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第11回アジア太平洋地域エイズ国際会議参加報告書
 

SWASH(Sex Work And Sexual Health)
水嶋 かおりん

 SWASHは、‘Sex Work And Sexual Health’の頭文字をとった名。セックスワーカーの安心と安全をサポートする当事者とそのサポーターで構成されている自助グループで、2013年度は大阪府の地域医療再生基金の助成金を受け、グローバルに活用できるように日本語をはじめ英語・中国語・韓国語の翻訳つき「完全働き方マニュアル」を作成。セックスワーカーのためのセーファーサービスの実践の内容がイラストで記載された冊子の作成・配布を行っている。
 今回の会議では、実際にセックスワーカーとして働きながら接客や技術などの仕事を教える講師として自身が活動しているため、アジア・オセアニア地域のセックスワークの感染症に対する取り組みについての現状把握とスキルビルディングを行うために参加した。

●スリーゼロ
まず会議で特に目についていたのが国連/UNAIDSの“新規感染ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連の死亡ゼロ”というスローガンだった。日本のHIV感染者は先進国の中でも唯一増え続けているのに既に世界はエイズ問題の終息に向けた取り組みへと進んでいることだった。

無料で開放されているコミュニティーヴィレッジという各国の活動団体のブースが並ぶエリアには様々な国々の人々がおり、「SEX WORKER」ブースでは会議の二日目に胸に商品番号やセックスワーカーのシンボルである赤い傘をモチーフとしたバッジを配り、スリーゼロのスローガンの書かれた“ZERO・Tシャツ”が提供され、HIVの社会問題に向けたスリーゼロアプローチの強気な姿勢に肌で触れた。そしてそのTシャツを着て、会場からパッポンまでバンコク市内をセックスワーカーを先頭に会議に参加した多くの人々と共にパレードしたのは感動的だった。
 
●セックスワーカーと取り組むHIV/STIに関する包括的なプログラムの実践.
セックスワーカーブースでWHOとUNAIDSを筆頭に行われたアジア・オセアニア地域のリサーチと組織運営に関するアプローチについてやり取りした分科会では、「Implementing Comprehensive HIV/STI Programmes with Sex Workers」(セックスワーカーと取り組むHIV/STIに関する包括的なプログラムの実践.)という冊子が配布された。分科会では、当事者自ら自助するための組織化を図り現状把握するための調査プログラムを開発し、「セックスワークのことは当事者が一番良く知っている。」という認識から、コミュニティーに権限・力を与えることを重要視していた。

とは言っても、国連側からの強制的なアプローチではなく、各国々や地域によってルールや倫理観や環境が異なるため、地域ごとにフレームワークを開発し、主体的なリサーチプロジェクトを行えるように当事者がヒアリング教育を受け、ピアプログラムを構築するなどして継続的かつ自主的に組織化が行える取り組みを行ったことについて報告があった。

セックスワーカーの安全を確保するために、セックスワーカーの人権を尊重できる枠組みを促進し、方針や指針の形成や共存できる環境を作り出す。現状の把握をするためにモニターをしながらどのように進んでいるのか進捗状況を過去のデータから参照する。また、他国やNGOなどの有益な情報にもアクセス可能な状況にできるようにする。

さらに、セックスワーカーへの暴力に対して反対する国際的な声明を発することにも大事な意味があると強調し、セックスワーカーが暴力から身を守るために必要な他者の介入や戦略を図ることを可能にすることで、地域の当事者団体に対して発言や支援の力を与え、ワーカー自身の安全を確保するために必要な能力を向上させ、暴力を経験したセックスワーカーへの身体的、環境的な健康サービスや法的な支援、安心安全に取り組むための情報を受け止める力を持てるような支援ができるといったことを提示していた。

日本では「デリバリーヘルス」という派遣型風俗店の営業届を警察署に出すと営業届確認書の交付と特殊営業届のしおりが渡され営業が可能になるが、その時に、健康や衛生面に役立つ保健所やクリニックの情報提供も行えたらいいな、と感じた。

セックスワークが厳重に処罰される国では、セックスワーカーを警察が取り締まる上で「コンドームの所持」をしている立ちんぼ、ストリートワーカーに対して違法の証拠として摘発対象にしている節があり、粘膜接触における感染症防衛ができず命がけで仕事をするワーカーたちの安全が守られないことがあり、セックスワークの非犯罪化を推進することでリスクマネジメントが可能になる。

UNAIDSでは各国ごとに調査を行い、その国のルールや倫理観や文化の違いを考慮して、その国に根付いてもらえるフレームワークの開発に取り組み、少しでも政治や行政からのNOが出た場合は戦うことはせず、その国に受け入れてもらえるフレームワークを作りなおす。自分たちの提示しているものが問題なのであって、構成が間違っていたので何が障壁になっているのか?を分析して、何度もやり直す、というスタンスで手間をかけてコネクトする。
 
●スキルビルディング
日本のセックスワーカー向けに行っている講習内容をレクチャーするための会「Skill Building Workshop Skills for STI Prevention Developed from the Diverse Experiences of SWASH」では、日本の現状を報告した。

日本では「膣内挿入行為」の本番を行わないサービスカンパニーが大多数でありその種類も多く、“ヘルス”で行われる素股では、疑似性交によるハッピーエンディングが行われる。素股の体位は態勢によって数も多く、ワーカー自身がコントロールしやすいのは上に乗る態勢で、また、密着感を作りながら行える横寝の素股では粘膜接触を極力控えられるためSTI感染の確率を画期的に減らすことができる。また、質の高いサービスを提供することにより不特定多数から、特定多数へリスク管理の向上が図れる。という内容で、「完全働き方マニュアル」を参加者の人に参照してもらいながら素股32体位を紹介した。

ただ素股の技術を教えるだけではなく、とにかく笑顔を大切にして丁寧にお客様がそそるように見せ方にも気を配ること、などの精神面でのスキルも提示した。また、お客様にわからないようにコンドームを装着するポイントとしてお風呂場で背面から体を洗ってあげている時に口にコンドームを仕込んで、対面した時に膝を曲げて頭で口元が見えないようにしながらコンドームを装着するということを、ワークに参加した、カンボジア・韓国・オーストラリアのワーカーさんにも実際に口でつける練習をしてもらったり、素股の態勢を実際に体験してもらいながらコツを教えたり、他国では「ボディースウィング」という名前で同じようなスキルを教えるそうで、参加していた国々のスキルビルディングの実践プログラムについて話し合った。
 
●今回の収穫と還元
今回の収穫は何といっても、UNAIDSの各国々によるリサーチ調査報告と、当事者コミュニティーの重要性を知ったこと、WHOから出した包括的なプログラム実践について知れたことである。特にセックスワーカーの主体的な関わり合いを外にむけ、健康を守るうえで必要な組織化について、他の国の成功事例などを聞けたことは大変勇気をもらえる情報であった。

還元先としては、12月17日にNGO-労働組合国際協働フォーラム HIV/エイズ等感染症グループ主催の世界エイズデーシンポジウム「アジア太平洋地域のHIV最新情報~性産業労働者の状況と課題・日本の具体的取り組み~」、来年2月に神戸で報告会、8月にはエイズ文化フォーラムin横浜での分科会を考えている。

また、会議で入手した資料の翻訳とレポート、また、個人的にセクシャルリプロダクティブヘルスをテーマにした動画配信を行っており、そこでも会議報告や世界の取り組みについて報告したいと考えている。
 
このようなすばらしい機会を私たちに与えていただいたエイズ予防財団のご支援に心から感謝いたします。