HOME >> 資料室 _ 関連学会情報 >> 第9回アジア太平洋地域エイズ国際会議(インドネシア)/2009年 >> 参加報告書

第9回アジア太平洋地域国際エイズ会議参加報告書

特定非営利活動法人 HIVと人権情報センター全国事務局職員
大釜 正希

「第九回アジア・太平洋地域 AIDS 国際会議」は、3,824 名の会議登録者に加えて、メディア(262)、展示出展者(122)、組織委員(172)、ボランティア(218)、技術スタッフ(589)、セキュリティー(291)、来訪者(531)などを含めて、インドネシア・南アジア・東南アジアを中心とした七十八カ国から六千名を超す人々が参加した。

今回私がこの会議に参加した目的は二つある。まずは、アジアパシフィックビッレジ(APV)でブースを出展し、日本のAIDS の現状を伝えると共に、各国の人々とのつながりを形成し、お互いの経験や問題を共有し合いながらNGO として果たすべき役割を見出すこと。もう一つは、私が担当している若者向けのAIDS 啓発活動に関係するセッションに参加し、そこで学んだことをプログラムに活かし、啓発メンバーと共有しスキルアップを図ることを目的として参加した。

会議では、APV での活動を主に、オープニングとクロージングセレモニー、プレナリーセッション三つ、オ ーラルセッション二つ、フ ィールドビジット二ヵ所に参加した。

この報告書では、会 議で得たインドネシア国内の概要と私が関わっている分野を中心としたテーマの報告、会議の感想、そして会議で得たものをどのように還元していくかを述べる。

1.インドネシアのAIDS に関する概要

2.Community Empowerment for HIV prevention
教育機関や地域に出向いてAIDS 啓発のプログラムを実施する上で、パ ートナーとなって進める関係者や地域の人々との協働や信頼、理解といったものを得ることが、プログラムのより良い効果を生む上で大切であると考えているが、そ こで役立つ情報を共有したいと思い上記タイトルのセッションに参加した。

●acon(エイコン) -人材育成と事業の継続、コミュニティー内への伝搬-
オーストラリアの団体acon が二十一年継続している「Fun & Esteem」プロジェクトという MSM 向けの HIV 予防活動の事例を取り上げ、ボランティアサイクルやリクルート、トレーニングを通して、どのようにロングタームボランティアを獲得しながら事業を継続させていくかについて話された。

「Fun & Esteem」は、ゲイであること、カミングアウト、セックスや性に関する健康、H IV、恋 愛関係、ゲ イコミュニティーといった事柄について、コ ミュニティーの人々が話す機会を得るためにワークショップやイベントを開催する活動である。コ ミュニティー内でワークショップを実施し、ワ ークショップの参加者の中からボランティア希望者が生まれ、HIV とSTIs、HIV 教育、セイファーセックスといった知識と、ワークショップを実施する上でのファシリテーションスキルに関するトレーニングを実施し新たなボランティアが誕生する。ワ ークショップの情報はコミュニティー内で口コミを通して広がり、このワークショップへの参加が促されている。その場がボランティアリクルートメントの場となり、ボランティアサイクルが機能している。また、セイファーセックスの意識を向上させるネットワークがコミュニティー内に形成されることにより、プロジェクトがうまく継続的に機能し、これが MSM 内での HIV 感染率の低下に寄与している。

●Vietnam Women’s Union -地域社会を巻き込む-
HIV ポジティブの息子/娘や孫のケア、孫の子育て、自身の生計を立てることに重荷を抱えている高齢者が、ヘ ルスサービスやケアボランティアによる支援を受けることができ、現金収入形成プログラムへ参加できることで、高齢者のQOL と福利厚生を高めるための活動を展開している。

政府の予防・ケアプログラムは若者へ集中しているが、継続的にPLHIV やAIDS 遺児へのケア・サポートを地域内で提供する上で重要な存在となる高齢者への支援が実際は必要である。更にその時、地域社会自体も一緒にケア・サポートの担い手として関わることが、家庭内での高齢者の重荷を軽減するために適切で効果的な方法となる。また地域内で世代間や地域社会、サービス提供者などがつながり合い、話し合いを持っていくことが家族間や地域内で起こる偏見や差別の軽減につながり、地 域を巻き込んだサポートの拡大につながる。

