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第14回国際エイズ会議参加報告書

特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター理事長  五島 真理為

●バルセロナ

  ガウディ生誕150年にあたり、ユネスコ世界遺産に指定されるなど、ガウディの建造物に対する評価が確立した最中のバルセロナにおいて、今回のエイズ国際会議が開催された。ガウディの代表的建築の一つであるカサ・ミラには、国際会議の案内が正面に掲示され、また国際会議の公式ロゴもガウディの後期の特徴を示す割れタイル模様をあしらって、地域性を強調させる意気込みがうかがわれた。そして目抜き通りや公共建造物、公衆トイレなどは、エイズと国際会議への関心を喚起させる掲示で、会議参加者を歓迎する配慮が感じられた。また、昨年のオーストラリアでの会議に比べるとメディアも大きな関心を寄せていた。

 われわれは来年11月にはもう一つの国際会議を神戸で迎えることになるが、これからの準備過程において、国際都市神戸をアピールさせる会議が開かれることを願わせるものであった。

●開会式

 歓迎あいさつやアトラクションの後、最初の講演はヨーロッパ緑の連帯基金の議長ホセ・マリア・メンディリュスによって行われ、エイズとHIV感染の現状にたいして緊急の行動をよびかけるものであった。オープニングでは、例年、世界の感染者を代表する講演が行われるが、今回はバルセロナの女性活動家マリア・ホセ・バスケスの講演の間には、1万5000人が追悼のろうそくをともして会場を満たした。UNAIDSの報告によると1日に8500人が死亡していることと照らすと、これは2日間の死亡者の数に相当する。治療法が開発され、21種類もの抗HIV薬が利用できるようになっていながら、北の豊かな国と、南の貧しい国において人命の価値に対する大きな格差が生じていることに対して、怒りや悲しみを越えた無力観が、ともすれば支配的になりやすい。開会式に先立つ会場外のデモでは怒りが表現され、無力感を克服してただちに行動を促すことが呼びかけられた。

開会式におけるUNAIDSのDrピオットの力強いアピールは、参加者の全てを力強く励ますとともに、そのような行動を呼びかけるものでもあった。Drピオットは国連のアナン事務総長のメッセージを紹介しながら、国連特別総会でなされた約束を実行に移すよう求めるために、各国のあらゆる立場が政治的な決断を促すための行動を呼びかけた。

●P Piot UNAIDS(国連AIDS合同計画)事務局長の開会講演

 国連のアナン事務総長からのメッセージは、「この会議にはエイズに関心をもっている世界の最良の人々、最も重要な決断にかかわっている人々、先鋭な活動家たちが一同に介しており、参加者の慧眼がこの地球のあらゆる地域、そしてあらゆる国々の指導者たちに、その力をとどけることを期待している。私は皆さんとともに、この疾患に緊急かつ包括的に対処することが重要な課題であることを確認しておきたい」という趣旨であった。

 ロシア正教会の大司教がエイズに関心を示し、アフリカ首長国会議においては子どもが「なぜ共通に戦う相手がエイズではないのですか」と聞かざるを得ない事態を引用しながらピオットは、エイズが世界中の政治的な課題となる、新しい時代が到来していることを指摘した。その一方、われわれの戦いもまた初歩的な段階に過ぎず、とりわけ、政治の場におけるエイズとの戦い、権力や財力との戦いの重要性が指摘された。

 エイズがこの世に出て20年の現在、HIV感染者がなぜ差別の対象となるのか、なぜアフリカでは3万人の人々だけが抗ウイルス剤を利用し、その何百倍もの人たちは利用できないのか、なぜ年間75万人もの新生児について予防が可能な感染を止めることができないでいるのか。これらの答えは政治的な判断と、未来を確保する「予防」と、今日現在の生命を救う「治療」とを計りにかけるような考えにある。予防と治療とは、決してどちらをとるかという選択ではなく、両者はともに全力を挙げて取り組まれるべきものなのである。

 これらの提案をピオットは、将来の侵略に備えた防衛が安上がりだからといって、現実に侵略した軍隊との戦いを拒否する国はないことにたとえ、未来の生命の価値は、今日の生命をどのように救うかにかかっている、と述べた。技術的には世界のいずれの国においても実施可能な治療を、設備不十分を口実に拒否することはできない。医療資源を使い果たしてしまったためにエイズ治療を行うことができない国はどこにもなく、障害はそれを行う政治的な意志である。

