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第9回アジア太平洋地域国際エイズ会議参加報告書

TAWAN(在日タイ人の健康をサポートするグループ)タイ語医療通訳
サイルン・ムクアーリーワッタナー

8月7日、午後11時、私たちはデンパサール空港に到着しました。人々は入国ビザ手数料を支払うために長い列を作っていました。タイ国籍をもつ私たち一行は、その手続きを免除されているため、そのような長蛇の列には並ばずに通過することができ、パスポートに入国印を押してもらうことができました。そしてタクシーで、市内にある小さなホテルに行きました。

8月8日、私たちはその日初めて会議に出席するため、とてもどきどきしていました。早朝に起きてタクシーでヌサドゥアというホテルに移動し、会議登録および会議参加者であることを証明するための写真付IDを作成しました。そして、移住者フォーラムの「HIV/AIDSに対しての移住者のエンパワーメントについて」という会議に参加しました。会場に入るとフィリピン、インドネシア、インド、スリランカ、そしてタイなど様々な国から大勢の人々が参加していました。

私は、海外で働く移住労働者のグループの話を聞く機会がありました。彼らの説明によると、労働者はHIVに感染していることがわかると解雇され、すぐに帰国させられるそうです。そのように帰国した労働者から感染する人々もたくさんいます。

移住労働者は、ストレスが多い、休息の時間も十分でない、長時間労働を強いられる等の状況にあり、休日がたまにあると集まってにぎやかに酒を飲むなどし、気がついたら性交をしていたということがよく起こります。状況をよく理解せずに感染する人もいます。中には雇用主にレイプされて感染する人、海外から戻った夫の感染を知らずに妻が感染し、家族、たとえば友人や近所の人々、両親兄弟との間に様々な重大な問題を生じさせるケースもあります。また収入の問題や失業も生じます。

今回は、妻の立場で登壇し、勇気をもって種々の問題について、これから海外に働きに行こうとしている人やこの分野で問題解決のために活動する団体の人々のために語ってくれた女性がいました。

私は、この会議で、MAPやTNP+など、タイで活動する団体の職員であるタイ人と出会うことができました。彼らは、治療のために継続的に薬を使わなければならない患者から利益を得ようとしている製薬会社に対して抗議し、闘っています。薬の品薄または値上がりを見越して商品を貯蔵し、異常な値上がり率から利益を得ようとするというような混乱した状況があるからです。このような情報は、私にとってはまったく初めて知ることでした。死が近い人から搾取し利益を得ようとする種類の人々がいるというのは、まったく想像しませんでしたから、このように勇気を出して登壇し話を聞かせてくれた人に対し、感謝と尊敬の念を抱きました。感染者の中には、感染を隠さず、恥ずかしがらずに社会に対して働きかけている人たちがいます。彼らは一人ではなく、何人かのグループになり、そしてより大きな団体として集まって参加していました。英語がわからなくても、通訳を頼んで自分たちの言いたいことを発表しました。彼らが登壇してくれたことで、私たちは彼らの気持ちを理解することができましたし、彼らも正直な気持ちを表すことができたと思います。

8月9日はICAAP9の開会式が執り行われ、インドネシア大統領と夫人が出席され開会の辞を述べられました。
今回の会議は、通常の会議ホールではなく、山脈を切り開いて作られた場所で、何万人もの人々を収容できるかなり大きな会議場となっていました。その会場は山と山の間にあったので、各所に警備職員が配置されていました。私は、山の高いところに銃を携えた警備職員がいるのをみて、本当に驚きました。というのは、開会式が行われる前に、ジャカルタではテロ組織による事件が起きており、インドネシアの治安当局は以前にまして警戒を高めていたからです。このため、参加予定者のうちの何人かはビザがおりず、参加することができなくなってしまったときき、まったく残念なことだと感じました。

式典は大変大きなものでした。音楽やダンスのショー、参加者すべての人たちが観たり聴いたりできるためのビデオ撮影設備がありました。インドネシア大統領、その夫人、会議関係者および役員らが次々と登壇し、祝辞を述べました。また、青少年の男女が、勇気をもってエイズに関するそれぞれの考えや意見を堂々と述べたという事実や、彼らの話の内容は、聴衆に勇気と感動を与えました。

そして終了後は、夕食のパーティーが会議参加者のために開かれました。この日、私はたくさんの国からの大勢の参加者と出会いました。このようにエイズのことに関心を持っている人々が、アジア太平洋地域の人々だけでも、このようにたくさんいるのです。私は自分の周りの人たちに、HIV陽性者の人たちはたとえ感染していても自分の考えを社会に伝える権利と機会を持っているということを、伝えていきたいと思いました。

