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第15回国際エイズ会議参加報告書

国立感染症研究所エイズ研究センター協力研究員   厳 馬華 



(財)エイズ予防財団の派遣により第15回国際エイズ会議(タイ、2004年7月11~16日)への参加機会を得た。この会議は以前に参加した学術学会と違い、学術から社会科学分野まで幅広く議論されていた。私は主にTrack A-基礎科学のセションに参加した。

会議で発表した研究課題の概要

ポスター発表:Inhibition of HIV-1 integrase strand transfer activity by Carbazole derivatives
HIV-1感染者の多剤併用療法(HAART)において、薬剤耐性ウイルスの出現は治療を困難にする大きな問題となっている。このことからHIV-1の複製過程に必須であるインテグラーゼ(IN)を標的としたHIV-1治療薬剤開発が注目されているが、現在までに臨床応用可能なIN阻害剤はまだ開発されていない。我々は新たなHIV-1 IN阻害剤の開発を目的に小分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、カルバゾールを母核にしたカルバゾール誘導体が強いHIV-1IN阻害活性を持つことを見出した。さらにこれらのカルバゾール誘導体のHIV-1IN活性に対する阻害機序の解析を行った。カルバゾール誘導体のインテグラーゼ阻害活性は、ビオチン標識したtarget DNAに対し、ジゴキシゲニン標識Donor DNA, 精製IN,カルバゾール誘導体を添加して反応させ、反応産物をストレプトアビジン固層化プレートに吸着させてAP標識抗ジゴキシゲニン抗体とCSPD を用いて発光量を定量することにより測定した。このStrand transfer assayでIN阻害活性を呈するカバゾールを母核にした8個の誘導体について解析した。その中で最も阻害活性の強い2つの化合物について反応速度を求めLineweaver-Burk plotからKm値とVmax値を算出し解析した。その結果この化合物はINに対してcompetitive inhibitorとして機能している可能性が示された。またintercalative assayの結果、カルバゾール誘導体がDNAに対してintercalatorとして結合し阻害活性を発揮しているのではないことが明らかになった。これらの結果からカルバゾール誘導体がIN阻害剤開発における新たなリード化合物としての可能性、INの構造、機能やメカニズムなどの研究への応用も期待される。

関連した興味ある研究発表

WePeA5643/WePeA5644:この二題は去年発表された今までのHIV阻害剤の機序と違い、ウイルスの成熟を阻害するPA457をさらに解析した結果である。PA457はカプシド前駆体であるP25から成熟なカプシド蛋白であるP24 になるステップを阻害する。WePeA5643が報告したのはin vitroでPBMC、 in vivo でSCID-hu Thy/Liv を使い、PA457の阻害効果の検討であった。WePeA5644が報告したのは各動物を使い、PA457の吸収、分布、代謝及び排泄などの体内動態を分析結果である。結論として、PA457は新薬への発展に期待しうるものである。

WeOrA1232:唯一承認されたfusion inhibitor というのはT20であるが、ただし服用効果及び製造コストなどの欠点もある。これらに対し小分子化合物からhigh-throughput assayでfusion inhibitorを探し出したのはこの発表である。これらの化合物は gp41の疎水性の部分に特異的結合し、fusion 活性中心の形成を阻害する。

WePeA5639:同じくIntegrase 阻害剤として発表された報告である。Nontoxic ベツリン酸の誘導体がIntegrase反応の中、3’processingを阻害した。

ThOrA1397:HIV-1の潜伏と再活動の間に宿主側の遺伝子発現変化について報告である。有意に変動した遺伝子の中にはHIV-1複製及びlytic replication に関与する遺伝子が含まれていた。感染細胞への潜伏と宿主の関係に新しい視点を与えた。

MoOrA1051:ウイルスの刺激を受け、interferon-g とTNF-aを産生するCD8+ T cell subsetは HIV-1 感染細胞へのキラ 効果を優先的に関与していると明らかになった報告である。このCTLの誘導はHIV-1の複製をコントロールできると示唆された。

会議の感想

今回、会議に参加し、各分野の参加者の方々と話しできる機会に恵まれた。臨床やエイズ予防の第一線で働いている先生や看護師さん、そしてNGOの方からいろいろなことを聞き、エイズの深刻さ及び予防教育の方法などに関してより深く認識できた。この貴重な機会を与えてくださいました(財)エイズ予防財団に心から感謝申し上げます。