HOME >> 資料室 _ 関連学会情報 >> 第9回アジア太平洋地域エイズ国際会議(インドネシア)/2009年 >> 参加報告書

第9回アジア太平洋地域国際エイズ会議参加報告書

特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会(アカー)/(財)エイズ予防財団リサーチレジデント
藤部 荒術

■ 参加目的

第9回アジア太平洋国際エイズ会議には、以下の2つの目的をもって参加した。

A. HIV検査事業における行政・NPO連携、MSM向けHIV/エイズ施策における行政・NPO・研究者の三者連携の事例に関する研究発表、論文の収集に努める。

B. アジア太平洋地域各国のMSMを対象としたHIV予防理論を学ぶ。特に、各国のMSM/ゲイコミュニティを取り巻く環境を反映して実施されている独自の予防介入プログラムの具体的実践や手法に注目する。

インドネシアのバリ島にアジア太平洋地域の各国から約6,000人以上の参加者を集めた第9回アジア太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP)は、アジア太平洋会議としては、過去最大規模の会議となった。MSM/HIV関連事業の発表においても、地域的な幅や発表数ともに、第7回大会(神戸)、第8回(スリランカ)に比べて、増加傾向にあった、という印象を持った。会議期間を通して、ゲイ/MSMに対するスティグマや差別が、感染の拡大を引き起こしており、これまで無視されてきたゲイ/MSM層に対する組織的で、さらに拡大・深化した介入実践が必要である、というメッセージが繰り返し確認された。
その中、A、Bに参加目的をわけて、ICAAP2009参加を報告する。


■ A. 「HIV検査事業における行政・NPO連携、MSM向けHIV/エイズ施策における行政・NPO・研究者の三者連携の事例」についての発表および文献研究について

● 「発展アジア」(”Developed Asia”)という視点から
一言にアジア太平洋地域と言っても、文化的、経済的、宗教的にも、実に多用な地域を含んでおり、むしろ日本のHIV/エイズの状況を考えるとき、香港、シンガポール、韓国、台湾などとともに「先進アジア」(“Developed Asia”)という観点から分析した方が有効な場合も多い。会議期間中は、“HIV Infection among MSM in Developed East and Southeast Asia” 〔2009年8月11日〕というセッションが開催され、先進アジア地域のゲイ/MSMにおける有病率など各種疫学データの共有、そして、各国のゲイ/MSMに向けた予防介入プログラム実践が紹介された。このセッションは、ゲイ/MSMに向けたHIV/エイズ施策における行政・NPO・研究者の三者連携を促進することによって、どのように有効にHIV/エイズに対するリアクションを行うことができるのか、という事例を研究する上で、有益な機会となった。また、会議中、2011 年韓国・釜山で開催される次回ICAAP10 を見据えて、先進アジア地域各国のHIV 感染状況やリスク要因分析、ゲイ/MSM 人口規模推計、政府指針など各国・地域の状況比較を行っていくことで、アジア先進地域のゲイNGOを結ぶネットワーク化を目的した、いくつかのミーティングにも参加した。


● 「連携事例のモデル化」について
ICAAP2009と連動する形で、アジア太平洋地域のゲイおよびトランスジェンダー団体のネットワークAPCOM(Asia Pacific Coalition on Male Sexual Health)による、プレ会議シンポジウム(8月8日土)にも参加した。当シンポジウムにおいて、アメリカのエイズ研究財団(以下 amFAR)による発表”Donor/implementer recent work; overview of needs and solutions”は、アジア太平洋地域のゲイ/MSM向けのHIV/エイズ関連事業(HIV/STI予防情報の提供、HIV検査、治療サービスなど)における事業主体のパッケージ化やスケールアップ、事業主体間の連携、事業のデザインに必要な社会的情報の整備などについて示唆に富んだ発表であった。また当該の発表の基となったamFARによる報告書(Ensuring Universal Access to Comprehensive HIV Services for MSM in Asia and the Pacific)を入手できたことは、今後、日本国内における、「MSM向けHIV/エイズ施策における行政・NPO・研究者による連携事業」を理論家、整理する上で、貴重な一つの文献となった。報告書において、アジア太平洋地域における、さまざまな連携の新しい取組み、また今後、どのように事業の規模を拡大していけばいいのか、という問題についての諸課題について、諸モデルの比較検討や整理がなされている。


■ B. アジア太平洋地域のMSM対象の予防理論について

● 日本国内におけるゲイ/MSM向けのHIV/エイズ予防介入プログラムについて口頭演題の発表
" Men Having Sex With Men: Cultural and Social Dynamics"(「MSM:文化的、社会的なダイナミクス」)というAbstract Sessionにおいて、日本国内のゲイ/MSMを対象としたゲイバーベースのエイズ予防ワークショップ『ライフガード』の実践について報告・発表を行った(演題名は、“LIFEGUARD: Its Effectiveness of the Workshop-style HIV Prevention Program at Gay Bars in Japan”)〔2009年8月11日14時15分~15時45分〕。発表は、2001年から2009年まで毎年開催されている『ライフガード』プログラムの独自性や工夫点、プログラム構成の基盤となるコンセプトについて、教育資材のイラストや写真を交えながら、運営面でのより実践的な側面に焦点をあてたものであった。発表を受けて、チェンマイ(タイ国)や上海、香港(中国)、台北(台湾)、マニラ(フィリピン)など、アジア各国の都市においてゲイ/MSMのためのHIV/エイズ活動に従事しているNGOワーカーたちからのアプローチを得た。このような国際エイズ会議での発表の場が、研究的な情報収集や成果発表の場となると同時に、国内での実際の実践の機会を、他国での地道なフィールド活動における経験との、共通点や違いと引き合わせることで、互いの仕事の意味を確認しあう、貴重なネットワーキングの機会である、という事実を改めて認識することができた。


■ 会議の成果を国内で還元する方法について
今回のアジア太平洋地域の国際エイズ会議で得た成果を還元すべく具体的には以下のことを実施予定である。

(1) 地方自治体との連携で開催するMSM向けHIV予防プログラム『LIFEGUARD』の今年度版の企画立案・実施・および成果の発表に還元する。

(2) HIV/エイズ施策における地方公共団体-NPO連携をテーマにした研究発表および論文執筆により、多くの関係者に情報を還元する(日本エイズ学会、公衆衛生学会)。

(3) また購読者に感染者・MSMを含むコミュニティ向けの会報(『QM』、発行部数=500 部)およびWeblog(http://d.hatena.ne.jp/QMblog/ )にICAAP特集記事を作成する。Weblogにおいては、「ICAAP2009」のカテゴリーを作成し、すでに一部成果の報告を開始している。  >>  詳しくはこちら 
 
■ 最後に
5日間におよんだ会議参加を通して、実り多い、充実した時間を過ごすことができました。最後に、このような会議への参加というチャンスを与えてくださったエイズ予防財団にこの場を借りて感謝を申し上げます。