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第8回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

世界エイズユース連盟 Global Youth Coalition on HIV/AIDS
根本 努

 現在、世界では、 HIV 新規感染の 40 %を 25 歳未満の若者が占めており、一日に 4,000 人が感染している。若者らは、 HIV 感染の可能性がより高いとされている。他の年齢層に比べ、独身である割合が多く、性的に活発であり、性的自己決定能力の育成過程にある段階だからだ。アジア・太平洋地域も例外ではない。そうした背景のある中、本稿では、第 8 回アジア太平洋エイズ国際会議 ( 以下、 ICAAP8 とする ) に参加した筆者が、 事前にエイズ予防財団より与えられた課題の報告をする。渡航の前に、筆者には、以下のような課題が与えられた。一人のピア・エデュケイターとして活動をするチャンスを与えられている若者として、与えられた課題に対しての報告をしたい。

 課題は以下の通りである;

 課題: 「若者の組織化および若者と大人の連携についての情報収集」

 課題が与えられているものの、今回「若者」と銘打っているセッションは、 2 つだけであり、 ICAAP8 での若者の立場、またアジア・太平洋地域での若者がエイズの重要課題項目としてあがっていないことが明らかである ( 今回、アジア太平洋の若者を代表させていただき、 Track A の論文査読をしたが、キーワードに Youth というキーワードはない ) 。そのため、今回の情報収集では、他国の若者から見聞きした情報で、報告をしたい。

1. 「 若者の組織化」について

● 組織化とは ?
 
「組織化」と言っても、その人の考え方によって、定義が異なる。そもそも「若者」の「組織化」とは何だろうか。
  例えば、本稿で、「若者の組織化」とは、「若者 (29 歳以下のヒト ) 」が、「組織化 ( 理念を共有する若者らが集まるグループにモノ、カネを集中させ、ある特定の課題に対し、計画・実行・評価をし、実績をあげていくこと ) 」だとする。特に、若者の場合、若者である期限があるため、継続性 ( ハンド・オーバー ) を意識した活動が重要だと考えられることができる。

日本の若者
 
日本で若者が継続性を保ちながら、組織を維持するケースをいくつか考えてみると、必要な要素があがってくる。 (1) 学校に根ざした活動 / クラブやサークルである。 (2) 大人 ( 個人 / 団体 ) のバックアップがある。 (3) (2) のバックアップされている団体から、活動のために予算が計上されている ( 多くの場合、「されている」の表現が近く「している」という場合は少ない ) 。

  ユースの場合、ある程度の期間財源が確保されれば、ファンドレイジングに時間を割くことなく、ボランティアの範囲であれば、「組織化」させていくことも可能である。ところが、「エイズで食っていける若者スタッフ」は、日本で数えても片手で足りてしまうほどであろう。例えば、東京でフルタイムのスタッフを 1 名置くだけで、 350 万円程度の人件費がかかる。

  つまり、若者の input はボランティア以上の働きをすることができず、継続的に自分たちでファンドレイジング、あるいは新規の団体の支援者を募るような活動をすることがない、あるいは非常に少ない機会の中で行わなければならない。また、ボランティアでの業務のため、本来業務が忙しく、ウェブサイトの構築や、まして国際的に日本語以外の発信などもできていない ( 重要性を感じていない / 必要がない ) 。

海外の若者
  それでは、海外の若者たちはどうだろうか。
  ICAAP で、以下の団体から参加者が来ていた ;

 上記の団体は、ネットワーク団体であったり、実際にコミュニティで性教育を行ったりして、一概に比較をすることは、より詳細なファクト・ファインディングが必要であるが、おおまかに言える共通点として、下記のようなことが言える。

(1) 【経済的継続性の確保】国 / 地方自治体 / 国内外 / 国際機関等からのスポンサーがあり、活動資金などを自分たちで集める必要がない点;
(2) 【広報面での継続性の確保】 自国の言葉で、性やセックスに関する情報をウェブサイト上にあげ広報をしている点;
(3) 【人的資源での継続性の確保】フルタイム / パートタイムのスタッフを配置し、多くの時間をその仕事にあてている点
(4) 【活動について】「若者のプレゼンス」について、声を挙げ、継続的かつ一貫したアドボカシー活動を行っている。

 誤解を恐れず言えば、「一貫した活動理念のもと、若者らしい実質的な活動 ( 様々な関係機関と ) を実施し、成果を挙げていること」、「その活動を市民社会や政策提言の場にも発信し、活動の理解を得られるようにアドボカシー活動をしていること」で、活動の継続性を担保し、組織化の基礎を固めているのかもしれない。