 そうして、「エイズ拡大に対処する最小限の費用は年間100億ドル(1兆円)と見られているが、実際に得られている額はその3分の1にすぎない。あらゆる資金ー政府、企業、市民、そして新規の世界基金の創設により、この目標達成にむけて分かちあわねばならない。」と連帯を呼びかけた。

 次いで、「エイズがサハラ砂漠以南アフリカを覆い尽くしていた間に、世界中はそれを見過ごしてきた。このようなことを二度と繰り返してはならない。そして今、もう一つの大陸で同様のことが起こっている時期に、われわれは傍観者であってはならない。そして、エイズによる荒廃から立ち直ろうとしているアフリカを見捨ててはならない」と、新しいエイズ爆発の傾向への警告もなされた。これは中国、インド、そしてロシアにおける感染の拡大を示唆しており、神戸におけるアジア太平洋国際エイズ会議の重要な課題のひとつを示すものともいえる。

 このような、世界の不平等、エイズのこれ以上の拡大をとどめる障害を取り除くためにピオットは「エイズをしっかりと政治の課題にすること」を繰り返し強調し、それが「科学や古典的な公衆衛生対策の概念を乗り越えるあたらしい世界の秩序」をつくると同時に、「いくら多くの国々の計画がなされても、それを反故にするくらいの影響をもっている国際間の貿易協定」や「エイズに対する費用の行使に上限をもうけたり制限しがちな、政策に見えざる力をもっている国際機関」を牽制しつつ、暗にWTO,世界銀行などの大きな役割を指摘した。

 「エイズに関する約束を守る政治指導者たちが信頼を得て報いられ、約束を守らない政治家がその立場を失って、他の政治家に変わるような日を到来させよう」と、参加者にも「エイズに対する取り組みを政治の課題に」する課題が与えられた。UNGASS(国連エイズ特別総会)で約束がなされた最初の時期は2003年であり、バンコクで次の会議が開催される2年後には、誰が2003年までの約束を果たしたか、を確認することになる。それまでにわれわれがそれぞれの国、それぞれの地域において、妥協することなく、同胞を救うべく努力することがわれわれが守るべき約束である、と締めくくられた。

●学会全体会議

1)第2日目(月)
 バルセロナ会議2日目の本会議は「エイズの現状」についての報告が相次いだ。

 世界の現状は、年間死亡 300万人、2001年末における感染者数4000万人、年間新規感染 500万人という状態で、感染者総数のうち途上国の占める割合が 94%、南部アフリカ7か国の成人感染者率は 20%、南アフリカ成人死亡のうちエイズ患者 80%以上に達する。

 また、若者(15-24歳)の感染者数は世界で 1,180万人(女性 730万人、男性 450万人)であり、そのうちサハラ砂漠以南が 860万人、南アジアが 110万人を占めている。アフリカ諸国の都市部では妊婦(15ー19歳)感染が 10ー30%に達し、若い女性(15ー24歳)のエイズ認識は、「聞いたことがある」という者は南アフリカ81%、タイ94%、フィリピン91%であるが、「予防知識がある」者はそれぞれ、18%、37%、4%という実情である。

2)第3日目(火)
 全体会議2日目は「21世紀の予防戦略」について報告があった。

 先進国における感染の予防には地域全体を対象とする教育の一定程度の成果が指摘できるが、現在の感染の爆発を抑えるには、さらに積極的な介入が必要である。とくにこれまで注目をあまりあびて来なかったユーラシア大陸、とりわけ東欧諸国とロシアにおける感染拡大の背景には急激な社会の変化の中で生じる無気力や失業や投獄などがあり、薬物常習(IVDU)を抑えようとする対策は逆に不衛生な環境での感染を広げることになる。その意味で国際連合の支援による、薬物中毒者の健康管理や生活支援をも含む交換針の無償配給の計画は喝采を浴びて迎えられた。

 ワクチン開発については人を対象とした第3段階に入っていることが報告されたが、さまざまな障害があり、初期の期待どおりには進んでいないこともつけ加えられた。

3)第4日(水)
 水曜日の全体会議は「治療とケア」について、カメロン(南アフリカ)の司会で進められた。抗HIV薬による経験が蓄積され、処方について解説がされた。60年間投与でメモリーTセルの完全除去が見込めること、HAART療法は確実に死者を減少させ、カリニ肺炎の回復をみるなどの成果があるが、CD4が一定レベル以下では比較的に予後に限界がある一方、早期の開始にも問題点があること、その他、失敗例の要因についても指摘があった。医療体制としても考えるべき課題があり、医者個人への期待でなくプライマリケアの体制を整備するなど、システムとして総合的な社会資源の活用が重要であること、費用は発症してからは高額となるのでヘルシー・キャリアの時期からの対処が重要であることも指摘された。

