)。

  英国で昭和1984年に開発され、日本国内では、平成11年11月に中央薬事審議会により女性用コンドームが承認されて、昨年末より一箱(3個)で販売されている。

 女性コンドームの特徴としては、女性が主体的に避妊とエイズを含む性感染症の感染予防ができる点にある。また、男性用コンドームの使用と比較では、ペニスの勃起に関係なく装着でき性行為を中断する必要がない点やペニスへの圧迫感がなく、射精後、すぐにペニスを抜く必要がない点が挙げられる。さらに、その形状により外性器と内性器の双方をおおうため、男性用コンドームよりも性感染症予防する効果が高いとの報告された。

 

効果

  次に、女性用コンドームの実際の効果について避妊と性感染症予防の点から次の報告がされた。女性用コンドームの避妊への使用を他の避妊薬・避妊具と比較すると、5年間正しく使用された場合の望まない妊娠率は、女性用コンドーム使用5%、男性用コンドーム使用3%、殺精子剤やペッサリー使用6%であった。また、5年間正しく使用されなかった場合の望まない妊娠率は、男性用コンドーム使用14%と比べ、女性用コンドーム使用21%であった(Trussell et al, 1998)。ちなみに日本における臨床試験の結果は、6名が妊娠し、パール指標(PI=Pearl Index)は6.3であった。このことは100人の女性が1年間その避妊法だけを用いた場合、6.3人が妊娠する可能性を意味する。男性用コンドーム(PI2~14)とほぼ同じと考えられる。

 性感染症予防への女性用コンドームの使用は、外リングが外性器をおおうことにより、性器の潰瘍から感染するような病気については、男性用コンドームより予防効果が高いことが報告された。タイで行われた研究で、女性用コンドームを入手可能にすることにより性感染症の罹患率が低減させた結果が報告された。男性用コンドームと女性用コンドームが入手可能なグループと男性用コンドームのみ入手可能なグループを比較すると、両コンドームを入手可能なグループの方が、男性用コンドームのみのグループより、性感染症の罹患率低かった(Rojanapithayakorn et al,1996)。一方、ケニアで実施された1,600人の女性を対象にした女性用コンドームによる介入調査の結果からは、男性用コンドームのみ入手可能とした場合と比較しても、女性用コンドームを入手可能とすることが性感染症の罹患率に影響しないことが報告された(Feldblum et al, 2001)。

 女性用コンドームの性感染症予防は臨床検査によりその効果は証明されているが、上記の研究報告のように国や地域の文化・社会によりその女性用コンドーム導入の成果に違いがあり、今後は医療人類学的な調査の実施や受入の動向について継続調査の必要性があると思われる。

 

費用/再利用

  女性用コンドームの使用を男性用コンドームのように1個1回限りとすると、女性用は男性用より高価である。現在、男性用コンドームが1個あたり0.05米ドルするのに対し、女性用コンドームは2~3米ドルする(日本国内では、女性用コンドームは3個入り1箱が800円で販売されている)。2000年6月、世界保健機構(WHO)とUNAIDSは、情報データが不十分なために女性用コンドームの再利用の安全性が確認できないとし、コンドームの洗濯や二度目の使用のおける感染予防の点から、洗濯の前に消毒を行うよう進めている(WHO/UNAIDS,2000)。女性用コンドームの消毒、洗濯、乾燥、保管及び潤滑油さしについてプロトコール案ができており、現在その試験や評価を行っていると報告された。

  しかし、清潔な水も入手困難な地域が多い開発途上国での消毒や洗濯の実践を考えると、女性用コンドームの再利用はかなり厳しいのではとの意見がシンポジウム参加者よりあり、その実現にむけての女性用コンドーム使用指導できる人材を育成することも必要となることと思われる。

 

受入

 女性用コンドームは世界に紹介されて以来、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、欧米の多くの国や地域で、新しい避妊具として受入れられていると報告されている。女性用コンドーム受入について研究結果は、研究対象者の41%から95%と幅広くなっている。個人の性交経験、年齢、社会的、経済的状況により、女性用コンドーム受入が影響されることが判っている。

 バングラデシュにて性産業従事者を対象に介入調査が実施され、結果より彼女たちの女性用コンドームへの認識や意見が報告された。1)精神的な安心を与える。女性が主体性を持って避妊や感染予防が可能となることと、ラテックス製の男性用コンドームと違い、裂けたり破れたりし難いポリエーテルウレタンを使用していることが女性たちに安心を与える。2)性交を早くおわらせることができる。男性用コンドームに比べ、クライアントが性交に満足するとともに早く射精すると報告された。3)前もって装着できる。ペニスの勃起に関わらなく使用でき、クライアントに気付かれなかった。

 このような好意的な意見とは反対に、1)鞘部分が長く、身体からぶら下がるのが不恰好、2)性交中に雑音を発する、3)中リングが大きく痛みを感じるなど女性用コンドームの構造について批判もあったが、使用への関心や受入については概ね好意的な反応であった。 このように過去10年間に多くの調査が行われ、女性用コンドームのエイズを含めた性感染症予防や避妊への効果が証明されている。しかし、女性用コンドームによる一般女性の大きな変化は見られていない。特にアジア地域における性とコンドームの関係は、100%コンドーム政策などにより売買春と深く結びつき、却って一般男女間では(男性用)コンドームの敬遠を招いていると報告されている。新しい女性主体的なエイズ・性感染症予防ができる用具として紹介され、潜在的に女性をエンパワーすると期待もされているが、正しく使用するためにも男性も必ず女性用コンドームを認識する必要があり、HIV感染予防のために何ができるのかを男女が共に考えていくことには何も変わりがないと思われる。

  最後に、財団法人エイズ予防財団には本学会への参加支援を頂いたことに対し謝意を示す次第である。