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第9回アジア太平洋地域国際エイズ会議参加報告書
 

社会福祉法人はばたき福祉事業団事務局長
柿沼 章子

【報告~就労に関して~】
現在、HIV感染者の就労について積極的に取り組んでいるためHIV感染者の就労(職場)のテーマを中心に下記のセッションやワークショップに参加した。

  1. 『Workplace-Government and Private Sector Policies and Programs』
  2. 『Behaviour Change Communication in the workplace』
  3. 『You Want to Stop HIV Discrimination In Employment』

昨年のメキシコで開催された国際エイズ学会でも就労に関するセッションに参加したが、国による経済・環境の差が大きく、また具体的な取り組みというよりは政策的な面が重視された内容と比べ、今回のICAAPは地域的にも限られていたためか具体的な取り組みやILOの各国での活動が取り上げられていた。その中で特に興味深かった 2. のワークショップの報告をしたい。

2. 『Behaviour Change Communication in the workplace』
職場におけるHIV/AIDSの取り組み、ILOコーディネーターによるWorkplace Programや BCC (Behaviour Change Communication in the workplace)プログラムの紹介、そしてそれらプログラムを活用しようという内容だった。

参加者はILOコーディネーター、国の機関(労働省)、支援団体の人々で当事者の参加はなかった。印象としては途上国に対しILOなど国際機関の援助が充実していることを感じた。確かにそれらの国々は経済的にもHIV/AIDSの疾病に限らず援助が必要だとは思う。しかしそれは別として、ILOコーディネーターの存在とその活動は新鮮だった。また、大企業によるHIV/AIDSの支援団体等への寄付・支援は途上国のほうに目が向いているようである。途上国に比べ日本は経済的には豊かかもしれない。しかし、国内において企業のNPO活動への寄付・支援等は多くはなく、個人のがんばりに負うところが大きい現状をどのように解決するか今後の課題である。逆に日本と比べ国際機関の援助と寄付等はアジアの国々の方が充実しているのと感じた(各国は不十分だと主張していたが)。特に国際機関であるILOの働きかけは羨ましくもある。また、途上国での取り組みは職場における感染者の理解ということもあるが、より従業員の予防啓発が優先されていると感じた。それだけ現時点での感染者数や増加が問題となっているのであろう。共通点としては、企業へのアプローチはそう簡単ではなく「なぜ我が社がHIVに取り組まなければならないのか」の壁を突破するためにいろいろと根気強く取り組みをしていることである。このへんの事情は同じであるが、そこで活躍しているのが各国のILOコーディネーターである。彼らの活動の具体例として下記の取り組みが映像で紹介された。


■インド 某セメント会社 タオルを使った教育啓発
工場で勤務する従業員は就労後シャワーを使う、従業員全員にHIVの情報を印刷したタオルを配布し、HIVの情報を好むと好まざると目にする状況をつくる。それによりHIV/AIDS感染者への偏見・差別解消のためとしているが、むしろ感染予防、教育啓発に役立っている。

■東南アジア 某小売品販売会社のHIV感染者訪問支援
HIVに感染した従業員への配慮として、体調が悪く自宅で療養している従業員宅に同僚が会社で扱う食料品を携え訪問を行う。会社から支援されているという安心感は感染者本人だけでなく、その家族への安心感につながっているというコメントが当事者からあった。

■太平洋諸国 某銀行 HIVのメッセージ入りのマグカップを使った取り組み
行員が休憩時間等にお茶を飲むときにメッセージ入りのマグカップを使用し、普段の会話の中にHIVの話題を取り入れることを狙いとしている。また、行員がカップを机の上に置くことで銀行へ訪れる多数の様々な人々もそのマグカップを目にすることで普及啓発も兼ねている。

■中国 大多数へのアプローチ(案)*これはまだ計画段階のようである。
人口が多いため、大多数に働きかけるためには、メディアを使い有名人を起用しHIVの教育啓発を計画している。メディア以外、観光地にHIV予防啓発等の看板を設置し、観光客にもPRすることも計画している。「毛沢東氏の銅像の横に看板を!」という発言があったが、これは冗談のようであるが実現したら非常にインパクトがあり面白いと思った。

1. 『Workplace-Government and Private Sector Policies and Programs』
3. 『You Want to Stop HIV Discrimination In Employment』

職場におけるHIV/AIDS感染者の問題はILOでも取り上げ、検討しガイドライン等に反映している。このようなILOの基準を机上の計画で終わらせない方法を考え実践していく必要がある。また、受身の立場ではなく感染者自らが自身の経験をもとに職場における理想・希望を方針として描き雇用主に提案する、ILOのガイドラインに反映させていこうという内容でとも重要だと思う。Key workplace players in effective programという言葉が印象に残り、各企業と連携していく今後の課題としてヒントになった。

【国内で還元する具体的計画】
学会で得た情報を下記に活かしたい
・『HIV感染者就労のための協働シンポジウム』(2009年10月5日・東京)や報告会(全国4ヶ所 2010年1~2月予定)
・企業に向けHIV感染者の雇用のためのワークショップ
ILO駐日事務所訪問 BCCプログラム等の取り組みを調べ企業向けのワークショップや協働について意見交換
HIV感染者の就労のための冊子作成(平成21年3月発行予定)

【感想】
これ以外のセッションやワークショップにも参加したが、その中で頻繁にでてきたKEY WORDとして、 Plan  Do  Check  ~Redesigh~ や Continue to change がある。計画し実行、それで上手くいかないならもう一度計画を練り直せばいいじゃない、変化し続けよう。という柔軟な姿勢がとても好ましく感じた。現在支援者としてHIV感染者の取り組み試行錯誤している自分に励ましの言葉になった。

このような機会を与えてくださった(財)エイズ予防財団に感謝申し上げます。