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第8回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

社会福祉法人 はばたき福祉事業団/東京大学 医学系研究科国際保健学専攻
Phairote Teeranaipong

テーマ: HIV および他感染症の重複感染についての情報

  2007 年 08 月 19 日~ 23 日にスリランカのコロンボで開催された「第 8 回アジア太平洋地域エイズ国際会議」( 8 th ICAAP )に参加したので、「 HIV および他感染症の重複感染についての情報」に関して報告する。

  会議では「 Waves of Change, Waves of Hope 」というテーマの下に、コミュニティーベースの HIV/AIDS 予防と制御、人権問題、スティグマ、法律内の差別的な条項、移民、ハイリスクグループにアクセスする便宜、エイズ治療( ART )へのアクセスと ART の配布などについて話し合われた。 HIV/AIDS における 2 次感染については、かなり限られた情報しかなかったが、「結核と HIV の重複感染のコントロール(アジアと太平洋地域)からの教訓( MoSYB02 )」というセッションで主に論議された。

  「ベトナムにおける TB/HIV の疫学と政府の反応( MoSYB02-1 )」では、カンボジアとは異なり、ベトナムでの HIV 感染流行は増加し続けていると報告している。 2005 年の HIV/AIDS と共に生きる人々( PLWHA )は約 26 万人であり、およそ 4 千人が毎年新規に感染している。その大多数は注射による薬物使用者( IDU )や、売春・買春によるものである。( UNAIDS Fact Sheet 06 、 2007 年 8 月更新)ベトナムでは IDU が HIV 感染の 50 %- 60 %を占める。更に、性産業労働者からの感染や、男性同性愛者( MSM )の感染も増加している。( AIDS Health Care Foundation, www.aidshealth.org , 2007 年更新)また、ベトナムでの結核の有病率はおよそ 10 万人あたり 235 人である。 TB/HIV は特に男性の若年成人で報告されており、 TB/HIV 患者の数は 10 年連続で WHO 目標値を超えている。患者発生の認知検出制度が未熟であり、「病状は安定」と報告されてしまっているため、正確な結核の発生数は実際は不明である。 WHO 支援下に「 TB/HIV コントロールのための NTP と NAP のジョイントプラン」が施行されている。 2010 年までに 70 %の AIDS 患者と 90 %の TB/HIV 患者が ART へアクセス可能にすることが、このプロジェクトの目的である。今 2007 年、保健省は、「 TB/HIV 制御コラボレーションのためのガイドライン」を発表し、共同作業のためのプロトコルや、結核の検出・診断・治療、 HIV 予防、 ART などの指針を示した。

  インドの議論は( MoSYB02-5 )、合理的なコラボレーションの発展についてであった。政府と、共同作業を行っている NGO は、 FSW や MSM や IDU といったハイリスク人口の公立の診療所や、質の国家結核プロクラムのサービスへのアクセスを改善させようとしている。 HIV 予防政策は、ピアーエデュケーションやコンドームの配布、 STI サービス、コミュニティの動員、環境整備、医療サービスへの紹介なども推進している。

  タイからの報告では( MoSYB02-3, MoSYB02-4 )、 TB/HIV に関して、発生の検知やカウンセリングなどの活動が HIV 流行が中等度の地域でも TB コントロールを改善していると示した。 2003 年からタイでの DOTS 施行率は 100 %であるにも関わらず、 TB コントロール成功率は目標である 85 %にまだ到達していない。現在タイでは、 TB/DOTS のみでなく、 AIDS/CCC ( Comprehensive and Continuum of Care )も施行されている。更に、 TB/HIV 治療においてもう 1 つのトピックがとりあげられた。 TB 治療中の ART は必要不可欠であるが、リファンピシンは NNRTI や PI の血中濃度を大きく変化させるなどの作用があり、医師は治療薬と相互作用を考慮しなければならない。

  日和見感染( Opportunistic Infection : OI )に関しては、命と関係のない口腔カンジダ症から、多くの臓器を侵していく致命的なものまである。免疫不全であるため、健常人では問題とならないものでも、 AIDS 患者では致命症となる。今回の 8thICAAP では、 HIV と他の感染症の重複感染に関するポスタープレゼンテーションが 2 、 3 件見られた。

  東インドの 250 人の HIV 陽性の子供達を対象とした 4 年間の後ろ向き研究では、最も多い OI は肺結核であり( 85 %、 N=200 )、 37.5 %ものケースが再発生の肺結核だった。この研究では、 1 )肺炎と結核が入院と死亡の最大の原因である、 2 )慢性下痢に低栄養の関連症状が多い、 3 )1ヶ月毎の外来受診入院と死亡を劇的に減少させた、と結論づけた。

  インド中央に位置する Nagpur という大都市での「 HIV 陽性患者( N=108 )日和見感染に関する研究」も報告された。細菌感染の最大のうちわけは下気動感染( LRI )であり、原因菌は、クレブシエラ 21 %、緑膿菌 9 %、肺炎球菌 8 %、ブドウ球菌 8 %、大腸菌 8 %、プロテウス 1.85 %であった。これらのうち、2種類以上の細菌感染は 24 %を占め、抗酸菌陽性は 16.66 %のみであった。なお、この研究は他の研究と矛盾する結果ともなっている。

  呼吸器以外では、寄生虫疾患も深刻な問題である。 HIV/AIDS 患者では、寄生虫が慢性下痢症の原因となる。慢性下痢症は、発展途上国でおよそ 90 %もの PLWHA におこる主要な合併症である。インド南部の研究では、 HIV 患者では ST 合剤による予防内服にも関わらず、イソスポラ( Isospora belli )感染症が高率に認められた。 ST 合剤は、イソスポラの標準的な治療薬であるが、カリニ肺炎の予防内服としての ST 合剤の用量では、 HIV 患者におけるイソスポラの発症を予防できない、としている。