2011年8月26日より30日まで大韓民国・釜山にて開催されたアジア太平洋地域国際エイズ会議(ICAAP10)に、エイズ予防財団より派遣いただきました。2005年日本・神戸で開催されましたICAAP7から今回で4回目のICAAPを体験させていただきました。
現在、長崎大学大学院生として、また社会福祉法人はばたき福祉事業団の研究者として、厚生労働科学研究「HIV・HCV重複感染血友病患者の長期療養に関する患者参加型研究」(平成22年-24年度)の中で、分担研究である「薬害HIV感染血友病患者背景調査」および「精神症状評価と精神医学的ケアの必要性やその妥当性の調査」の統計分析を担当しています。そのため、今回のICAAP10では、「エイズに関する社会調査」及びHIV/HCVの重複感染者へのケア・サービスなどについて特に見識を深めるべく、本会議に参加しました。
本稿では、ICAAP10で得たこと、学んだことをまとめたいと思います。
1. 「エイズに関する社会調査」について
ICAAPは、学術的な議論を交わすだけでなく、NGOの方々をはじめとする現場で活躍される方も多数参加されることから、提出する抄録 (Abstract) も「Experience based abstract」あるいは「Classical Scientific studies」を選んで提出するスタイルです。
自分自身の行動範囲が狭いせいか、4回のICAAPを通しても、社会調査に関する報告等のセッションはあるものの、それについての「方法論」が正しいのか、あるいは統計学的解釈が正しいのか、あるいは統計学的な解釈がOKだとしてもそれが現場で使えるものなのか、という議論にまで応用できる、発展するセッションについてはあまり経験がありません。
その中でも今回非常に印象的だったセッションは、男性のセクシュアル・ヘルスに関するアジア太平洋連合(Asia Pacific Coalition on Male Sexual Health (APCOM))が主催した「Moving from Sheer Quantity to Queer Quality: Emerging HIV and Social Research Issues among MSM and Transgender People」 というサテライト・ミーティングです。
このミーティングでは、アジア太平洋地域における男性とセックスをする男性(Men who have sex with men)を対象としたインターネットを介した社会調査の(途中)結果の報告でした。アジア太平洋のMSMがどのような性行動をとっているのかといったことが主に発表されました。
その結果につきましては、MSMがご専門の先生方のご報告を待つとして、こうした社会調査のセッションがもっと増え、それらの結果(今回の場合はアジア太平洋地域におけるMSMの性行動)を踏まえたうえで、どのようなプログラム構築が考えられるのか、という議論に進むのを期待したいと思いました。またその一方で、そもそもその方法論でよかったのか、とかそもそもインターネット調査の結果は本当のMSMの性行動を反映しているのか、といった方法論の部分にまで議論が発展していくようなセッションがICAAPでもあるといいのではないかと感じました。
抽象的な印象で恐縮ですが、反面教師と言うかその一方で私たちが行っている分担研究でも政策のための科学的根拠を出し、学会や雑誌などに投稿していかなければならないと強く感じました。
2. HIV/HCVの重複感染者へのケア・サービスについて
2009年に開催されたインドネシア共和国・バリで開催されたICAAP9について、HIV/HCV重複感染については、小川亜紀氏((特活)アフリカ日本協議会 国際コーディネーター)がその報告を寄せており、非常にHIV/HCVへの関心は高いものの、口演/示説ともに少なかったとしています 。
今回Acceptされている全ての抄録の中で、“Hepatitis C”あるいは”HCV”という語句が入ったものは合計で6本しかない(抄録数は1,300本以上)。それぞれのTruck毎の内訳は以下の通りです。
Truck A (当該地域における疫学研究) --- ポスター1本
Truck B (基礎臨床研究) --- ポスター2本
TruckC (ユニバーサルアクセスへのチャレンジ~ケア・サポート・予防等を含む) --- ポスター3本
今回のICAAPでは、WHO事務局長マーガレット・チャン氏がカウボーイの帽子をかぶった画像の上に「WANTED」と揶揄するポスターが貼られていた。HCV検査などができない(afordableなものでないとか、医療機関へのアクセスがない)といったことは許されないというスローガンの入ったものが、会議が終わる直前2日で目に入った程度でした。
今後治療アクセスが良くなり、HIV陽性者の方が高齢化していくことが予見されています(高齢している方の感染ではなく、若年層で感染した方の高齢化といった問題)。HIV陽性者の方の高齢化については、既に議論が行われているかと思います。しかしながら、治療アクセスの面で恵まれている日本が、HIV陽性者の方の高齢化・服薬の長期化している方々に対するケアやサポートといった問題を、地域を率先して問題提起していくことが大切であると感じました。
3. 最後に
現在行われている、厚生労働科学研究は、2年目を迎えております。これまでに集積されたデータを基に、統計解析を進め、当事者の皆さまにはやくご報告できるようしてまいりたいと思います。
最後になりましたが、このような機会を与えてくださいました公益財団法人 エイズ予防財団の皆さまに感謝申し上げます。