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第8回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

国立病院機構 九州医療センター 免疫感染症科
南 留美

テーマ: HIV 診療およびチーム医療について

 2007 年 8 月 18 日から 8 月 23 日まで 8th International Congress on AIDS in Asia and the Pacific ( 第 8 回アジア太平洋地域エイズ国際会議 ) に出席いたしました。今回、与えられたテーマは「 HIV 診療およびチーム医療について」でしたが、今回の学会では、このテーマに沿った発表は、ポスター発表も含めあまり多くなかったと思います。「 HIV 診療」に関しては、医療従事者中心の「チーム」よりはむしろ「 Community-Based care 」や「 Family - based care 」にて成功したという報告が多く見られました。つまり病院をベースに、集まった peer やボランティア、家族に対し HIV に関する知識の普及、アドヒアランス維持の重要性、栄養面でのサポート <PC265> 等の教育、およびカウンセリングをして community もしくは family のなかでサポートを行っていく方法です。このことにより PLWHA(People Living With HIV/AIDS) はより容易に物理的障害を緩和し(遠方の病院からの薬の支給など <PC020> )、身体的、精神的なケアを受けることができ <PC019, PC030, PC118, PC246> 、 免疫レベルの維持、アドヒアランスの維持 ( ベトナムの報告例 <MoOPB04-01> では 95-100%) に成功していると報告されていました。またこの community/family-based care のための橋渡しとして NGO の重要性がいわれていました。日本では資金の問題、社会の HIV/AIDS に対する認識不足、誤解、プライバシー保護の問題などがあり、現時点では community/family-based care の定着は困難だと思いました。しかし、 AIDS 後遺症にてケアを必要とする PLWHA は日本でも増えていく可能性があり、今後、 community/family-based care が必要になってくると思われます。 HIV/AIDS に対する正しい知識の普及が早急に必要だと感じました。アドヒアランスに関しては、自己報告のアドヒアランスと実際のアドヒアランススコア (pill count や受診状況などで評価 ) では 7-10% の格差があったという興味深い報告 <MoOPB04-02> もありました。ベトナムでは、 PLWHA の 7-8 割が身体的苦痛を伴っており、 HIV/AIDS 患者の緩和医療のためのプログラムを試みていると報告されていました <MoOPB04-04> 。その他、「 HIV 診療」において興味をひかれたのは、 HIV/AIDS によく合併する皮膚病変を HAART 施行群と未施行群にわけて解析したもの <PB025 > です。それによると好酸球性毛包炎、光線過敏は HAART 未施行群、脂漏性湿疹、毛嚢炎などは HARRT 施行群に多いようです。また HAART の副作用と関連すると考えられる酸化ストレス( glutathione peroxidase ) と抗酸化能 (Total anti-oxidant level, glutathione reductase) の変化を測定した報告 <PB013 > がありましたが、乳酸アシドーシスや脂肪肝などの副作用の早期発見に役立つのではないかと考えられ、可能であれば測定してみようと思います。日本でも最近問題になっている結核の合併についても報告が見られました。カンボジア、タイでは HIV 感染は減少傾向にあっても結核罹患率は上昇しており、カンボジアでは HIV 陽性者の 23% が結核を合併しており、結核患者の 10% が HIV 陽性で、特に肺外結核もしくは喀痰塗沫陰性の肺結核での HIV 陽性率が増加しているようです (18.5%)<WeOP05-1,5> 。イランでは多剤耐性結核菌が問題になっており過去に治療を受けた例の 7% 、新規感染者の 1.1% に多剤耐性結核菌が検出されたそうです。多剤耐性結核菌が検出される危険因子としては、アフガニスタンからの移民かどうか、年齢( 50 歳以下であると多剤耐性が多い)、診断された場所(テヘラン以外だと耐性高い)、診断年(後になる程、リスク大)があげられ、 HIV/AIDS の状態は関係ないようです <WeOP05-3> 。また、今回の学会では cost-effectiveness についても数多く発表されていました。「 HIV 診療 / ケア」の面では、上述のように community/family-based care が cost-effectiveness の面では有効であったという報告が多数ありましたが、 clinic での診療に関しては、コアとなる clinic を決めてその施設を HIV/AIDS に対し訓練し、そこに PLWHA は集まるようにした ( 現在の日本の方法とほぼ同じ ) ほうが cost-effective であったと報告がありました。 HIV 診療にかかる費用を具体的に調査した報告がありましたが (PC283) 、 1st regimen の ART より 2nd ART の方が4倍以上コストがかかり (USD 200-401/year/person vs. USD 847-7009/year/person) 、入院患者のケアでは USD 157/year/person 、外来患者では USD72/year/person などいくつかの項目にわけてコストを評価していました。

  自分の発表 (Human herpesvirus 8 DNA load in leukocytes of HIV-1 infected patients: Correlations with thrombocytopenia : HIV-1 と HHV-8/KSHV と血小板減少の関係 ) に関しては、今後、論文にしていく予定です。今回、 HIV 感染と血小板減少についてのポスター発表 (PC090) があったので discussion をしたかったのですが、ポスターを見つけることが出来ず、残念でした。

  今回の学会も含め、海外の学会に出席させていただく度に、日本は感染予防や患者ケア、サポートの面でまだまだ世界のレベルに到達していないことを痛感します。もちろん、地域により感染頻度、感染経路も様々であり、海外での方法をそのまま実行することは困難ですが、日々の診療のなかで、なんらかのヒントにはなっています。日本における MSM に関する研究も素晴らしいものが沢山ありましたので、それらを参考に、今後の診療、予防啓発に役立てていきたいと思います。

  初日の registration の方法や security check をみていると、学会期間中、スムーズに参加できるだろうかと不安に感じましたが、 2 日目以降は、快適に過ごすことができ、学会に集中できました。また今回の ICAAP で一緒に行動させていただいた方々は、いろいろな視点に立って活躍されている方ばかりで、お話を伺っているだけでもかなり自分の糧となり、感銘を受けました。