8月10日
私たちはいつものように朝早く起きてホテルで朝食をとりました。そして、どこの講演を聴きに行こうかと考えていました。

私たちは、地球規模における現在のエイズの状況についてのインドネシア外務大臣の講演を聴きました。その中で、エイズが広まるか減少するかについて話されたとき、タイはエイズに関して支援組織を備えた、アジア太平洋地域の中の先進国の例として紹介されました。私たちはとてもそれを誇りに思いました。日本にいるタイ人感染者で、このような詳しい事実をまだ知らない人がいたら、勇気を出してこのような事実について聞いてみるとよいと思います。

その後、私たちタワンの発表となりました。私たちは、私たちができること、活動の目的などをアジアの参加者に知ってもらうため、センドゥアン荒井さんが、タワンのこれまでの活動、設立目的、在日タイ人へのサービスなどの情報を発表しました。

知る限りでは、私たちのようなボランティア活動をしている団体は他にはありませんでした。タワンの活動は他の講演した団体に比べると、とても小さなものですが、行っている活動はとても良いものです。今以上に活発に活動できればと思いました。

私たちは、たくさんの人たちを参加させ、当事者の考えや気持ちを表現させることに成功しているフィリピンの例から学ぶことができます。これは、実際に聴衆の前で、自分自身と夫に実際に起こった出来事について話していた女性のことを例にしたものです。内容は、あるインド人女性は、夫が感染したことを知らずに、自分も感染してしまった妻という設定でした。夫は先に他界し、自分だけが残されたため夫の家族と同居を余儀なくされ、自分のせいで息子が死んだのだと夫の母から責められ続けている、とその妻は話していました。そこに、売春をしているインド人女性が現れて、今まで話をしていたもうひとりのインド人女性に対し、自分たちの存在を感染の原因だと決め付けることに対して抗議しました。その女性は、聴衆の前にも関わらず、恐れもなく自分の立場を明らかにし発言者を指差して考えを改めるように非難したのです。

私は、以前は、売春に従事している女性は、なぜそのような仕事をしているのか、なぜ他の仕事を探さないのか、社会から軽蔑され、この職業を認めている国はほとんどないのにどうしてそれを続けているのか、と不思議に思っていました。しかし、私はこの会議で、インドやオーストラリア、その他の国々の女性たちが社会の目を気にせずに自分の考えを述べているのをみて、新しい考え方を知りました。売春という職業が今後も存在し続けていくだろうと予想できる以上は、売春に従事している人々を、社会的尊敬が得られないという違いはあるにせよ、他の人々と同じ労働者としてみなし、支援していくべきであるという考えです。

その後、私たちはタイ人の女性の先生の講演を聴きました。内容は、緊急治療を要する結核の話でした。というのは、現在、この結核は悪性でエイズよりもずっと早い勢いで感染拡大しており、迅速な治療を必要としているからです。この先生は助成団体に対して、エイズだけでなく結核に関しても助成を行うよう要請しました。私は、結核がアジア太平洋地域でこんなにも拡大しており、これほど感染しやすいものとは考えてもみませんでした。

つぎに、スリランカの感染者グループが登壇し、感染して仕事を得ることができない感染者や治療費のない感染者のための助成金を求めて、人々に訴えました。私が見たところ、発言者はとても痩せていて、話す力もあまりないように見えましたが、力をふりしぼって登壇し助成金を求めました。その努力が実って、ある支援団体(私は名前を覚えていませんが)が援助してくれることになりました。その感染者グループの男性は、実は私たちと会場で友達になった人たちでした。彼らは私たち二人を見つけると近づいて頬にキスをし、喜びました。私たちも彼らが自分たちの願いをかなえるまで努力を続け、成功を遂げたことを本当によかったと思いました。彼らはきっと国に帰ったら、良い知らせを待ちわびている友人たちにこのことを喜びとともに伝えることでしょう。

今日、私たちはいろいろな展示ブースを見ました。あるマネキンの足元には女性用コンドームがたくさん置いてありました。私たちは、日本ではあまり女性用コンドームは使われていないことを話すと、展示者はたくさん持って行って日本の女性たちに使ってもらってと言いました。

