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第14回国際エイズ会議参加報告書

特定非営利活動法人 Health and Development Service (HANDS) 竹中 伸一


2001年6月、国連エイズ特別総会(UNGASS)において、2005年までに、すべての人々が「自発的カウンセリングと検査(VCT; Voluntary HIV Counselling and Testing)」を含む予防プログラムにアクセスできるようにコミットしている。VCTとは、自発的検査と検査前後カウンセリングから成り立っている。近年、HIV感染予防やケアへの介入において重要なアプローチとなっている。VCTにより感染の有無を把握することは、HIV陽性の場合はパートナーへの感染を防ぎ、陰性の場合は陰性であり続けるよう安全な性行動変容を促すとしている。さらには、VCTはHIV感染者へ対して、結核等の日和見感染予防、社会的・精神的支援等を行うためのエントリーポイントである。例えば、HIV感染妊婦に対してはARV投与や母乳指導などの介入を行うことにより、母子感染の危険を低減させる。先のUNGASSにおいても、80%の妊婦が情報、カウンセリング、その他の予防サービスを受けることを可能とすることにより、2005年までにHIV感染幼児の割合を20%まで低下するとしている。このようなことから、第14回国際エイズ会議において発表や議論された「自発的カウンセリングと検査(VCT)」を始めに、「母子感染予防(PMTCT; Prevention Mother-to-Child Transmission)について各国の取組みの現状及び研究成果について報告する。

Voluntary Counselling and Testing(VCT)

VCTにかかわるセッションは本会議中にHIV Counseling and Testing (I) (II) Expanding the Reach of Voluntary Counseling and Testingが催された。以下、3つのセッションで発表されたものを一部紹介する。

P. Rummkomは、1999年から2001年にタイ国ランパーン県361人を対象にHIV感染からHIV診断までの時間の経過とその時間を決定付ける要因について調査した。無記名VCTサービスの拡大とタイ人の間でのHIVへの関心の増大により、HIV感染から診断までの時間を短縮していると報告した。さらに、産前クリニック(ANC; Antenatal Clinic)での妊婦の血液検査がHIV感染を早期に発見しているとした。

C. A. Metcallは、米国の三都市での性感染症(STIs; Sexual Transmitted Infections)クリニックの患者3, 293人を対象に、VCTの6ヵ月後にフォローアップカウンセリングを受けたグループと受けないグループとの間で、STI感染率を調査した。調査結果は、感染率に両グループ間に違いはなく、フォローアップ・カウンセリングの効果は見られなかった。また、検査を行った日に同日に結果を受け取る簡易HIV検査のグループと結果を1週間後に受け取る通常HIV検査のグループとのVCT後12ヵ月STIsの感染率を調査した。調査結果は、検査結果を受け取った率は簡易検査が95%以上と通常検査の67.7%よりも高かったが、STI感染率は通常検査の方が低かった。

A. C. Van Dykは、南アフリカ1, 422人を対象にVCTに対してneeds、attitudes、beliefsについて検証した。被験者は各々の人がHIVの感染の有無を知っておくべきだと思っているにもかかわらず、17%の黒人被験者と5%の白人被験者はVCTを受ける準備はできていないと答えた。その理由は、治療選択が限られているのとHIV感染の有無を知ることが憂鬱、心配、早期の死や他者からの拒絶をつながるとことを恐れているからだった。そして33%(40%の黒人、19%の白人)の被験者はVCTを受けるのに知らないクリニックへ行くことを好んだ。その理由は、ヘルスワーカーが検査結果を秘密にできると50%の被験者が信じていなかった。

M. A. Jumaは、ウガンダ14歳から21歳の369人を対象に、VCTが青少年に裨益するか否か検証した。男子のVCT利用率は22%、女子は28%だった。女子のVCT利用者は、パートナーがHIV検査を受ける支援や費用支払いをしていることと結婚に先立ち検査を受けていることが判った。男子は、友人から支援により検査を決定し、一人で検査を受け自分自身が費用を支払っていた。多くの女子(61%)がパートナーの影響により検査を受けることを決定しているのに対して、男子が影響を受けたのはパートナー(33%)、友達(32%)、誰からも受けていない(32%)だった。これらから男子より女子が多く検査を受け、男子より女子がパートナーからの支援を受けていることが判った。