 政治が介入する必要は治療にも予防にもあり、司会者のカメロンは、「ベルリンでは科学者への怒り、感染、死者の怒りがあった。大臣にも怒り、自分自身へも怒った。今や社会への怒りを組織することが必要だ。」と指摘した。

 健康上の理由で欠席したアパルトヘイト活動家はビデオを通じて、「すべての人に治療を、命の権利・命は平等であり、治療を進める人は予防も同時に、予防の取り組みは治療と並行して進められるべきで二者択一はないこと、米・欧・日などがその費用を出すのがルールである」点を訴えた。「一人の命を失うことは皆が失う」ことであり、予防も治療も方法があるのに実行されないのは人間の問題であり、ブラジルの成功やボツワナの例などを揚げ、小さい政府をエンパワーし、最も必要とする国に基金を集めるために力を合わせようと呼びかけた。

 HIVは結核だけでなく、マラリヤその他の感染の拡大をも誘発させ、先進国ではHIVとC肝炎が併在するなど(1000万人がHC+、300-500万人がHB肝炎を併発)、HIVが他の深刻な感染症を誘発させている現状についても報告された。
 HIVは南も北も同じであり、治療も南北がうけるべきであること、片方だけが治療で克服しても、人の移動があるので意味がないことなど、予防も治療も、北も南も世界一斉にすべきことが、全体会議を通じて確認された。

4)第5日(木)
 木曜日の全体会議は「科学から行動へ」をテーマとして開催された。
 女性は命の尊さをより理解しやすい立場にあり、人権意識にも敏感であるが、多くの社会で、2重、3重の被害にあっている。母子感染予防の投与については、新生児を助けても産婦に耐性を生じさせてAZT効果を下げて死亡率を高める点が指摘され、母子ともに救う対策を求める声も紹介された。また、ブラジルにおいては(コピー薬と同時に)、確実にコンドーム政策が成功し、感染が減少していることが報告された。

●学会分科会

 「知識とコミットメントを行動に」を全体スローガンとする本学会は、「A:基礎科学」、「B:臨床科学とケア」、「C:疫学」、「D:予防科学」、「E:社会科学」、「F:介入と計画の実施」、「G:政策への提言と働きかけ」、の7つ分科会に別れて開かれた。最終日には、それぞれの分科会の要点が報告されたが、どの分科会においても、要約では社会的な解決を求める方向への結論を導きだしたようであった。

「D:予防科学」
 学校を基盤にした予防が重要であること、MSMの間ではUnsafeなsexが増加していること、STIに有効な薬剤の開発、海草を応用した膣内感染防御剤、インドやブラジルにおけるコピー薬の使用の容認などについての報告が紹介された。

「E:社会科学」
 発表全体からの報告者の感想がまとめて報告された。

 活動にかかわる知識、社会構造、疾病の現状への認識は広がっているが、なお知るべきことは多い。とりわけ病気の広がりに認識が遅れており、予測が重要である。また、政治に無関心、無知であってはならないこと、人々の態度(無関心、無知)を変えること、社会敵な怒り=性的暴力、男性優位主義への怒りを組織化すること、性産業の抑制でなく状況を転換させる怒り、差別・偏見・人権侵害への怒り、差別は貧困や社会構造の中で生じていることの認識、論理的で詳しく積極的な考えや行動の重要性、などが指摘された。

「F:介入と計画の実施」
 STIや結核がHIVと重複感染している背景には、公衆衛生的な課題、とりわけ貧困、住宅、失業などの問題があり、社会政策面での指導性が必要であると同時に、介入の実施にはガイドラインが必要である。検査、情報のシステムと、アクセスを確保しえコンドームや治療を普及させ、貧困の解消、人権の回復へも介入することが要請される。

 また、若者のプロググラムに若者を巻き込むことにより、(1)自尊感情の形成、(2)両親からの尊敬、(3)セーフセックスなどの確立を図ること、介入する場合の機関相互の連携、女性運動の活用等により介入の効果を向上させることの意義が示された。そうして、「私にできる」から「あなたにもできる」、そして「皆が実行する」ことへの前進が提起された。

「G:政策への提言と働きかけ」
 今回の学会の大きな特徴は、人権を重視する方向が確認され示されたことであった。この、バルセロナにおける意志一致にたいして、具体的なゴールは低すぎること、予測するという残念な状況から抜け出ることが重要である。報告者は、「当事者以外が当事者と同様に行動を起こした時に正義が果たされる」(ツキディデス)を引用して、締めくくりとした。

