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第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

特定非営利活動法人 HIVと人権・情報センター
理事長  五島 真理為


はじめに

  エイズ予防財団のスカラシップにより、第6回アジア・パシフィック国際AIDS会議に参加し,研究発表や展示ブース出展、ならびに現地のNGO,GO訪問等の種々の活動ができましたことを、心から感謝いたします。

  アメリカによるアフガニスタンに対する報復攻撃が始まるという、緊迫した世界情勢の中で、第6回アジア・パシフィック国際AIDS会議は開催された。世界中が注目するニュースに加えて選挙もあり、メルボルンの新聞には第6回アジア・パシフィック国際AIDS会議の開会式の報道すら掲載されなかった。開会式場にはメディアの姿はほとんどなく、今までになく報道のないことに、メディアの無関心に戸惑いと落胆ヲおぼえる国際会議の幕開けとなった。 世界情勢の影響は、同時に第6回アジア・パシフィック国際AIDS会議自体にも及び、アメリカから出国できず一番の目玉であったホー博士の講演は、急遽、取りやめとなった。マスコミの関心の低さに象徴されているような、アジアの国々の政府、政策担当者のAIDSに対する関心の低さは、UN/AIDSのDrピポットが指摘するように、国をあげて取り組まなければならない問題であり、今後このまま対策を講じなければAIDSの流行は加速されるであろうと。AIDSがいかに社会的な問題であるかを、しっかりと国、そして国民が認識し、対策をたてていかなければならない。

 国際会議も波乱含みのスタートとなったが、以下に、私が関わった発表、展示ブース、NGO、GOの現地視察などについて報告する。

 

1 学会にて4題を発表

 筆頭演者として2題を発表した。そのうち一つは口演、一つはポスター発表であった。さらに共著者として2題を発表した。

  1. Role of NGO on Community Development for AIDS Awareness(Mary Gotoh, Y Kinoshita, C Stronell, I Maekawa, Y Ohta, Y Miyasaka, Y Shioiri, K Nakase, F Shinsho)
     厚生科学研究において主任研究者を務める「エイズに関する普及啓発における非政府組織(NGO)の活用に関する研究」から全国のAIDS担当行政機関(都道府県及びすべての保健所)を対象とする調査、およびNGOを対象とする調査を通して以下の点が明らかとなった。その内容について発表した。行政機関(GO)によるNGOにたいする認識等の実情とか、NGOの実態そして、GOのNGO活用状況、GOとNGOの連携の現状、またNGOとGOとの活動内容のギャップやNGOの役割について述べた。
     会場では30数名の参加があった。その後、多くの参加者とNGOの活動状況や役割について、主に展示ブースにおいて情報交換することができた。社会資源としてのNGOの位置付けや、社会のNGOにたいする認識のレベルが国によって異なるがやはり資金面での苦労については、いずれの国のNGOにおいても共通する課題でもあることが理解で、有意義な交流ができた。

  2. Subjects for Counseling in HIV Hotline by PWA/H and their family to link counseling and prevention(Mary GOTOH, Caitlin STRONELL, Yuri KINOSHITA, Fumiaki SHINSHO)
     JHC東京支部において2000年の1年間にかかってきた感染者による電話相談の内容について分析したものである。PHA/Hにたいする差別事例やよく聞かれるPHA/Hの主訴をプライバシーに影響しないよう配慮しながら、一般化した台詞であらわし紹介し分析した。 意見交換の結果、告知のショックやプライバシーについて、他のアジアの国々の参加者からも同様の実情があるという反応が多かった。

  3. Young Sharing Program for AIDS Prevention(Yoko ITOH, Mary GOTOH, Mariko ITOH, Yuri KINOSHITA, Caitlin STRONELL, Fumiaki SHINSHO)
     これも、厚生科学研究の一環として行った研究の成果である。Peer Educationという概念がAIDSの分野では重要視されている。Peer Educationの目的、手法、効果、等を私たちJHCのYSPの活動を通して、それを調査することで、明らかにしたものである。
     この発表に対しては、多くの参加者から関心が寄せられ、各地でPeer Educationに取り組んでいる方や、これから取り組もうとする方々と意見交換を行うことができた。

  4. Evaluating QOL of PWA/H from Emotional, Physical and Nutritional Viewpoint through Visiting Counseling and Nutritional Support(Fumiaki SHINSHO, Mary GOTOH, Yuri KINOSHITA, Caitlin STRONELL)
      JHCが行っている訪問栄養カウンセリングの中で、PWA/HのQOLの改善について明らかにした発表である。2年前のマレーシアにおける国際会議では口頭で発表した研究を発展させたものである。QOLを基本として、主観、客観の両面からみると、それぞれ基準を作成し、主観に関しては、PWA/H自身により評価していくものとし、その結果を明らかにした。 アジア・パシフィックの国々でがんばっている栄養士さんたちが会場で、また、展示ブースに来てくださり、長い時間にわたる意見交換がにぎやかに進んだ。余談であるが、食物にかかわっている人は皆、笑顔が多く、会っていると、こちらも気持ちよくなる。元気の素を配っているという感じで、食物が元気の素であるからかと、勝手に自分を納得させてニコニコしていた。個人的な感想まで。

