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第6回アジア・太平洋地域国際エイズ会議報告書

特定非営利活動法人 プロジェクトHOPEジャパン
タイ事務所長 大谷暁子


 「バリアをなくそう」が、今回オーストラリア・メルボルンで開催された第6回アジア・太平洋地域エイズ国際会議のテーマです。エイズウイルス(HIV)が発見されてから約20年、世界各国でエイズウイルス新規感染抑止への懸命な挑戦が続けられていますが、その現状を表すのに誠に相応しいテーマです。

 世界的なエイズ感染抑止への挑戦に対し、現実にはさまざまな障壁が立ちはだかっていることを否定することが出来ません。それらは例えば、非レトロウイルス治療の導入やHIV/AIDS問題への政治的な干渉またエイズ問題の核心にふれる社会的なタブーと偏見等々です。これらの事がエイズ感染抑止の進度の足を引っ張っていることは事実です。私たちは、これら多くの解決困難な壁を突き崩すべく日々立ち向かっていますが、問題解決の糸口を見つけるのは容易ではありません。そのためにはHIV/AIDS予防活動に何らかの形で携わっている人々が日常経験し実践している互いのアイデイア・経験・知識を出し合い・学び会うことが大変に重要です。

 今回の国際会議は、アジア・太平洋地域で活動している私たちにこのような意味での重要な機会を与えてくれました。意見交換・ポスター発表等を通して、今行っているプログラムへの新しいヒントと発見が得られ、長い挑戦の道なかばではありますが、新しい希望を持つことが出来ました。

 会議は、介護とケア・予防・社会経済要素・女性と性の4つの分科会に別れて運営されていましたが、私たちは、ポスタープレゼンテーションの中で、タイでのHIV/AIDS予防事業の活動と成果を発表しました。私たちの事業は、結婚前カップルおよび若い男女間のHIV感染予防に焦点を当て、個別カウンセリングと無料のHIV検査からスタートし、地域の男女大学生を中心としたピア教育グループを育成して若年層への予防啓発活動へと発展させています。最近のタイにおける若年層のHIV感染率増加傾向を見ると、ますますこのプログラムの拡大必要性と重要性を感じています。私たちは、プログラムの内容を現地の実状に合うように常に改善を加えています。例えばHIV/AIDS問題に関心の高い大学生グループにピアリーダーとしての専門教育を実施し、仲間や地域住民更には高校・中学生に対しても啓発教育の先頭に立って活躍して貰っています。

 会議期間中、私たちのポスタープレゼンテーションには多数の人が関心を示し、多くの意見やアイディアを交換しました。カンボジアから参加した人は「私たちの国でも同じようなモデルを実行してみたい」との意見があり、大変勇気づけられました。 今回私は、特に青少年対象のHIV/AIDS感染予防プログラムの発表に重点を置いて調査しましたが、ベトナムからの"青少年のHIV/AIDSへの関心と態度を変えるモデル事業"の発表に注目しました。このグループは、クアラルンプールで開催された「第5回アジア・太平洋地域エイズ国際会議」でも発表し注目しましたが、今回は"コンドーム・コーヒーショップ"と名づけた場所を作り、そこに集まる若者に対してHIV/AIDSへの関心を高める教育を行い、彼らの性行動を変えるプログラムを実行していました。1999年には6,000人に16,000個のコンドームを、2000年には9,600人に24,000個のコンドームを配布し、40,000人のコーヒーショップ利用者があったとのことです。コーヒーショップでは、若者を引き付けるために寸劇・ファッションショウ・カップルデー等を開催し、私たちがタイで経験したのと同じようなタブー「コンドームの使用徹底を口にすること」への抵抗を破るために大変な努力をしていることに共感を覚え、私たちの今後の活動にも大変参考になりました。

日本でも、エイズやクラミジア等の性感染症(STD)が若者の間に広がっていることが厚生労働省の研究班から報告されています。若者の性行動や考え方は、国地域によって大きく異なりひとくくりにできないとは思いますがますが、タイで実施している私たちの活動の応用や、ベトナムの例のように若者が気安く集まり易い場所を作りってHIV/AIDSについての啓発活動を実施すること等は、日本国内でも実行出来るのではないかと思います。日本の町角には多数のコーヒーショップがあり、多くの若い青年男女が出入りしていますし、コンドマニアと呼ばれるコンドームショップもあります。このような店のスタッフを教育し、タイで行っているピアリーダーのような啓発活動の役割を担って行動してもらえれば、若者への何らかの動機付けが出来るのではないでしょうか。

 「第6回アジア・太平洋地域エイズ国際会議」は、私たちアジア・太平洋地域でHIV/AIDS感染予防事業に関わっている人々に、多くの有益な経験と知識の共有、相互理解さらに学習の機会をもたらしてくれました。欲を言えば、講演とポスタープレゼンテーション双方の発表者間に交流の機会が設けられれば更に充実した成果を挙げることが出来たと思いました。2年後に開催される「第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議」には、更に充実した成果を挙げ発表出来るよう努力します。

プロジェクトHOPEジャパンのポスタープレゼンテーションについてインドからの参加者(左)と意見交換  

以上