●閉会式

 PWAを代表して、メアリーさんは太平洋の小島にもHIVは拡大してきていること、孤立しがちなPWAにとってマンデラは精神的支柱の役割をはたしていること、一方で、本会議においてコミュニティに与えられた部屋はあまりにも限られたもので、もっと多くの部屋を望むこと、薬を今すぐ私たち全てのPWAに与えてほしいこと、アフガンに莫大なお金を投入する費用があればUNGASの基金にUSは十分に応え得るはずであること、エイズの暴力の犠牲はあまりにも大きく予防への努力はあまりにも少ないこと、南太平洋のココナツ島でも軍隊は強く、たくさんの人々がHIVの影響を受けている中でHIV自体が国防上の重要な課題となっていること、防衛に予算を費やすならエイズとの戦いにも勝利できるはずであり、国費の無駄使いをやめ公平な使い方、とりわけ豊かな人々のためだけでなく、貧しい国の人々にも治療の機会と予防を十分に与えること、などを切々と訴え、満場の喝采を浴びた。そうして、「positiveに生きることの良さを分かち合いましょう」と、全世界の積極的に活動する陽性(Positively positive)の人々へ声援を送った。

 前アメリカ大統領ビル・クリントンは、多くの死者や孤児、感染の拡大、Durbanの後、未だにUNGASSの約束はまだ果たされていないなど、悪いニュースが多い中で、良いニュースとして、薬の価格を下げることとなったこと、インド、ブラジルなどにおけるコピー薬の存在が容認されてきたことなど、2年前からの前進点をあげ、「エイズが増えるとデモクラシーが減る」という言葉で、現在の南北の2つの社会が将来的には(問題が集積した南の課題を解決して)一つの差別のない社会にしていくことを目標として示した。また、アメリカが基金に支払って約束を果たすべきであること、途上国で払えない国は先進国が請求を肩代わりするのが先進国のマナーだと明言した。従来の性行動などに対するステレオタイプの見方をやめることが重要で、人は皆同じ友人として扱われるべきであるとして、自分のナイジェリアの友人でHIVのカップルに娘が生まれたことや、インドではMSMというだけで刑務所へ入れられる例などを示して、人は皆平等であること、宗教的にも世界中の教えの中にある「一人の痛みは皆のいたみ」という考えを実現させるために、政府や国がもっと努力すべきであると伝えた。クリントン自身の約束として、アフリカでもインドでも、すべての個人的なスピーチでエイズを話題に取り上げてアピールすること、そしてアメリカがその面でもっと貢献するように訴えること、および、自分に何ができるかを教えてもらったら、それを実行するように勤めることを表明した。最後に、今なおカトリックがコンドームを拒否するなどのマイナス面はあるが、あきらめないで働きかけを強化すれば人は変わり得ること、誰でもが意見を変える可能性があること、そのために山の上に石を持ち上げる努力を諦めないようにしょう、と呼びかけた。

 クリントンから「決して諦めることのなかった人の象徴」として紹介され壇上にたったネルソン・マンデラは、最後に講演をするのは老体にはつらいこと、耳が聞こえないので皆と一緒に騒げないことなど、ユーモアを交えた話題を開始し、Durbanにおける会議以降に沢山の人々が亡くなったこと、若者の間の感染拡大や孤児の増加など、無垢な子どもたちの犠牲が最も辛いこと、エイズによる身体的、社会的、心理的に普通の人が苦しんでおり、これまでの戦争、自然災害の全てを加えてもエイズによる犠牲が多いことを指摘した。また、エイズによる死亡は「病気が人を殺すのでなく差別・偏見に殺されている」という実情から、エイズとの戦いは差別との戦いであり、エイズに対する偏見を克服することが最も重要な課題であると強調した。大統領在任中に国内ではどこでも子どもたちと食事をし、その時のエピソードなども交え、自分が結核やがんになったとき差別はなかったのに、エイズも同じではないか、一人の判事にとって可能なことが誰にとっても可能となるよう、3つの挑戦を提案した。それらは、(1)制度や医療の体制を変えねばならないこと、つまり98年以降、治療ができることは差別を少なくしており、それがより早く、より広範にでき、よりはやく対処できるようにすること、(2)人々が知る権利を確保し、匿名検査や自分の状態を知り、治療を受ける機会を確保すること、(3)指導者の姿勢を変えるよう、皆が努力すること、政府を批難するだけでなく、もっと重要な「われわれは政府を変えるような働きかけをしてきたのか」を自らに問いかけ、「我々自身がこれらの事態を変えよう」と呼びかけた。

