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第14回国際エイズ会議参加報告書

せかんどかみんぐあうと  大石 敏寛 


今回の国際エイズ会議の出席で、今後のエイズ対策についての模索が今回のテーマになりました。

■ 今後のエイズ教育に必要なこと
 エイズ対策を考えたときに、若い世代への感染を防ぐことは、大きなトピックとして考えられます。そのためには、これまで、言われつづけてきたことを、具体化することと、新しいものを考えて実行していくことが重要だと考えられます。

1)教育の具体化

 これまで言われつづけてきたことを具体化することとは、性について関心を示す若者に対して、適切な対応ができる専門分野の人間が若者の近くにいないという問題を解決することです。UNFPAが主催したセッションでボツワナのスピーカーは、学校に専門家を常に配置しておくことの必要性を話しました。思春期を向かえ、性に対して関心を持ち出す若者が、性に対する情報をポルノ雑誌などから、偏った情報を得ている現状を変えるためには、ポルノとしての性だけではなく、生活していくうえで、必要になってくる性の情報を伝えていくことは非常に重要だと考えられます。そのために、性の情報を伝えていく、あるいは、性に対して不安や疑問を抱く若者に対して適切な対応がとれる専門家の育成が早急に必要だと考えられます。

2)新しい教育資材の開発
 新しいものを考え実行していくことでは、ITの導入が考えられます。オランダのポスター報告では、若い世代へのセイファーセックスの普及の方法として、セイファーセックスとセクシュアリティを教える教材をCD-ROMで配布するという試みが行われたという報告がありました。このCD-ROMの特徴としては、1)個々人が自分のペースで始められる、2)多くの情報の中から選択できる、3)関連した情報に関しては、インターネット経由で他のサイトにリンクできる、4)学校だけでなく、自宅でも行うことができる、などがあります。今回の報告では、ITを利用した教育がどれだけ有効であるかというデータは報告されていませんでした。

 学校教育において、性教育やエイズ教育を行うことができる専門家が不足している現在、こうした状況を補う方法として有効であると考えられます。また、コスト面から考えても、CD-ROMは1枚約100円という値段から、教育ソフトを最初に作ってしまえば、あとは、VTR、DVDなどのメディアよりも低価格で利用することが可能です。若い世代にとって、パソコンの利用が当たり前になっている現在、こうした方法も有効な手段になると考えられます。

 インターネットに関連しての報告として、HIVCareNet(アメリカ合衆国)の報告では、エイズに関する様々な情報がインターネット上で公開されているものを、利用者がスムーズにたどり着く方法が必要であることが指摘されました。スムーズにたどり着くたという意味は、情報を探し出して、2~4回のクリックをさしますが、これは、一般的にサイトを制作する上でも同じ事が言われています。いかに少ないマウスのクリックで目的の情報にたどり着くかということは重要です。HIVCareNetの試みは、エイズに関する様々なサイト情報をカテゴリーにわけてリンクし、利用者がニーズにあった情報を少ないクリック数で見つけることができるというものです。日本では、エイズ専門の情報検索サイトがないため、WEB上で公開されている情報にアクセスするためには、検索エンジンでキーワードを入力して、キーワードに関連する膨大な情報からみつけるか、多くのサイトのリンク情報を渡り歩くしかありません。今後、ますます、インターネット人口が増えていくことを考えると、エイズに関する情報をカテゴライズして利用者が必要な情報にアクセスできるような整備が必要だと考えられます。なお、このHIVCareNetの報告はJournal of the Global AIDS Pandemic(July 2002)でも取り上げられたということです。
  
3)教育する側の教育の必要性
 感染者・患者はエイズ教育を行う上で、重要な役割を担います。たとえば、同じ患者・感染者同士のピアな関係での教育であったり、予防教育を行う場合にエイズのリアルな現状を伝えることができたりと、ある意味では、こうしたことは、患者・感染者にしかできないことでもあります。ブリッジングセッションでの発表で、こうした現実を踏まえての注意点が出されました。患者・感染者が人々に伝える情報が間違ったものである場合には、それは、そのまま伝達されてしまうことから、教育を行う側へのトレーニングの必要性です。日本において、オープンなスペースでないところなら、話をしてもいいという患者・感染者や、以前よりも、オープンに感染を公表している人々が増えています。しかし、現状では、これまで、日本において、患者・感染者がトレーニングを行う場所はありませんでした。私自身も、国連(UNDP)でのトレーニングや、アメリカ合衆国の団体でトレーニングを受けるしかない状況がありました。こうしたことを踏まえて、エイズ教育に患者・感染者が、今後、エイズ教育に、よりいっそう中心的に関わるために、誤った情報を発信するトレーニングを受けていない感染者・患者の数を減らし、正しい知識や情報、伝える側としてのテクニックを持つためのトレーニングを行うことが必要だと思います。

 また、こうした問題は、患者・感染者だけの問題ではなく、エイズ教育を行う人々に対して専門家としてのトレーニングとガイドラインを設けることが必要です。高校生や中学生に医師が医学的な話をしても、あまり効果がないのに、いまだに、こうした話をしたり、一般市民を対象としたシンポジウムに難しい話しかできない研究者を招かざるを得ない現実を解消するためにも。