今回の催しでは、コンドームをたくさん見かけました。コンドームブースの前には女性が立っていて、コンドームに関する講演をしたり知識を提供したりしていました。ブースを訪れて質問しにきた人々は、あまりにもたくさんの種類のコンドームがあったので、コンドーム製造工場直営のブースと思ったのではないでしょうか。私はタワンの活動のためにたくさんコンドームをもらってきました。展示者がつかっていたのは、タワンが使っているような絵ではなく、実物をまねて作った模型でした。

今日、私たちはタイのエンパワーという団体の講演を聴きました。エンパワーは、パッポン通りでサービスレディーとして働く女性たちのための活動をしている老舗の団体です。彼らは能力があり自分たちを表現することに大変優れています。私は彼女たちが「サービスは仕事だ」というスローガンを大きな布地に書いて横断幕のように持ちながら会議場の周りをパレードをしたり、世界売春婦会議まで開いたりしていることに大変興味を持ちました。このグループは感染者の支援をしたり相談にのったりしています。また性産業で働く女性を搾取しようとする人たちに対抗します。私は今回エンパワーの代表と知り合うことができ、さまざまな情報を得ることができました。彼らは、今回たいへん協力してくれて、講演の内容やスライドを聴衆に情報として送ってくれることができます。エンパワーの活動たいへん素晴らしくタワンにとても有益なものです。彼らはタワンに親身に協力してくれそうですので、エンパワーにタワンの活動を詳しく紹介しました。

今日私がうれしかったもうひとつのことは、エンパワーの発言を会議で聞いた聴衆の一人と出会ったことです。その人は、クロントゥーイスラムで活動するドゥアンプラティープ財団の職員でした。その方を私は先生と呼ばせてもらいますが、私は先生と昼食を同席して、ゆっくりと話す機会がありました。先生は、海外で暮らすタイ人の健康やエイズに関する活動をしているタイ人がいることを知らなかったそうで、このような意義のある活動をしているタワンを賞賛されました。先生は、私にドゥアンプラティープ財団のバッジをくださって、先生がプラティープ先生を助ける重要な役職の人として、スラムに住み始めてからのさまざまな話をしてくださいました。先生は、私がしたいろいろな質問に答えてくださいました。グループ内の人間関係を築くためにはどうしたらよいのか、グループの外の人との関係はどうしたらよいのか、私たちの活動に賛成しない人、対立する意見の人とはどうしたらよいのか、また事実を認めようとしない人とはどう接するのか、などについて私は質問したのですが、先生は丁寧に答えを返してくれました。

8月11日および12日
私は、ある先生の、麻薬について講演を聴きました。その先生によると、麻薬の売人をいくら逮捕しても、市場ではその販売はまったく減少せずに続いているそうです。

また、海に出て長く働いている労働者についての話も聞きました。彼らの性衝動はあまりに高い状況にあるため、陸に上がって買春の機会があるとコンドームを使用せずについつい性交をしてしまうため、周りの多くの人を感染させる結果になるそうです。

私たちはタイ厚生省からの会議参加者に会い、国民IDと無料健康IDカードについての情報を得ることができました。もし患者が帰国後まわりの人たちに自分の感染を知られたくないのなら、必ずしも自分の村に帰らなくてもよいこと、帰国して治療を受けたい患者の支援機関があることを知りました。また、身を隠して治療を受けようとしない患者にはどのような方法で話をしたらよいかについて、よく知っている医師を、将来のタワンの活動のために紹介してくれるという医師にも会いました。

今日、私はひどい腹痛を下痢に悩まされています。身体に力が入らず、トイレに何度も通わなくてはならないので、講演を聴く状態ではありません。そのため、報告書がこれ以上書けないことをお詫びします。

私がとても誇りに感じ、うれしく思っているのは、ある友人の友情を以前にも増して感じることができたことです。その友人は自分の利益のためではなく、タイ人のために、また団体のために、労苦を惜しまず活動をしてきました。長い活動歴にも関わらず、自分がどれほど多くの活動を成し遂げてきたかについては他人に口外せず、疲れ知らずで働いてきました。人の迷惑にならないようにと、助けを借りずにまず自分でやろうとします。年齢はそれほど高くありませんが、能力は年齢以上のものです。

私は、今回のICAAPへの参加を可能にさせてくださったエイズ予防財団に心からお礼を申し上げます。また、会場でさまざまな意見や考えを聴かせてくれた参加者のみなさんにも感謝申し上げます。許し合い、認め合い、他人の意見に耳を傾けることで、団体として良く存在し続けられるのだということがわかりました。

尊敬をこめて
サイルン・ムカリワタナー