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第10回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

Source
飯野なつみ

私の所属している活動団体Sourceでは、厚生労働省科学研究班の委託による、性器クラミジア無料検査キットを代々木公園や大学学園祭といった野外イベントにおいて配布を行っている。また、若い世代への予防啓発活動として、当団体で作成したオリジナルフライヤーや、JEX社より寄付していただいたサンプルコンドームなどを同時に配布している。

他、過去のICAAPや世界エイズ会議などでコレクションしてきたTシャツを展示している。現在のSourceの前身であるCampus AIDS Interface時代から野外イベントなどに出店して若者と向き合う活動をしてきた私たちにとっては、若い世代への効果的な啓発が課題であり、またアジア圏での最新のAIDS活動の動向を探りつつ、それらを参考としながら今後の活動への指針とすることを主な目的として、今年度ICAAPに参加を決定した。

実のところ、私には国際的な規模でのエイズ会議に参加するのは初めての試みであった。アジア太平洋の各国や地域から参加している個人、団体いずれもそれぞれの目的をもち、相互に影響しあうICAAPは大変興味深い催事であった。Youthを対象としたプログラムの中で、ピアエデュケーションを有効に行うための方法をプログラム参加者同士で提案しながら模索することを目的としたワークショップに参加した。

アジア圏内の各国より参加したYouthが大半を占め、私と同じく自国でのNGOやボランティア団体に所属しながらAIDS予防啓発活動を行う学生などが多く、そうした場での情報交換はとても有益なものであった。
それぞれの活動するエリアでのHIVの感染状況やバックグラウンドが異なるため、必要となる活動も異なる。同ワークショップに参加していたインドから参加した女子大生は、インド国内においてセックスワーカーへの医療サポートを行っている団体に所属している。
インドでは年間の新規HIV感染者数が1万人を超え、近年では女性のドラッグユーザーが多く、ドラッグユーザーの環境でHIVに感染するケースが目立っている。現在では大学生ボランティアなどが中学校や高校で薬物使用とHIV感染の関連性などについて、紙芝居方式で伝えているという。

若年世代へは、薬物使用の危険性やHIV感染と予防についてコミュニケーションを交えながら有効なピアエデュケーションを行うことを目標としていた。一方通行な情報の流れでは伝わることとそうでないことがあり、相互に情報を交換できる手法で時間をより有効に使い、アクティブに予防啓発をしようという点で、彼女のグループとSourceは共通する課題を有していた。

同ワークショップにおいても、参加者の自己紹介やミニゲームを交えて交流を重んじながら、ゴールを共有することで時間の密度を高めていた。2006年~2008年にSourceで配布した25歳以下を対象としたクラミジア検査キット同封のアンケートによれば、性の健康に関する情報を得ようとした時にどこから情報源を得ようとするかという問いに対し、多くが近い関係の友人と回答している。若年層にとって気兼ねなくコミュニケーションを図れる関係の人間から得る情報のほうが、信頼性が高いという事実が分かる。ピアエデュケーターと深く交流を根ざす方が情報の信頼性や積極性が高まると言えるだろう。

また、別のセッションにおいては、特にHIV陽性者・AIDS患者を多く抱える国ではHIVカウンセラーの育成を重要とする傾向があるとの発表があった。
人間関係の構築力や情報の収集力・提供力、問題認識力、特殊な状況での対応力が問われるカウンセラーという職業のニーズが拡大しているという事実を受け、インドでは2008年から2013年までの5年間の間に12000人のカウンセラーを国のプログラムで育成することを目指している。患者とのコミュニケーションを築きながらサポートをしていく職業が求められているのは患者を多く抱える国だけなのだろうか。

日本では、HIV陽性者・AIDS患者の絶対数では比較的少なく思われるが、人口対比で見れば少ないとは言えず、サポートの必要な人は多数おり、またそれは患者にとどまらず、STIやそれに関連する情報を求める患者以外の、特に若年者にもあてはまることであると思う。日本において若年者を対象とした活動家は一般的には安価な労働力と思われがちであるが、コミュニケーションを築きながらサポートをしていくという役割を十分に発揮できる方法を意識しつつ今後模索し続けるべきであると考える。
また、いくつかセクシャリティに関するセッション、ブースにも参加した。LGBTコミュニティのあり方がアジアの各地域でどのように形成されているのか興味を持ったためである。
IPPFはアジア圏内の、クアラルンプール、台北、シンガポール、釜山、ソウルでセクシャルマイノリティに関する調査を行い、レポートにまとめていた。IPPFのレポートによれば、MSM人口とTransgender人口が最大の都市はソウルであるようだが、韓国ではLGBTへの社会的差別が根強く、アイデンティティを公にすることは簡単なことではない。
そうした中にあって、日本と同じくソーシャルネットワークが広く普及し、人が出会うきっかけとしても働くソーシャルネットワークを介して築く関係が、コミュニティ形成の一端を担っているとのことだ。特にその傾向は若年世代のセクシャルマイノリティに顕著であるという報告を耳にした。
韓国では、AIDS活動でロールモデルとなるLGBTを必要とする課題を抱えながら、一般社会から潜在化しているようで実は顕在化しているセクシャルマイノリティのコミュニティを対象とした啓発プロジェクトを模索している。
私はこのICAAPを通じて、LGBTやMSMといったセクシャルマイノリティは、常に他の大多数の人間の見地から存在場所を決定付けられているという事実を改めて目の当たりにした。
セクシャルマイノリティは一見して社会の表面から目立たなくなっていると思われているが、実は裏側から社会を見渡しているのは彼らの方なのではないだろうか。セッション最終日終了後に会場付近で開かれた参加者パーティでも、私は彼らの内面の美しさに感嘆させられた。

私は今回、アジア圏でのAIDS動向を探り、今後の活動指針とするという公的役割を担い、ICAAPに参加したが、今後重要視してゆくべき点が見えた他、これまで精力的には活動してこなかったセクシャルマイノリティへのエンパワーとなる活動も検討したい。
この度、釜山で開催された第10回アジア太平洋国際エイズ会議への参加は、エイズ予防財団のICAAP派遣助成事業のお陰で成し得た経験となりました。エイズ予防財団のみなさま、及び、会議参加以前より助成事業の紹介や会議参加への手助けをして下さった、Source渡部享宏氏にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。
 

※会議の成果を還元する計画としては、団体ブログ、個人のツイッターやフェイスブックといったソーシャルネットワークを利用した、不特定多数のユニークユーザーへの情報提供、及びソーシャルネットワークを通して築いた関係者を対象とした報告会を10月末に予定。
オンラインでは、会期中にセッションの内容や参加当人の感想を1日10回程更新。Sourceメンバーを対象とした報告会は9月18日(日)に開催済。
対外報告会日時は詳細が決まり次第お知らせいたします。