  昨年のトロント会議のユース事前会合の際に参加した「マイクロ・ビサイド」の活動に非常によく似ている。社会的に大切なことであるが、市民社会からの理解を得られなければ、研究助成や補助を政府から受けられないために、実質的な活動以外にも広報アドボカシー活動をして、市民への意識喚起をしていくことが必要である、と。

  次に「若者と大人の連携」について、報告をしたい。

 

2.「 若者と大人の連携」について

 本稿で「連携」とは、「協働」であり、「共有」であり、「参画」「コミットメント」「巻き込む」「双方向性」「参加型」「パートナーシップ」などいったキーワードの総合体として、考えてみたい。

● 連携事例・スキルズ・ビルディング・セッション ~ 日本とオーストラリアの発表
  今回の ICAAP においては、若者と大人の連携事例発表は、日本の若者 ( アデオ・ジャパン 稲垣朝子さん ) が、オーラル・セッションで発表をし、東京都豊島区の先進的な事例を発表した他、稲垣さんからは、「豊島区の事例を踏まえ、「行政」との連携事例は、若者の中でも報告があがっている。今後は「企業」や「研究者」との連携をはかれるようにしたい。」との発表があった。

  特に、日本で、エイズ分野で保健所は、「検査」「相談」「世界エイズデーに向けた啓発活動の実施」を担っている。特に 3 つ目の連携事例として、 2005 年に始まった、世界エイズデーにちなんだキャンペーン wAds (World AIDS Day Series) を実施し、保健所との連携事例報告をしている。 ( その例として、多摩府中保健所の連携があげられる ; 2006 年、 wAds 実行委員会との協働で活動をした多摩府中保健所は、 2007 年、 wAds 実行委員会を多摩府中保健所内の評議委員のメンバーとして迎え入れた。こうして、多摩府中保健所では、若者を重要なステークホルダーとみなし、積極的に連携している。 )

 また、本会議の前に行われた、ユースプレ事前会合では、前述のオーストラリアのユース団体「 Y.E.A.H! 」の創設者アリーシャ・ロス Alischa Ross さんが、「大人とのネットワークについて」についてワークショップをした。

  「大人とのネットワーク」とは、若者から、大人に対して具体的なコミットメントをもらうためのコミュニケーション・スキルの習得が必要であり、さらに常日頃からエイズに関する情報を集め、若者に関する具体的な統計を常に把握していることが必要である、と語った。

● なんのための「連携」か ?
  「連携」とはいうと、きれいで理想的な言葉に聞こえる。しかし、豊島区の事例にしても、互いに目標やビジョンを定めた上で、「連携」をすると判断し、それが「何のために」行われ、「どの程度」連携をするか、合意に達さないまま始まってしまい、ただ「連携」だけが一人歩きしてしまうのは、本末転倒である。

  短期的に成果を見たときには、「連携」そのものを目標にし、次のステージに進むことも有用かも知れないが、長期的に見たとき、お互いのビジョンがかけてしまうと、若者は「使いやすい安価な ( 交通費と弁当だけ出していればいいような ) 労働力」となるだろうし、モチベーションも維持できないだろうから、継続的な活動をすることは難しいだろう。何度も繰り返すが、協働のスタートポイントの時点で、ゴールをともに描き、協働の目的を話し、お互いの役割を明確にすること ( それは若者 - 非若者の二項対立の構図ではなく、お互いに補完しあう関係であること ) が重要である。

 

3. まとめ

 今回の ICAAP を通して、「若者自身がイニシアチブを取る、 HIV 感染予防行動」「予防サービスへのアクセス」「教育現場におけるエイズ課題への対応」などについての活発な議論が行われたが、若者に限られた議論は非常に限定的で、世代やセクターを超えた連携強化、アジア太平洋地域特有のユースに関連する課題抽出などについては次回以降の宿題となった。

 アジア太平洋地域では、特に第6回メルボルン会議以降、「若者の参画」「若者の多様性(都市 - 農村格差、セクシュアル・マイノリティ・ユース、ドラッグとユースなど)」が語られ始めたが、以降神戸、コロンボと特に議論の進展が見られず、「参画」ばかりが議論されている。いよいよ本会議の場で、「多様性に踏み込み、科学的実証に基づいた効果評価」を出していく次のステージに来ている。既存の枠組みを当てはめ、他のエイズ個別施策層に習うことから始め、「ただやりました」以上の成果が求められている。

 今回会議に参加したアジア・太平洋地域の若者が、それぞれのコミュニティに持ち帰り、自分たちの活動を少しでもスケールアップする中で、多様なセクターとの連携を期待したい。私自身、今後は大学院に戻り、研究活動を進める中で、より科学的に実証されたプログラムの提供や若者視点からの評価項目作成など、日本の、世界のエイズ対策の一端を担えるような人材になれればと考えている。