●The Secretariat of the Pacific(SPC) -ピアエデュケーションの支援体制-
1998 年から物売りやナイトクラブの客、セックスワーカーなどへのピアエデュケーションを実施しているが、うまく機能せず、ターゲット層への効果が半減している状況があった。大洋州 HIV 戦略計画ではピアエデュケーションを予防・行動変容のためプロジェクトとして位置付けているが、SPC ではそのピアエデュケーションのサポートを行っている。その中でターゲット層への予防啓発を効果的に行うために、ピアエデュケーションの計画から実施、モニタリング、評価に関するガイドを作成した。ガイドには、ピアエデュケーションを実施する中で問題に直面した場合に、それをどのように対処していくかが参考となる内容を含むものとなっている。また、地域だけでなく国家レベルでもピアエデュケーションがうまく機能するように、国 と地域との協働や調整力を高めるために国家ピアエデュケーション委員会が設置された。

ピアエデュケーションの標準となるものがあった上で、タ ーゲット層の背景をよく考えプログラムを組み立てていくことは当たり前のことであるが、そ れを進めていく時に利用できる医療機関やサービス団体とのつながりを持ちながら実施することも重要である。

●Family Health International Indonesia -政策推進のための環境づくり-
コミュニティーでの HIV 予防活動の中でも特にコンドーム使用を向上させるために、地域のステイクホウルダーを巻き込みながら、プ ログラムが実施される環境を整える活動をしている。郡役所長を代表とした委員会を形成し、HIV 政策に関する規則を可決し、NGO と協働しながらリーダーシップを執り政策を進めている。地域社会の参加を促すこと、リファーラルネットワークを築くこと、ステイクホウルダーを力づけることによって、HIV についての意識の向上が広がる環境がつくられ、行動変容が促され、コンドーム使用率の増加につながった。また、ステイクホウルダーがオウナーシップを持つことも政策がより良い成果を生む上で重要となった。

●The Constellation for AIDS Competence -コミュニティーのオウナーシップ-
どの地域においても、人々は HIV 問題に取り組む能力を持っているが、その潜在能力がしばしば見逃されていることがある。地域社会にいる人々がもつ強みを刺激し、そこにある問題を自分たちが見つけ出し、その問題を自分たちのものとして捉えること。

またそれを自分たちの手で対処していく能力とオウナーシップを伸ばすことを目指して支援活動を行っている。

特に予防、ケア、差別の軽減についての活動を行う上で、ファシリテーションティームがSALT ビジット(S:Stimulate/A:Appreciate/L:Learn/T:Transfer)を行い、地域のビジョンを描き目標を明確にし、それに向けて地域が行動を起こし、変化を見極め自分たちが評価をしていくことで、コミュニティーのオウナーシップを促進している。

AIDS 啓発活動を行う上で改めて大切だと感じたことは、学校や地域、家庭といった協働者へのプログラムの目的や内容の共通理解を図り、共 に対象者にとって一番のプログラムを組み立てて実施していくことである。またプログラム実施後も、参加者が必要なサービスにアクセスできるように、地域の保健所や病院、相談機関、NGO とのつながりも重要だと感じた。積極的な人材育成も事業の継続には重要であり、AIDS の分野に興味のある参加者との関わりや活動への参加の呼びかけを行い、仲 間を増やしていきたいと思う。プログラムを実施する側にもオウナーシップは必要であり、常に対象者の背景やプログラムの目的や内容を把握し、実施後も振り返りを行い、自分たちの活動の意義や役割についてメンバー同士で意識の向上につなげていきたいと思う。


3.Youth Perspective on HIV Prevention
教育機関や地域での若者向けのAIDS 啓発活動のプログラムに活かすために、上 記のセッションに参加し、2 つの団体の発表を聞いた。

●Teenpath Project (PATH タイ)
PATH という団体はタイにおいて、思 春期の若者に向けてインターネット教材を使用した情報とライフスキルの提供や、教育省と協働で学校での性教育を実施している。