●学会発表、現地NGOの訪問とラジオ、テレビ局の取材

 今回の学会には全体会議のほか、たくさんの発表があり、私たちも採択された演題をポスター・セッションとして発表した。詳しくは別項に譲るが、会場では各国からの多くの参加者の質問を受け、交流を深めることができた。

 国際会議への参加は、またとない開催国のNGOとの交流を得る機会でもある。会場内のスペイン村におけるスペインのエイズNGOとの交流の中で、われわれが感染者たちによって始めて全国的な規模で活動を開始したNGOであることを知るや、開催地カタローニャ地方を基盤に活動をしているNGOから招待を受けて、訪問することができた。

 バルセロナに隣接するリゾート都市であるバダローナVIH-DAを訪問した。
NGO訪問に続いて、市長の表敬訪問も設定され、副市長へは日本からの参加者8名と、今回のNGO訪問に同様に招待されたキューバからの3名の参加者が現地のNGOとともに接見し、約20分間にわたり両国の事情の説明等、交歓を行った。
同市とバルセロナを見渡す丘の上には地方の中核的な病院があり、ここにはエイズセンターも併設されており、NGOと職員の案内で、検査施設と採血、カウンセリングルームなどを見学する機会を得たが、これまでに累積患者数は2000人、1日に約100人の受診者に対応しているとのことであった。
今回のNGO訪問にあたっては、地元のNGOが学会場における予定を半日キャンセルして設定してくださることによって実現した。当方の学会場での依頼を受けて、市長訪問からエイズ/センター見学、地元の感染者との交流会までを1-2日の間に企画される手腕は、日ごろのNGOの行政や医療機関、感染者との信頼関係に裏付けられたものであり、それまでの努力がおしはかられるが、さらに我々の希望を受け入れていただけたことは、同じく感染者によって設立され、活動を続けているJapan HIV Centerへの信頼と連帯の表明でもあったと受け取り、設立者たちにも感謝している。

 会場においては、HIVと人権・情報センターのブースにおいて、各国のラジオ、テレビ局の取材を受けた。取材件数はほぼ20件にのぼり,その中には現地のラジオ、テレビ局のほか、アメリカ、韓国、イタリア、ロシアなどの取材も含まれる。
また、現地のNGO訪問には現地のテレビ局が市長訪問、病院見学のあいだも同行し、取材を受けるほか、現地のラジオ局からも訪問目的などについての取材を受けた。

帰国してからも、NHKテレビの取材に応じ、7月18日のBS2にて放送され、学会の様子とともに海外へ紹介された。

●国際会議への参加の意義

 今回の国際会議は、これまでになく明確かつ重大な目標を示した会議であったといえる。その第一は、エイズを政治の最重要な課題として取り上げようという意志である。予防法が明らかとなり、治療法がありながらも、一日に8500人の人々が亡くなっているという事実は、エイズがもはや研究や医療の普及だけでは解決しえないレベルの問題に直面していること、つまり、どのような災害も戦争によっても記録されたことのない大きな犠牲にたいして、解決を阻むのは政治的な判断の遅れであり、解決は同様に、政治的な意志決定を促すことによってのみ達成できるということを、研究者も医療やサービス従事者も、そして患者・感染者やNGOが共に確認する機会となったということである。それは、開会式におけるUNAIDSのDrピオットやヨーロッパ緑の連帯基金のメンディリュス議長の講演から、閉会式のクリントン、マンデラ両氏の講演にいたるまで共通して貫かれた新しい目標であった。

 次に会議を通じて確認された課題は、予防と治療は二者択一ではなく、ただちに双方をともに全力あげて進めるということであり、治療の機会や予防の手段、そして人権がすべての地域、すべての国、すべての人々に平等に確保されなくてはならないという意志である。そのため、従来以上に、それぞれの国、それぞれの地域におけるNGO活動と行政や政治的意思決定の機関が連携を強化することの重要性が、また確認された。

 一言で今回の会議の特長をあらわすとすれば、「エイズの影響を受けない国、地域、人々はいない」という、まさにAIDSが人類史的な課題としてすべての人々の共通の課題となっていることを印象づける機会であったといえる。

 最後に、このような貴重な機会に、当事者として参加できる機会をいただいたエイズ予防財団のご配慮に深く感謝して、雑駁な報告とさせていただきます。