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第10回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

認定NPO法人難民を助ける会
小川 祐子

1.参加者
難民を助ける会からは、貴財団に助成をいただいた小川(国内での広報活動を担当)のほか、2名が出席した。他の2名は当会がザンビアで行っているHIV/エイズ対策事業の担当者である。

2.参加目的
第一の目的は、当会が実施するHIV/エイズ対策事業の内容、成果をより高めるための参考とすることである。多様な立場の報告者からの、多岐にわたるテーマのセッションから得た情報を活用し、事業に取り入れたり参考としていくため参加した。
第二に、広報活動への参考とするためである。HIV/エイズ対策事業への、日本国内での関心の喚起、それによる寄付の拡大を目指すためのヒントを学びたいと考えた。
HIV/エイズ対策事業は、当会の事業地全14 ヵ国のうち、ザンビア1 ヵ国のみで実施している。その他の事業に比べ、「絵」になりにくい地味な活動である、短期的に成果を示しにくいなどの点から、支援者に訴求する広報活動が大変難しいと感じている。当会は活動資金の50%強を一般からの寄付に依っているが、HIV/エイズ対策を指定しての寄付はごくわずかである。支援者の関心をより喚起できる啓発、広報活動を行うため、他団体の啓発や広報活動の取り組みを知りたいと考えた。
第三に、当会の認知度の向上をはかるためである。当会は、日本で設立された、日本に本部を置くNGO である。欧米に本部を置き世界各国に支部のあるNGO に比べ、国内的にも国際的にも認知度は低い。日頃の活動上では接点のない相手にも当会を知ってもらえるチャンスであるため、この点も念頭において参加した。

3.会議での活動内容
(1)Asia Pacific Village にブースを出展した(写真(1))。当会および当会ザンビア事業の活動紹介写真の展示、口頭での事業説明、パンフレット配付などを行った。


写真(1) ブースに訪れた人に難民を助ける会の活動説明をする小川(右)
ブースで受けた質問で多かったのは、自らもエイズ問題に取り組んでいる場合が多いためか、事業の予算はどのように確保しているのかという質問であった。
事業内容については、エイズ遺児を引き取り養育している保護者を対象とした所得創出活動支援につき、その重要性に共感するコメントが聞かれた。
また、日本でのHIV/エイズ問題に関する質問も受けた。

(2)セッションに積極的に参加し、今後の事業、広報活動に参考となる点を学ぶよう努めた。
(参加セッションは4 ページ記載の通り。)
それぞれのセッションで参考となることがあったが、特に重要だと思われた点を4点挙げる。

写真(2) セッションの様子
まず第一に、既存のシステムを見直し、できるだけ活用する、という点である。ザンビアはアフリカの中でも貧しい国であり、事業を行うにも人材、診療所や道路などのインフラ面など、不十分な点が多々ある。しかし、現状ある資源を最大限活用できているか、ということは改めて検証する必要があると感じた。
第二に、エイズで親を亡くした子どもたちの支援をしている団体からの報告で懸念が示された、遺児の引き取り手が死亡した後どうするのかという点は、準備をしておく必要があると感じた。当会事業では緊急の課題とはなっていないが、引き取り手が見つからない場合や、子どもが引き取り先で不利益を被りかねない場合なども考慮して、対応策を事前に計画する必要がある。
第三に、HIV 陽性者と、地域全体とが一体となって取り組むことが必要だと感じた。当事者団体とその支援者だけ、またHIV 陽性者を含まない団体だけで問題に取り組むのではなく、HIV 陽性者とそうではない人たちとが、ともにその地域の住民として、開かれた関係を構築しつつ活動を行うことによって、周囲の偏見や差別を徐々に軽減していくことができるのではないかと考える。地域でお祭りを開いた事例などは、気軽に直接、当事者とそれ以外の人々が接し、言葉を交わすことのできる良い機会だと思った。
第四に、広報的観点から印象的であったのが、フェイスブックなどのソーシャルメディアの活用である。今や、無視できない広報手段であるとの認識を新たにした。現在当会では、ソーシャルメディアを一部利用しているものの、既存の広報活動が優先され、なかなか十分な活用には至っていない。フェイスブックなどを活用しての大々的なキャンペーンの実施事例などを聞くと、活用しなければもったいないツールではあると改めて思った。

写真(3) ソーシャルメディアを活用した啓発キャンペーンについての報告の様子
ただし、成果を測ることは難しく、キャンペーンサイトに訪れた人数やキャンペーン動画を見た人数などは把握できるが、その後の行動(検査を受ける、偏見をなくすなど)が変化したかを測ることはできない。長期的な啓発キャンペーンや検査の受診率の推移の注視など、継続したフォローが必要な点は考慮すべきである。

4.所感
今回会議に参加でき、非常に幅広い報告を聞くことができ良かった。日頃はザンビアの状況のみを意識しているため、多様なエイズ問題の中でも、限られた視点でのみ捉えがちであったと気付かされた。報告の中から、当会の事業や広報活動に活かせる点も多々あったので、ザンビア事業担当とも協議しながら、ザンビアのHIV 陽性者がより安心して生きていけるよう活動の質を高めていきたい。同時に、日本でもより多くの人たちがエイズ問題に関心を持ち、ザンビアの事業への理解を深め、また日本国内のエイズ問題にも意識が高まるように広報活動に努めていきたい。

写真(4) ブースを訪れた、ネパールでHIV 陽性者支援活動をしている方々と
(左端:小川、右端:当会スタッフ)
参加セッション一覧(小川参加分)