発表の中で、PATH が性教育を実施した学校と実施できなかった学校の比較があり、生徒の HIV/AIDS の知識や性行動、コンドームの使用に関して差が出ていた。

HIV/AIDS の知識に関しては、P ATH の性教育を受けた学校の生徒の方が高い状態であった。また、性体験率については PATH の性教育を受けていない学校の生徒の方が高い数値をであった。コ ンドーム使用率の面では、性 教育を受けた学校の生徒の方が高く、受けていない学校の生徒の方が低かった。

●25 Messengers
ドラッグ使用や喫煙、貧困、性に関する問題や HIV 感染、学校離れにさらされているストリートの若者に見られる情報へのアクセス不足やヘルスサービスへのアクセス不足、生活の悪化という課題に対し活動を行っている。主にシェルターの運営や健康を守るための情報や必要なものの提供、サポートグループ活動、リハビリテーションサービスの提供を行っている。重要なのは、ストリートで同じ経験をした若者がトレーニングを受け活動に関わることだと発表者の若い女性が元気におっしゃっていた。

やはり性教育やAIDS 教育を行うことが、若者の性行動を助長したり、若者に対し悪い影響を与えたりするものではないと共感できた。若者にとって必要な情報を提供し、若者が身近に抱える問題を自分たちのもととして捉え、若 者が考える力を育てなければいけないと感じた。それは一方的にではなく、性・AIDS 教育の目的や何を大切に伝えるかを常に考えながら、互 いに持つ情報を共有し合い学び合うことで育まれていくものだと思う。十代や二十代の若者とこれからも関わる者として、若者の身近にある問題に常に敏感になりながらプログラムに反映させ、若 者の声に耳を傾けながらAIDS 教育を実施していかなければならないと改めて感じた。また、一緒に活動に取り組んでいく若い仲間を育てていくことにも力を入れていきたいと思う。


4.フィールドビジット
会議プログラムの一つであるフィールドビジットを通じて、若者へ性と生殖に関する健康(SRH)のサービスを提供している団体と、ゲイ・トランスジェンダーコミュニティーへの支援活動をしている団体を訪問した。

●KISARA(キサラ)
KISARA は、1994 年にインドネシア家族計画協会のバリ支部としてデンパサールに設立され、ピアエデュケーションを通して、若者に対しSRH に関する情報とカウンセリング、医療を提供している。インドネシア語で「私たちは愛される若者」という言葉の頭文字をとって、この名前がついたそうだ。KISARA は、若者にとって身近な問題となっている望まない妊娠や HIV 感染、その他の性感染症、薬物使用といった性に関する問題について、若者どうしが参加しながら彼/彼女らの意識を向上するために、多くが若者のボランティアにより成り立っている。「若者から若者へ若者による若者のための活動」を軸に「若者の責任」をビジョンに掲げながら、一人ひとりのニーズに沿って若者が自由に安心して、自 分の性に関する健康についての相談や診療といったサービスを受けられ、ま た必要な情報を手に入れることができる場所となることを目指している。

KISARA の建物は、鉤型の三階建ての建物で、一階にクリニックがあり、二・三階には若者が集まり話をすることができる場所やカウンセリングを受けられる個室が設けられた部屋などがあり、事務所も併設している。

一階のクリニックは、「KISARA Youth Clinic」と呼ばれ、入口を入ると待合があり、そのまわりにドクターのコンサルティングルームとカウンセリングルーム、L ab.がある。

診察室には、必須医薬品や避妊薬、避妊用具、フリップチャートやコンドーム、ペニス模型が置いてあり、健康診断や一般診療、SRH の相談、HIV や薬物、妊娠に関するサービスの提供、血液検査、IQ 検査や視力検査なども行っていた。若者にとって親身に相談にあたり、公 立の病院よりも安く医療を若者に提供できることが必要だと若いドクターがおっしゃっていた。またバリ島の学校では、午前の部と午後の部に分かれて通学するため、そ の時間帯に合わせてアクセスしやすいようにオープンタイムを設定していると仰っていた。

