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第14回国際エイズ会議参加報告書
 

国立仙台病院 臨床検査科 浅黄 司

経済的に貧困な発展途上国の多くがアジア・アフリカ地区にあり、その地区でのHIV-1感染者数は極めて多く、更なる増加を食い止める事には困難が多い状況のようであった。 

また同地区では、従来から知られている細菌性の急性感染症の予防対策や治療薬すら充分でなく集団発生例も有るようである。しかし最も深刻な問題は低栄養状態だと言う人もいた。このような背景を持つ社会状況では、HIV-1感染症のように比較的病態の進行が緩慢な感染症についての予防対策や治療への認識は非現実的な問題として捉えられているのではないかとさえ思われた。実際には極めて高価な抗HIV-1薬剤を、明確な症状が無い状態で規則正しい服薬を続けることが可能なのであろうか。さらに必要十分量でない投薬が行われ薬剤耐性ウイルスの産生を助長し薬剤耐性ウイルス感染者の蔓延を誘発することになる可能性も有るのではないだろうか。そして蔓延した薬剤耐性ウイルスの治療の為に新たな治療薬が必要となるという悪循環になる可能性も考えておく必要があるのではないだろうか。従って、先進諸国に求められる役割は、抗HIV-1治療薬の充分な量の供給と社会における意識改革への援助という課題であろうと思われた。このように現実的には極めて困難が多いアジア・アフリカ地区の状況ではあるものの、南アフリカ共和国では、可能な限り薬剤耐性についてもモニタリングして治療を続けたいと積極的であった。

研究報告の概要 

RT-nested touchdown PCR is an effective method for gene amplification in genotypic analysis of drug-resistant HIV-1. T Asagi, S Ibe, T Kaneda, H Suzuki, F Tezuka

HIV1-薬剤耐性遺伝子検査ではプロテアーゼ遺伝子と逆転写酵素遺伝子を検索対象としてPCR法による遺伝子増幅が行われている。しかしHIV-1 viral load が103コピー/ml以上であっても目的遺伝子の増幅が困難な症例が認められた。それらの遺伝子増幅不成功例は、1999年から2001年の間で増加傾向を示した。そこでそれらの遺伝子増幅不成功例について、プライマーと反応に用いる試薬等は従来のままとした遺伝子増幅改善策の検討を行った。検討材料は、血漿中のHIV-1 viral load が950~250000コピー/mlで従来法では遺伝子増幅が困難であった16検体からviral RNAを精製した。RT-PCR反応では、RT反応と1st PCR反応を連続して行う試薬としてOne Step RNA PCR Kit (AMV)(TaKaRa)を用いた。反応条件は、50℃で30分間のRT反応の後、タッチダウンPCR反応としてPCR反応中のアニ-リング温度のみを55℃から50℃まで1℃づつを降下させながら6段階のPCR反応を行った。2nd PCR反応では、1st PCR反応生成物を鋳型として、試薬は Ex Taq DNA polymerase(TaKaRa)を用い、2nd タッチダウンPCR反応として1st PCR反応と同様に行った(RT-nested double touchdown PCR;RT-NWTP)。検出感度の検討では、血漿中viral load が既知の材料を用い希釈法で行った。増幅産物は、アガロースゲル電気泳動で分離した後に蛍光輝度をEDAS290(KODAK)で測定した。塩基配列の決定では、アガロースゲル中の増幅産物をQIAEX(QIAGEN)で精製した後にBigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI)でラベルをして、ABI Prism 310(PE biosystems)で解析した。

その結果、RT-NWTP法では、検討した全16検体の遺伝子増幅に成功した。増幅効率は従来法に比較して約20万倍であった。また検出感度は凡そ23copies/assayであった。12の薬剤耐性変異が認められた検体を含む3検体での塩基配列の比較検討では、従来法とRT-NWTP法では全く同様の塩基配列が得られた。これらのことから検討した材料において、RT-NWTP法によるHIV-1薬剤耐性遺伝子増幅は高い増幅効果と従来法と同様な塩基配列が得られることが解った。

会議における公的役割の成果

私が共同研究者らとともに検討を進めてきた薬剤耐性検査成功率改善に関連する発表は特に無かったようである。即ち、薬剤耐性検査が有意であった症例を中心とした患者のみを対象とした報告が成されていたようであり、検査として遺伝子増幅が不可能であった症例が放置されている可能性が有りそうであった。それらの問題解決の糸口になるであろう私の研究報告は、CD-ROM発表となった事で他の会議参加者との意見交換が充分にできなかったことは残念であった。

専門分野での概要

これまでの経験から薬剤耐性HIV-1ウイルスや薬剤耐性検査に関する知見と意義の理解が深まったことが報告された。重要な点は、抗HIV-1薬剤の不十分な投与や服用の困難が、薬剤耐性ウイルスを生み出していると認識されたことである。また薬剤耐性検査の有用性と有効性については、既に抗HIV薬剤治療に耐性を示すようになったHIV感染者において、新たな抗HIV薬剤選択の有効な指標として薬剤耐性検査が使えそうだという理解が示されていた事である。その他、新たなHIV-1感染患者においても薬剤耐性遺伝子ウイルスの感染事例の報告があることから、治療開始前の薬剤耐性検査が必要と思われた。

最後になりますが、第14回エイズ国際会議への出席という貴重な機会をいただきましたエイズ予防財団にお礼を申し上げます。有難うございました。