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第14回国際エイズ会議参加報告書

日本福祉大学社会福祉学部保健福祉学科 林 素子


7月7日-12日までスペイン・バルセロナで開催された第14回国際AIDS会議参加の疫学・予防分野の報告を行なう。

ポルトガル(9.6対10万、2000年)に続き、ヨーロッパで2番目にAIDS罹患率の高いスペイン(6.7対10万2000年)で第14回AIDS国際会議が開催された。バルセロナのある人口約600万人のカタロニア地方では、2001年までに14025人のAIDS・ケースが方報告されている。スペインのAIDS診断年齢は、男性で平均39.2歳、女性は35.7歳(1997-2001年)である。感染ルートは、IDU(注射器による薬物乱用者)が57.8%と一番多く、次に異性間性交による女性の32.5%で、MSM(男性同性愛者)の23.7%という内訳である。カタロニア地方政府は、IDUに対し注射器の交換を行っているが、これまでも各国でこのようなプログラムがおこなわれていたが、大きく異なる点は、カタロニア地方政府が自ら注射器の交換を行っていることである。既存のプログラムではいずれもが政府は資金を提供するが法律で禁止された薬物使用のため政府が直接プログラムを運営することが難しく、NGOと連携して行っていた。この点は、非常に面白いと思った。

最近のUNAIDSの報告によると毎日新しく6000人以上の人がHIVに感染し、約1200万人の感染者が世界中で生活している。と同時に片親ももしくは両親をAIDSで亡くしたAIDS孤児が1400万人いるとのことである。そして、その数は年々増加傾向にある。世界で最も感染の酷いのはボツワナで、全ての成人の39%が感染していると言われている。このまま感染爆発が続いていくと200年から2002年までにAIDSの脅威にさらされている国45カ国において6800万人が命を失うだろうと言われている。このような状況下で何ができるのか?これまでの対策やプロジェクトに対する反省と、評価が多数行われた。その中で注目されているのは;(1)ブラジル、インド、カリビアン諸国で行いているARVの政府による低価格での提供を始めとする感染者へのサービス、(2)教育の重要性、(3)Microbicides、HIVワクチン、他の予防技術、(4)公衆衛生リーダーの育成などである。

ブラジルでは、一年間で4種類の薬の価格を50%抑えることを可能とした。これには強い政府のコミットメントがある。現在、ブラジルで認可されているARV15種類のうち8種類を国内生産している。ARVのアクセスが高くなったことにより新しくAIDSと診断される人の数を劇的に抑えることができ、AIDSによる死亡者数も劇的に減少した。しかしながら、WHOの報告によると途上国では治療を必要とする人の5%未満の人しかARV治療を受けることができないのが現状である。WHOは少なくとも2005年までにARV治療を必要とする人は少なくとも300万人いると推計している。

わが国のサーベーランス報告の特徴の一つである、HIV感染報告ではなく、いきなりAIDSというのがあるが、同じような報告がフランスやスペインからも発表されていた。フランスの研究によると1994-2001年の間にAIDSと診断された23360人の成人のうち、7091(30.5%)は、自分のHIV感染を知らないでいた。この大半は、サブ・サハラ・アフリカからの移民者である。自分の感染を知らないでいることは感染を拡大させる要因の一つのため、感染リスクの高いと考えられる人はできるだけ抗体検査を受けるようにする必要があることをうったえていた。スペインの場合は、自分の感染を知らなかった人の大半はIDUであったり、42%は何らかの理由により刑務所に入っていた人で、女性では24%が売春婦である。同様に感染拡大の原因の一つとしては、知識の欠如があげられている。例えばモザンビークでは、70%の少女、60%の少年が、複数のパートナーを持つことが感染の危険性を高めることや、どのようにして予防すればよいかという知識を持っていない。ウクライナでは、99%の少女はAIDSという言葉については耳にしたことはあるが、たった10%の少女しか感染を防ぐ方法を知らない状況にいる。一方、ブラジルでは、公立・私立校の約70%でHIV/AIDS予防に関する活動が行われ、3000万人近くの学生にAIDS予防教育がいきわたっている。その成果もあり、高いコンドーム使用率を保っている。いかに教育が必要かというこが示されている。2000年に設立されたBill & Melinda Gates Foundationの研究によると、HIV感染リスクにさらされている5人に1人にしか予防に関する情報やサービスが届いていないとしている。今回の会議では、AIDS対策の一つとしてUNAIDSのPeter PiotもUNICEFと協力し教育(一般教育を含め)の保障についても強調している。これは、日本にとっても大切な教訓であると思う。

予防対策としてワクチンと同様に注目・期待されているのがMicrobicideである。これは、ジェル状のものを女性の膣の中に入れることによりウイルスや細菌を殺してしまうというものである。HIV感染を防ぐだけではなく、STIも防ぐことができると期待されているが、現在はフェーズIIIの段階である。Microbicideの使用が可能になれば画期的なことであり、途上国を始めとする女性の感染者が激減すると期待されている。Microbicideの他に現在ケニア、コート・ジボアール、ジンバブエで、膣粘膜や膣を保護するものとして、これまで避妊具の一つとして使用されている「diaphragm」と「cervical cap」に注目し、STDおよびHIV感染予防についての研究調査が行なわれている。これらは、ワクチンの実用よりもより現実的なものとし、最近の感染流行のターゲット・グループである女性への感染予防という点から注目されている。

1990年代中ごろにロンドン大学の研究チームにより立証報告された「Tanzania Muwanza Study」によるSTDのマス・スクリーニングとその治療(syndromic management)によりHIV感染を減少させることができるという画期的な研究であるが、今回より詳細についての研究が発表された。タンザニアでは、これらの方法により40%HIV罹患率をさげることができたとしているが、ウガンダのRakaiで同様のことを行なった。その結果Rakai では、STDを下げることは出来たがHIV感染率を下げることはできなかった。その両方の相違点として、Muwanza の場合治療可能なSTD が主流であったのに対し、Rakaiでは、HSV-2をはじめとする完治不可能な STDが主流であったからとしている。これを受け、ペルー、ザンビア、ジンバブエとアメリカ合衆国でダブル・ブラインドで、HSV-2陽性者2000人に対し、アシクロビル治療を行なうことによりHIVが予防できるかの臨床研究が行なわれる予定である。

AIDSが初めて世の中に報告されて以来約20年が経ち、さまざまな予防方法が提唱されてきたが、感染者の数は爆発的に増えるばかりである。そして、今では第2世代にまで突入している。国際会議では途上国、つまりAIDS爆発国を中心とした対策についての発表が多いが、その中でVCT(Voluntary counseling and testing)の重要性をあげていた。はじめにも述べたように自分の感染を知らず感染を拡大させるおそれがあるために、自分の感染の有無を知ることの重要性を訴えている。これは、途上国だけの話ではなく、保健所での検査件数が減少する中、感染者の数は増加する、わが国においても同様である。また、今日わが国のAIDS対策予算は年々削減されているが、これまでAIDS対策で成果を治めている国は、政府の強いコミットメントの在る国である。例えば、ウガンダ、カンボジア、タイなどである。来年神戸でアジア・太平洋国際AIDS会議が開催されるのを機にもう一度1994年の横浜AIDS会議の時のように政府が強いコミットメントを見せる時ではないだろうか。

最後になりましたが、本会議に派遣の機会を与えてくださったAIDS予防財団にお礼申し上げます。微力ながこれからも私なりにAIDS問題に取り組んで行きたいと思います。ありがとうございました。