二階のオープンスペースは、真中に茣蓙が敷かれており、周りの壁には活動写真やプログラムが行われる予定表、常駐するスタッフのシフト表などが掲示され、手作り感のある空間である。担当のユースボランティアによると、その場に若者が集まり、自身の体や気持ちの変化、友人関係や他者との関係の取り方、愛、ジェンダーや人権、妊娠すること、性感染症とその予防、HIV/AIDS、将来の夢や計画、自己表現といったトピックを通して話すことで、若 者のライフプランニングスキルを身につける場となっている。

ボランティアでいた二人の若者に、話 している時はどんな気持ちかと尋ねてみると、「話している時はとてもハッピーな気持ちになる。若者の間で、自分たちの体のことや身近にある問題について話すことはとても重要だ。いろんな人の意見を共有することで、自分にとても役立っている。」とおっしゃっていた。

性と生殖に関する健康について情報や手段が十分に若者に伝わり、社 会の中にある障害を受けずに安心してSRH のサービスを受けられること、そして若者自身も自身の意志で責任を持って決めていけることが、若者自身のQOL を高めることにつながっていると感じた。

●YAYASAN GAYa Dewata
1999 年にバリ島のゲイコミュニティーによって設立された YAYASAN GAYa Dewata(ガヤデワタ財団)という団体を訪問し、ダイレクターとメンバーの一人から話
を伺った。GAYa Dewata は、デンパサールにある住宅街の一角に位置し、メイン通りから裏通りに入った民家の中にある。バリ風の瓦屋根の一般的な家屋で、周りの家に溶け込んだ雰囲気だ。玄関のポーチに団体の看板があった。GAYa とはゲイという意味ではなく、ファッションやお洒落という意味があり、またゲイという表現を“a”をつけることにより和らげているそうだ。その意味の通り、建物を入ると応接間には数々のダンスや歌などのコンテストで獲得したトロフィーが飾ってあった。

GAYa Dewata はゲイだけでなく一般の人々も対象にセイファーセックスを進め、STIs やHIV の予防を目的に活動している。主にアウトリーチ活動、VCT、性感染症検査と治療の提供、フ ォーカスグループディスカッション、ポ ジティブサポートグループ、ステージパフォーマンスなどを通してHIV とSTIs の情報を提供している。

訪問した際に十数名のメンバーがいらっしゃったので、現 地語を使い一人ひとりに挨拶と自己紹介をしながら、普段はどんなことをしているのかと尋ねてみた。すると、テーブルの上にあった HIV の教材やコンドームを使って普段実践していることを紹介してくださった。それぞれがこの場を知るようになったきっかけは、アウトリーチで出会った人から、知り合いとのつながりから、他のNGO からの紹介など様々であった。

また、このセンターをスタートさせる時に何か困難やチャレンジはあったか、どのように地域の人からの理解を得たか、今 は自分たちの活動を周りはどのように見ているかとダイレクターに尋ねてみた。初 めは確かにMSM 向けの活動に対する反対や不満があったが、自分たちの活動の意義や一般の人々にも HIV について伝えることによる効果を行政や地域を交えて説明する場を持ったと答えた。今 は周りから何か言われることはないが、センターを利用する人の中には、まだまだ伝統や宗教、道徳といった面から受け入れられず、嫌な思いをして辿り着く人も多い。社会に対し理解や思いやり、偏見のない行動を促し、社 会の中で受け入れられるように働きかけていく必要があると仰っていた。

ゲイやトランスジェンダーだけでなく一般の人に向けた活動が彼/彼女たちの活動に対する理解を生んでいるのだと思う。社会の中で自分たちの活動がどのように貢献し、どのような効果をもたらすのかについて、地 域の代表者の理解を得ながら活動を進めることが、地域の人々の理解を生みより大きな効果を生むのだと感じた。


5.アジアパシフィックビレッジ(APV)でのブース出展
APVは、市 民や会議登録をしていない人が、誰でも参加できるスペースになっている。そのため、会議登録者や一般の人々も巻き込んで日本のAIDSの状況を伝え、私たちの活動を紹介しながら、お互いの経験や困難、チャレンジを共有し合い、私たちの活動に活かしていくと共に各国の団体とのつながりを形成することを目的にブースを出展した。ワンティランというバリの典型的な村をイメージしたブースでは、[1]パネルとクイズをコミュニケーションツールにした日本の状況の発信、[2] 写真を使った弊団体の活動紹介、[3]メモリアルキルト・小学生が作成したメッセージキルト・高校生が作成したベビーキルトの展示によるメッセージの発信、[4]弊団体の若者相互によるAIDS啓発プログラム(YYSP : Young for Young Sharing Program)の紹介と実演、[5]HIVと栄養に関するプレゼンテーションを実施した。