 これらの研究やプロジェクト成果より、VCTサービス実施にあたってのポイントは次の5点である。1)VCTサービス実施にあたり秘密が確保される。HIV検査結果はクライアントのみに知らされるものであり、検査前後のカウンセリングや継続カウンセリングで話されたことも、クライアントが望まない限りにおいては、他言されてはならない。2)検査は自発的なものとする。個人の意思決定によりHIV検査を受けるものとし、強制されてはいけない。3)すべてのクライアントは、検査前後のカウンセリングを受けられる。4)HIV陽性者が差別を受けないようにする。5)クライアントが予防、ケア、社会支援を受けられるようにする。これらの5点が実行されることで、VCTサービスの利用の増加が確保される。


Prevention of Mother-to-Child Transmission (PMTCT)

M. J. Besserは、南アフリカ・ケープタウンでHIV感染妊婦を対象に実施しているMother-to-Mother-to-be(M2M2B)プログラムを報告した。このプログラムでは感染妊婦を対象にARVや母乳について教育し、生活の質を向上のためのカウンセリングや支援を行っている。登録された妊婦は母子感染について理解し、母子感染の危険を低減させるARVの使用や母乳にかわる食事提供を実践している。PMTCTプログラムの一部にこのM2M2Bプログラムの導入が必要としている。

E. Shutesは、2001年5月にザンビア・ルサカで妊婦を対象としてVCTサービスの提供を始めたZambia Exclusive Breastfeeding Study(ZEBS)について活動報告した。このプログラムの中で、妊婦のパートナーのVCTサービスへの参加を促し、カップル・カウンセリングを実施した。このカップル・カウンセリングは母子感染の実践に貢献し、されにはHIV感染予防にも効果的に影響を与えている。しかし、男性のPMTCTプログラムへの参加には、妊婦健診サービスの見直しやコミュニティの教育が必要としている。

A. H. van't Hoogは、2001年5月にケニア・キスムで開始したPMTCTサービスについて活動報告した。このプログラム開始時は、PMTCTの利用はわずかだった。その要因としては、新しくよく知られていないサービス、サービスの質、サービスの文化的受諾、多くの女性がHIV感染の有無を知らない、クリニックでのカウンセリングと検査の欠如、パートナーの参加の欠如、母親への治療選択の欠如があげられた。PMTCT利用を改善するにあたっては、クリニックでの検査の実施、パートナーを含むコミュニティの教育、母子のために治療の選択肢が必要であるとしている。

PMTCTの実施にあたり、VCTは必須である。しかしながら、この新しいHIV感染予防がよく知られていないために十分な成果を出し切れていない。そのために、PMTCT戦略には、次の3点が重要である。1)将来親となる青少年層へのHIV感染予防教育。2)HIV感染夫婦への家族計画サービスと情報提供。3)HIV感染妊婦へのARV投与。

発表にあるように、世界中で様々なVCTサービスの実施が試みられている。そして多くの研究により、VCTが性行動変容において重要な役割を担っていることが明らかになっている。しかしながら、パートナーと同伴して検査を受ける人々は少数である。HIV検査結果をパートナーと一緒に享受することはとても難しく、ましてやHIV感染陽性女性の多くはパートナーに話せないでいる。このことにより、問題が隠され次の問題の拡大の核となっている。VCTサービスにかかわる情報や教育を女性のみならず男性も含むコミュニティに実施し、VCTサービスから得る裨益を理解することを導くことが急務である。さらには、VCT後に続くケア、社会支援等の質の高いサービスの提供が保証されたネットワーク確立がもとめられている。

最後に、財団法人エイズ予防財団には本学会への参加支援を頂いたことに対し謝意を示す次第である。