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第8回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

名古屋市立大学 大学院看護研究科 感染予防学研究室
コーナ・ジェーン

 第8回スリランカ ICAAP 会議は南アジア大陸、特にインドで急速に感染者が増えている中で時機を得た開催だった。世界的には、 HIV 感染の急増がうちどまりになっているものの、インドをはじめとする人口大国では非常に多くの HIV 感染者と AIDS 患者を抱えている。この会議はインド、パキスタン、そしてバングラデイッシュといったところから多くの参加があったことは成功といえるだろう。 MSM への知識が欠けているスリランカ政府代表による厳しい警備体制と反動的な意見の中で、良い会議を行うことが出来た ICAAP 委員会を称えるべきである。

 広く南アジアからの参加者が集まったこと以外に、本会議での成功点と考えられることは、トランスジェンダーに関するセッションが数多くあったことだ。トランスジェンダーの関係者は過去における ICAAP 会議においても、トランスジェンダーにおけるエイズ予防の問題を MSM とは別に取り上げるようにと主張してきた。また HIV 陽性者の予防プログラムについてのセッションやトピックが多かったのもこの会議の特筆すべき成功点であったといえよう。

 UNAIDS は、 MSM におけるエイズの問題を第8回 ICAAP に取り上げることに関して、慎重に MSM に関する長い全てのセッションのリストを用意した。これらは独自で programming track をつくるのに十分な MSM 関連のセッションだったというコメントも参加者から聞かれた。その一方でこれは男性から男性への HIV 感染を最近まで政府が目を背けていたアジア太平洋地域で、 MSM 問題がようやく認識されたとも言える。また、膨大なホモセクシュアルからの HIV 感染があることに目を向け始めたともいえる。多くの数のセッションが見るのに良かったのに対し、 HIV 陽性者の予防対策が多く語られていたのにもかかわらず、 HIV 陽性者である MSM のトラックは、 MSM のトラックとほぼ完全に離された問題とみなされていることにギャップの存在を感じた。これは私が出席した南東アジア地域、 MSM の HIV 予防サービスの浸透度、そしてアジア太平洋政府のリーダーシップと遂行のレベル(政策、プログラム、予算に反映したもの ) 、 MSM のための AIDS に関する全ての計画と政策に関するセッションにおいて見られる傾向であった。これらのセッションから、近年の MSM の中からの HIV 感染の増加がみられるにもかかわらず不均等で不適切な資金配分、政策、そして地域の MSM への予防サービスが不足していることを示していた。発表と議論からすっかり欠けていたのは HIV 陽性者の MSM についてであった。 HIV 陽性 MSM が面している状況の知識と情報は、政策や予防プログラムに影響を与えるのに重要である。 HIV 陽性 MSM に便利なプログラムやサポートの情報,ギャップやニーズをさらに明らかにしていく必要があるだろう。

 シンガポールからの質問で北アジアのデータはなぜ含まれていないのかが質問に上がっていた。これは ICCAP での MSM 関連のプログラムで特に日本に関係するギャップのひとつであるといえる。 UNAIDS と WHO の活動の一番の目的が資源の乏しい国に影響を与えることではあるが、所得の高い国からの MSM の情報が役に立つことも明白である。ゲイや男性とセックスをする男性は、高所得国と低所得国間を旅行や仕事で行き来しているし、特に日本からの respondents の可動性があり、地域的に近く、都会化、コミュニケーション、メデイアの洗練さを分かち合っている国々が日本とつながるのは役に立つだろう。2006年後期にデリーで行われた Male Sexual Health and HIV in Asia and the Pacific International Consultation のあとを継いだ APCOM 、 the Asia and the Pacific Coalition on Male Sexual Health は MSM に関連する組織と良きつながりを持って進展していっている。地域的な組織化をすすめるのは、大きすぎて非効率的な組織を変えるのに歓迎すべきことであるである。私は日本を含む組織が、本当のネットワーキングや同格化を用意し、政府が提言する MSM の問題や MSM 関連の HIV 感染予防策を支援するのを強く希望する。

 ‘ Informational, social and sexual networks of young gay and MSM in the Chubu area ’の発表とあわせて同じセッションでは Mr. Jie Xu が‘ Community consultations on the national strategic framework on MSM and HIV in China’について発表した。中国と日本のアプローチの比較は興味深く、スティグマや差別をどう構造的に変えてゆくかの議論が多くなされた。「社会が法に従うのか?あるいは法が社会に従うのか?」という疑問に対して、 Victorian AIDS Council の Mike Kennedy は政府官僚と働くことで、彼らはゲイが変化を与えるのに重要であることを知るであろうと提案した。発表の後、 MSM の HIV 感染が日本で高いことは気づかなかったと会議の中で私に知らせてくれた。

 全体的に会議はアジア太平洋地域におけるエイズ治療薬の万人への普及に対してのより良い理解を証明したが、治療の質的問題は残っていることを感じた。さらに若者の学校でのスケールアップした体系化性教育はもうひとつのよい進展である(日本の学校では HIV 関連の教育は注意がいる)。 自発的カウンセリング・検査 (VCT) から医療提供者から受検推奨が行われる自発的検査 Testing(PIVT) への移行の可能性、割礼を推進するプログラムが推進される可能性がこの会議で議論されていたが、これ以上の追求と討論が求められる。

 ICAAP への日本人参加者の出席と協力は日本の HIV 感染状況を知らせるのに大変価値のあるものであり、経済的、流行的状況が似ている国々とつながり、日本の HIV 関連の状況の意識を高めるものであった。とくに MSM 関連の問題では日本はいくつかの似た点を韓国、台湾、香港、そしてシンガポールと分け合っており、これらの国の研究者や CBO は育成されるべきである。今会議のさまざまな場面で、コミュニティーベースでの HIV 予防と支援の重要性が認められ、強調されていたにもかかわらず、財政的な事情から多くのゲイ CBO メンバーが ICAAP に参加できなかったことは、恥ずべきことだ。今後、 ICAAP が用意したデータを比較し、日本と他のアジア太平洋地域の HIV 予防と MSM 支援活動の資金や政策支援に関する比較を評価するのは興味深いであろう。