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第9回アジア太平洋地域国際エイズ会議参加報告書

プロジェクトコネクトプロジェクトマネジャー
齋藤 えりか

<はじめに>
2009年8月9日から13日までの5日間、インドネシアのバリ島において、第9回アジア太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP9)が開催された。本報告書では、以下の項目についての本会議での情報収集と、それに対する私の考察について述べる。

<諸外国の若者を取り巻く状況>
・ベトナムにおける若者間でのHIV感染状況

インドネシア、タイ、ベトナムなど、東南アジアの各国では、主たるHIVの感染原因として、IDU(注射針による薬物の使用者)が大きな問題となっている。性行為による感染よりも、薬物使用による感染が拡大しているということで、本会議でも重要な問題のひとつとして、議論にあがっていた。本項目では、特に、ベトナムについての情報と、私の考察について述べる。

まず、ベトナムでIDUが拡大している背景として、ベトナムが、パキスタンからヨーロッパ諸国にヘロインが運搬される経由地ということがある。経由地ということで、ヘロインが直接輸入されるので、ヘロインが安価に、安易に入手可能となっている。こういった地理的要因に加え、IDUの使用がHIV感染拡大に寄与している理由には、ベトナムの年功序列の文化的背景がある。若者の間で、年上の人(先輩など)から、「オレが使った注射器が使えないのか。オレが使ったものを使え。」というように、使用後の注射器を打ちまわすように強制されるという現状がある。

その一方で、オーストラリアや日本でも、薬物使用がまん延している現状があるが、HIV感染の要因にはさほど大きく起因しないことが考察される。なぜかというと、1つには、注射器使用よりも、ストローなどで鼻から吸い込む使用法がとられているからだ。2つめとして、注射器使用のドラッグであっても、注射器が不足しているというわけではないので、東南アジアの諸地域と比較すると、文化的にも、使用後の注射器を使い回しするという状況が起こらないからだ。実際、オーストラリアでは、ドラッグユーザーは多いものの、HIV感染の拡大要因として、IDUが占める割合はそこまで大きくない。むしろ、感染が拡大しているのは、主に男性間、異性間の性行為による。(オーストラリアの先住民の場合は、この現状にはあてはまらない。)

なので、オーストラリアの状況に近い点から、日本においても、東南アジアの諸地域にみられるような、IDUによるHIV感染拡大の懸念はそこまで大きく起こらないのかもしれない。

だが、国内において、急速に薬物使用が広まり、安易に入手できる危機的な現状がある。なので、ドラッグの問題にも注視し、当団体のプロジェクト内容にも反映させていくことを検討していきたい。

・オーストラリアの性教育のシステムと課題
現在、日本のエイズ教育は、保健体育での指導として扱われている。各学校によって扱いが自由なので、学校内で確実にエイズ教育が行われているとは言えない現状がある。

一方、オーストラリアでは、エイズ教育を受ける機会がすべての学生にあるという情報を得た。なぜかというと、HIVがウイルスとして扱われるため、HIV教育が『サイエンス(科学)』の授業で扱われるからだ。科学の指導内容として、学校教育でHIV教育が必須で行われ、かつ、保健体育よりもプライオリティが高くおかれている点において、画期的な取り組みではないかと思う。政府としても、積極的にエイズ教育を科学の分野に取り入れたという。

しかし、必ずしも、予防方法まで指導されているというわけではない。最も必要とされる予防方法は、各教師の自由とされている。これは、保健体育の授業において、コンドーム使用の予防方法の情報提供が徹底されていない日本の課題と共通している。エイズの基礎知識や感染経路などを知っていても、予防方法を知らなければ意味がない。不十分な教育では、エイズの感染拡大を防ぐことはできない。

この現状から、学校現場におけるエイズ教育において、個人の価値観で指導することを避けるための学習内容の共通指針が必要であると考えられる。それに加え、学校現場での性教育指導のための教員育成や、学習環境の整備も必要とされる。これらの促進においては、当団体が寄与できることは大きいと考えられるので、今後の活動内容に盛り込んでいくことを検討していきたい。


<本会議の成果の還元>
・当活動へのフィードバック
タイにおいて、移民をサポートする団体の活動から、多様な情報提供の媒体を開拓していくことと、若者とサービスを確実につなげていくソーシャルワーカーとしての役割をさらに促進するあり方を学んだ。

国内の現状として、効果的な、特にユースに向けたヘルスサービスを提供しているところが少ないという問題があるが、それに加え、現行のサービスにリーチできないという問題もある。なので、現行あるサービスに若者が確実にリーチできるように、移民に対して、社会的なサポートをしているプロジェクトから、ソーシャルワークの在り方、具体的な方法を学び、今後の活動に盛り込んでいく。

・国内での情報提供
9月初旬に、他のエイズ関連団体から本会議に出席した方々と共同で、都内で報告会を開催する。その際に、各個人が学んだことを、団体間で、さらには一般の参加者とシェアすることを通し、本会議の学びを国内で広げ、日本のエイズ活動に還元していく。 

<おわりに>
以上が、 本会議で得られた情報と、それに対する考察である。

会議でのセッションでの学びは多かったが、それよりも、個人的なコミュニケーションから情報を収集し、ネットワークを構築したことが、その後にもつながる非常に大きな糧になった。会議自体に参加することの意義はここにあると感じた。