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第8回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

リブ・ポジティブ!女性ネットワーク(仮称)
川名 奈央子

 女性への HIV/AIDS の影響の拡大( Feminization of HIV/AIDS )は、アジア太平洋地域でも顕著だが、そのようななか、今回の会議では女性が力をつけてきたことが実感できたように思う。ただ、それを政府や行政機関、国際機関や国際・地域 NGO などがちゃんと認識していないのが現状であり、問題なのではないかということも感じた。

 会議の前日、 HIV 陽性者フォーラムのあとに、アジア太平洋地域 HIV 陽性者ネットワーク( Asia Pacific Network of People Living with HIV, APN+ )のなかにできた、女性 HIV 陽性者のワーキンググループ( Women of APN+, WAPN+ )のミーティングを開いた。メーリングリストを通して事前にアナウンスしておいたものの、集まりはいまひとつだった。また、 HIV 陽性者フォーラムも参加者は期待したほどには多くなかった。

 それはなぜか。同日に国連エイズ合同計画 (UNAID) と女性に関する国際研究センター (ICRW) が、「 Women's Court 」という企画を同日の同時刻に開いたことが大きな原因である。私はもちろん、 HIV 陽性者フォーラムと WAPN+ のミーティングに参加していたので詳しい内容はわからないが、女性 HIV 陽性者が財産権を放棄させられたことなど、自分の体験を述べていくという内容だったようだ。なぜ、 HIV 陽性者が関わるような企画を、 HIV 陽性者フォーラムと同じ日の同じ時刻に行うのか。

 これは、単に「知らせるのが遅れた」とか「偶然、同日になった」という問題ではなく、 HIV 陽性者の HIV/AIDS 対策への参画拡大 (GIPA) が 1994 年のパリサミットの共同宣言に盛り込まれて以来、 13 年経った現在も全くリップサービス以外のなにものでもないということを示す事実だと感じた。

 ただ、そのようななかで、 WAPN+ を通して知り合った女性 HIV 陽性者が、いろいろなセッションやサテライト、プレナリーで発表者や演者になっているのを見たり、自分の国やコミュニティのなかで積極的に活動している話を聞いたりすると、彼女たちは着実に力をつけているのだとうれしい気持ちになった。彼女たちのなかには、 APN+ が開いたワークショップなどで初めて会ったときには、自分自身が今抱えている問題を解決するのに精一杯という状態の人も多かったが、ワークショップに参加して他の女性陽性者と出会うことで、自分の問題を整理し、声に出し、同じ立場の女性たちや、地域の人たちとつながり、動いていく力をつけてきた。

 さて、 WAPN+ のミーティングでは、まず、これから重点的に取り組んでいく 6 つの活動について説明をした。 6 つの活動とは以下である。

(1)女性 HIV 陽性者が安定した収入を得られるような方法を見つけるための支援を行う。
(2)女性 HIV 陽性者の治療や保健サービスへのアクセスを拡大し、治療に関する問題に取り組めるように力をつける。
(3)HIV 陽性の女性や子どもへの差別をなくし、その権利を守る。
(4)国レベルの女性 HIV 陽性者ネットワークの設立とその能力構築への支援を行う。
(5)国および地域レベルの政策や意思決定に関われるように、女性 HIV 陽性者の能力構築を行う。
(6)性と生殖の権利と健康に関する情報の提供と共有。

 WAPN+ はフォード財団から 3 年間の財政的支援を受けられることなり、この秋から、 APN+ の事務局に女性のコーディネーターが常駐し、これらの活動を進めていくことになっている。 10 月には運営委員会のメンバーによるミーティングを行い、骨子となる計画を作る予定である。

 WAPN+ のミーティングの参加者も、私たち運営委員会のメンバーも、(1)の収入獲得活動への支援は長期的な取り組みが必要だが、優先順位が高いということで意見が一致した。手工芸品などを作っている女性 HIV 陽性者のグループへ小額のお金を助成するのではなく、彼女たちがコミュニティで安定した収入を得ていくためにマイクロクレジットやマイクロファイナンスなどのスキームを導入できないかということを運営委員会では話し合っている。もちろん、既存のリソース(グラミン銀行やスリランカの女性銀行など)につなげるというのが最も現実的で、そのためにはそのような団体に関する情報収集や、利用する側(女性 HIV 陽性者)のスキルの構築も必要となる。これらを行っていくには、私たちだけでなく、そのような知識を持つ人々をパートナーとしてともに取り組んでいかなければならない。

 また、抗 HIV 薬 (ARV) を必要としている HIV 陽性者の 19 %しか治療にアクセスできていないというアジア太平洋地域で、(2)の女性 HIV 陽性者の治療アクセスへの取り組みは大きな課題である。治療にアクセスできない人たちのなかでも、女性はさらにそれが難しい。家庭のなかで女性の地位が低いため、限られた収入のなかで夫の治療が優先されたり、さらに状況が悪ければ、女性は家から追い出されたりするからである。自分たちの問題を声に出すには、同じ立場の女性たちと繋がることも重要であり、これは(4)にも関連する。 WAPN+ は地域のネットワークであり、コミュニティに直接関わることは難しいが、ワークショップに参加した女性が自分の国に戻り、自分のコミュニティで同じように他の女性陽性者をエンパワーしていくというこれまでのアプローチの効果は少しずつ出てきている。例えばインドネシアでは WAPN+ のワークショップ参加者が中心となり、今年になって国レベルの女性陽性者のネットワークができた。また、これまであまり表に出なかったベトナムやミャンマーの女性もワークショップに参加できるようになってきている。

 やろうとしている 6 つの活動はいずれも長期的な取り組みが必要であり、すぐには成果も現れないだろうが、今回の会議で出会った女性たちの力や情熱、心意気のようなものを感じ、彼女たちと一緒にがんばっていこうという気持ちを新たにした。