[1]クイズは三日間を通して四百名の方に参加していただき、日 本のHIV感染の報告数や検査・治療体制、サポート機関、社会福祉制度、性教育、AIDS教育について伝えると共に、各国の状況についても情報交換できた。好評をいただき、日ごとに用意していた部数も開始後二時間程で終了してしまい、も っと多くの人に参加してもらう機会があったのではと思い残念である。

[2]弊団体の活動を紹介する中で、特にVCTサービス(サンサンサイト)とYYSPについて興味を持っていただいた。検査については、使用している検査方法や関わっているスタッフ、プレ・ポストカウンセリング、どのように医療機関へつないでいるかという質問がよくあった。また、日本の保健所における検査についても合わせて質問があり、検 査体制一般についてやどのようにトレーニングを受けているかということに関心があった。

YYSPでは、その目標や何を大切として実施しているかを理解してもらい、普段使用している教材(カード、ぬいぐるみ、コンドーム、フェミドーム、模型など)を使い
ながら、HIVとAIDSの意味、感染力のある体液とない体液、感染の入り口となる粘膜、三つの感染経路、性感染について、コンドーム/フェミドーム、心の面を考えるワークといった一通りのプログラムを実演した。幅 広く様々な立場の方々に参考にしていただき自分たちの現場に持ち帰っていくとの反応があった。私 が一番良かったことは、今回の会議でNGOやドナーが現地のプログラムに関わる現地のリーダー(多くが現地語での通訳が必要であるが)を連れて参加している方を多く見かけたが、現地の地域に活かすためのヒントを得てもらうことができたことであった。

今回のブースでは、団 体としてHIV検査をどのように進めていくかについてのヒントを得る目的で出席している人、H IVの予防活動をどのように進めていくべきかを考えて出席している人と出会ったが、会議後も情報共有を図り、互いの活動へ活かしていくことを約束した。

[3]まだまだ医療の格差や、差別や偏見により、人の命や人権に差がある中、メモリアルキルトを通して参加者と共にその人の人生を語り合うことで、自分たちの活動の意義を考え、命 や人権を守るために共に活動し合う気持ちをつなぐことができたと感じた。小学生が気持ちを込めて作ったメッセージキルトは、何人かのポジティブの方を励まし、そ れを見た中学生や高校生には自分たちにも何かできることがあるのではという気持ちを抱いてもらうきっかけとなった。ただの一つのきれいな布ではなく、会議のテーマをより親しみやすい形で表現するAPVの目的に少しでも貢献できたのではないかと感じている。

[4]一般の人にも開かれたAPVでは、HIV/AIDSへの理解と意識の向上のためにより良い機会になるのではないかと思い、HIV/AIDSについて互いに情報を共有しながら学び合うことを目的に、前述のYYSPを英語とインドネシア語で実施した。ブースを訪れた個々人やグループに対してであるが、ビジターの中・高校生や引率の先生、会場ボランティア、警備に当っていたセキュリティー、リラクシングルームの方々などに伝えることができた。AIDSについての誤解もあったが、よく理解していただいた。コンドームやフェミドームにつても、しっかりとおさらいしていただいた。

[5]弊団体のブースでは、三人の栄養士が今回参加した。皆HIVと栄養を考える栄養士である。弊団体の『Nutrition and Nourishment』ハンドブックを活用していただくために、体に必要な栄養、栄養と免疫、体調に合わせた食べ物、衛生、日常生活と健康、食べることの楽しさについて情報を共有し合った。ヘルスワーカーには活動の場で参考にしていただき、ポ ジティブの方には自身の生活に活用できるように手にとっていただいた。また免疫力を強化する成分を含むエビを取り上げ、インドネシアでもよく食べられることから、日本のえびせんべいを持参し試食していただいた。