 

2 ブース出展

 5日間で約1000人の参加者からブースへの訪問を受けた。そのうち、約300名の方がメッセージを残してくださった。なかでも多くのPWA/Hの訪問受けた。赤瀬さんのメモリアルキルトに吸い寄せられるように……ずっとメモリアルキルトを見つめる人、メモリアルキルトと写真をとって欲しいという人、ベビーキルトが欲しいという人・・・…一人一人と、それぞれの人生を通して、お話しや交換が出来て心豊かにさせていただいた。  日本のNGOのことやJHCのことなどを始め、日本の状況についても、いろいろお話しできたり、また、訪れてくださった方から、多くを聞かせていただいた。お互い、暖かいものを感じての「神戸でまた会おうね」と声かけあいながら別れた。  メモリアルキルトの存在感や役割を改めて気づかされたブースでの活動であった。

 

3 NGOおよびGO訪問

 閉会式の直後にサンミシェルという、PWA/Hのホームを運営しているNGOを訪問した。すばらしく広い庭とピアノのあるラウンジ、サンルーム、邸宅の居間のような食堂、台所、洗濯室と7つのベッドルームと3つの風呂がホームには備えられていた。そこでは医療サービスや他のサービスの紹介、ホーム入所者を励ますために訪問するパートナーなどのための宿泊受け入れ、個々人の実情にあわせたケアプログラム等などの活動について、説明を受けた。お花いっぱいの庭に面したとても気持ちのよい部屋で,手作りのパイをいただきながら、いろいろはお話しを伺っていると、訪問したこちらも気持ちがいやされるようであった。

 GOであるビクトリアンエイズカウンセリングの2箇所を2日にかけて訪問させていただいた。一箇所はLivingCenterである。LivingCenterには、セラピールーム、コンピュータルーム,ティールーム、テレビラウンジ、洗濯室や中庭があった。ここでは、アロマ・イキ・リラックス・リフレックス・ヨガなどのセラピーを行っている。パソコンを使っての職業訓練や種々のインフォーメーションサービス、マッサージやハーブセラピー、ピアサポート、カウンセリングを行ったり、週3日の食事サービスを行ったり、庭でのバーべユーや食事会を行っている。年間、延べ人数で5000人の方が来所されるとのこと。5名の専従職員で運営されていた。30名のボランティアが、その活動を支えている。

 PWA/Hの80%がゲイという、このオーストラリアでは、利用者の多くはゲイの方である。もうすぐ、このLivingCenterは病院の隣に移転することになっているとのことであった。きっと、より一層、利用しやすくなることだろう。

 LivingCenterを運営するGOのVictorian AIDS Counselingの本部を訪問した。1883年に設立という、このVACの本部ではクリニックも運営していた。電話相談やカウンセリング、法律相談などが行われていた。LivingCenterや相談、カウンセリング事業などは、私どもの感覚では、NGOが行うというように思うが、ここでは、GOが行っている。1983年に、ある人達が活動を始めて、行政が資本を出して行政として活動していくこととなったようだが、実際はNGOとGOがパートナーシップを作り上げてGOとして運営しはじめたというよりか、一体化しているという感じであった。NGOとGOの関係について、考えさせられる訪問であった。

 私どもが訪問したNGOは、実際上は資金面でも厳しい様子であった。私どもも、できる限りのサポートを約束した。今までも、NGO間の交流や協力は、とても重要なことと認識しているので、少なくとも訪問したNGOには協力を惜しまないようにしている。同じ立場の組織からの協力は,大きな励ましとなる。私度もも,今までに,何度も、そのようなはげましをいただいてきた。

  可能なら、このスカラシップの期間が、せめて1日でも長ければありがたい。他のJHCのメンバーはNGOをもう一箇所訪問できたが、日程の都合上、私は帰国せざるを得ず、少し心残りであった。また、第6回国際会議の中心メンバーとアジアや日本のNGOの方々とのお話しもできた。第7回会議が、今までの歴史や国際会議の目的、理念、そしてスポンサーであるアジアのNGOの志向を反映した会議となることを願って筆を置く。

 スカラシップによって、第6回アジア/パシフィックAIDS国際会議に参加できたことを心から感謝します。この経験を今後の活動に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。