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第8回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

特定非営利活動法人 働くゲイとレズビアンの会(アカー)
藤部 荒術

 今回の第 8 回アジア太平洋地域エイズ国際会議においては、自身の公的な役割としての、MSMを対象にした予防介入の実践についての2本の報告(口頭演題発表“ Sexual Behavior and Networking of MSM Who Participated in Gay Bar-based HIV Prevention ”および、ポスター発表“ The Method of Community Development: Implementation of "LIFEGUARD" Safer Sex Workshop for Gay/MSM ”)のほかに、各国の「 MSM向けHIV予防プログラムについての情報収集」が本 会議の参加目的でした。

 開会式、閉会式を含めて5日間におよんだ会議参加を通して、「MSM」をテーマとした研究発表および各種セッションは、多数にのぼりましたが、事前に「MSM」、「検査」や「HIV予防」などのキーワードを用いて、参加すべきものを抽出した上で、できるだけ能率よく参加できるように努めた結果、実り多い時間を過ごすことができました。

 本会議の公的役割として、8月21日に行った口頭演題の発表に おいて紹介したネットワーク分析を応用した調査手法など、従来の個人モデルに中心をおいたHIV予防介入プログラムを形成・実施・評価する考え方から脱却し、個人を取り巻く環境の方に焦点をシフトする考え方へと変わる傾向がMSMの予防プログラムにおいても、見受けられたことは、ひとつの会議参加の成果でした。

 MSM向けのHIV予防プログラムに「予防に対する知識の不足」や「誤解」といった個人レベルの要因に介入しながら、「スティグマと差別」など個人を取り巻く環境や人権の観点の重要性を指摘する発表が多かったのは、注目すべきものだと考えます。

 また、MSM向けHIV予防プログラムに関して行われた発表を全体的にみたとき、以下のような2つの傾向が見られました。1) MSMに対する支援が行われている国・地域が拡大していること、2)国連組織等のハイレベルな政策においてMSM問題が正式化されるような流れがあること。

1) MSMに対する支援が行われている国・地域が拡大していること

  MSMに対するHIV/エイズ関連支援の地理的拡大という意味では、近年実践報告の多かったタイ、カンボジアなどのほかに、ベトナムやラオスを含む“ Greater Mekong Sub-region ”としての発表、ビルマ、パプアニューギニアやフィジー、モンゴルからもMSM関連の調査研究・事業に関する発表がなされました。またアジアの先進地域については、日本と香港を除いて、韓国、台湾、シンガポールなどからのMSM向けの対策についての発表はそれほど多くありませんでした。日本と似たMSMコミュニティを持つ地域からの予防プログラムの例を見つけることができずに残念でした。会議開催地との地理的近接性もあって、インドから数多くの発表が行われていましたが、開催国スリランカからの発表は非常に少ないものでした。


2)国連組織等のハイレベルな政策においてMSM問題が正式化されるような流れがあること

  二つ目の国連機関等におけるMSM問題の正式な認知という点については、今回の会議中に Asia Pacific Coalition on Male Sexual Health ( APCOM と表記する)というアジア・太平洋地域のMSM問題に関してアドボカシー活動や資金動員、能力強化等の取り組みを促進するネットワークが発足するなど、将来、MSM問題正式化の動きの地域化が図られていく予定である、という発表がありました。今後、その動向を注目していくべきだと考えます。

 帰国後、今回のエイズ会議で得た成果を還元すべく以下のことを実施しています。 各発表を通して得た 各国のMSM/ゲイ男性のリスク行為の背景にある多様な社会的・文化的要因や実際のさまざまな予防活動を比較、検討、分析して、国内で開催するMSM/ゲイ男性向けHIV予防プログラム ( LIFEGUARD ) の企画立案・実施に還元しています。また、情報・意見交換を目的とした、一連の報告会・学習会を開始し、その成果は、追って特集記事を作成することで還元する計画でいます。