6.全体の感想
私にとってアジア・太平洋地域会議への参加は神戸での開催以来二回目であった。最初に印象に残ったことは、オープニングセレモニーでのインドネシア大統領(Susilo Bambang Yudhoyono)の言葉だった。演説はイスラムとバリヒンドゥー、英語の挨拶で始まり、様々な立場で出席されている一人ひとりへ敬意を表された。演説の中でHIV対策を重要な柱と位置付け、国家がリーダーシップを執って政策に責任を持つこと、政府がコミュニティーと一緒にAIDSに取り組むこと、地域間や国際社会が協力して取り組んでいくこと、ワクチンや治療といったAIDS研究に努力を弛まないことの四点を強調されていた。一番印象に残ったことは、「 AIDSへの取り組みはAIDSという病気だけを取り扱っているわけではなく、そこには私たちの家族や友人、知人、仲間といった一人ひとりの人間が存在する。常に考えなければいけないことは、私たちはウイルスと闘う一方で、人の尊厳を守ることを心がけなければならない。」という言葉であった。演説の中で、AIDSに関わる様々な立場の人を受け入れる気持ちや、命や人権を守ることについて大統領の言葉として聞くことができたことは、本当に心強く感じた。

会議を通して全ての内容を把握できたとは言い難いが、い くつか心に残ったことがある。一つは、HIVとC型肝炎の課題である。三日目のプレナリーセッションと会場において、“HEPC + SILENCE = DEATH”というデモンストレーションがあった。会議共同議長も務めるインドネシア国家AIDS対策委員会の女性が話す中、一人の男性が壇上に立ち、その仲間がバナーを掲げ、「Do you want treatment for HepatitisC?」と二回繰り返した。以前の「AIDSについて語らないのは死を招く。」という事柄を彷彿とさせるものであったが、座長の取計らいにより、その声はうまく届けられたように思う。高額な治療費が利用できる価格に下がりHCVの治療へのアクセスが改善されること、HCVコインフェクションの診断の発展、HCVを含めた情報や予防へのアクセスが課題であると感じた。二つ目は、男性パートナーからの感染の状況にある女性の課題である。まだまだその女性の声は見えにくい状況にあるが、最もHIV感染に対して脆弱な対象として会議の焦点になっていたと思う。こ の課題と共にジェンダーの公平性についてもよく耳にした。すでにこれまで話されてきた課題であり、最終日のセッションでもどのように女性をエンパワーしていくかについて話されたが、課題としてではなく、ジェンダーの平等を実現していくのだという強い意志で行動していかなければならないと感じた。その他、PPTCTが地域によりまだまだアクセスが限られた状態であり、広く行き届いていない点も指摘された。子どもたちへの感染を防ぎ、地域によって子どもたちの命に差が生じないようするための課題に向き合っていかなければならない。また、差別や偏見、人権侵害は今もまだ大きな障害になっており、国レベルで取り組んでいかなければならないとの声もあった。その中でも、インドのように少しずつ法律に変化が見られるような国もあり、参考にしていかなければならないとの声があった。


7.ICAAPの成果を還元する活動
9月中に会議参加者と共に報告書をまとめ、弊団体の会員向けに発送し情報を共有する。また9月中旬にICAAP報告会を実施し、会議で得られたアジア・太平洋地域の最新の状況や課題を共有し、日本のNPOとして世界と日本の目標にどのように貢献していくかその役割を考えていく。私が担当する若者向けのAIDS啓発においては、そこに携わるメンバーと共に情報共有を図り、スキルアップを図ると共にAIDSの活動に対するモチベーションの向上につなげたい。ワークショップの中でも、参加者の若者に会議の様子や成果を直接伝えていきたいと思う。また事業で関わる行政や保健所、教育関係者などとも情報共有を行い、それぞれの事業に役立てていけるよう働きかけていきたい。


8.謝辞
今回の会議への参加の機会と数々の貴重な発表を聞く機会、またたくさんのAIDSの活動に携わる仲間と出会い経験を分かち合う機会を与えて下さったエイズ予防財団の皆様に心からお礼申し上げます。