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第15回国際エイズ会議参加報告書

東京大学医学系研究科医科学研究所先端医療研究センター感染症分野大学院生 朱 大勇

 

はじめに

第15回国際エイズ会議はタイの首都バンコクで開催され、約20,000人の参加者による大きな会議であった。会議のテーマは「万人へのアクセス」。知識情報、予防治療などすべての人に提供できるようにする目的だった。会議では基礎、臨床、疫学、社会問題、政策など5トラックに分かられている。会議では国際協力をめぐる論争が焦点となり、特に先進国でよく使われている薬をどやって開発展途上国に提供するかが議論された。また、抗HIV薬の3剤併用で抗HIV治療効果が著しく上がるという研究が多く報告された。

自分の研究報告

Influence of Single-nucleotide polymorphisms of the multidrug resistance-1 gene on export of nelfinavir from lymphoblastoid cell lines and clinical response to antiretroviral therapy in Japanese patients infected with human immunodeficiency virus type 1

MDR1 蛋白質はリンパ細胞の細胞膜に発現され、薬剤排出ポンプとしてリンパ細胞内HIV プロテアーゼ阻害剤(PI)であるネルフナビル(NFV) の濃度を減らすと考えられている。また、MDR1遺伝的単塩基多型(SNPs)がMDR1 蛋白質の活性に影響するという報告もあった。 我々は異なるMDR1 SNPs遺伝型を持つHIV感染者のリンパ細胞(LCLs) でNFV の排出の速度が違うかどうかを比較した。ABI SNaPshot方法によってMDR1 exonに存在する三箇所のSNPs (MDR1 1236 、MDR1 2677 、MDR1 3435) の遺伝型を確認した。その後、Epstein-Barr (EB)ウイルスを患者の末梢血単核球(PBMC)にトランスフォメーションして得られた細胞(LCLs)を使って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC) で細胞内NFVの排出を測定した。具体的に、我々は同じ量NFVを取込ませたLCLsを無薬物培地に暴露し、細胞からNFV の排出を測定した。結果としてはNFV排出開始120,180分後に、MDR1 3435 C/C 遺伝型を持つLCLs よりMDR1 3435 T/T 遺伝型のLCLsのほうが細胞内NFVの濃度が高いと測定された。この相違は統計的に有意差があった(p=0.04 、p=0.02. Mann-Whitney U test) 。我々はMDR1 3435 遺伝型がHIV感染者の抗HIV治療効果に影響するかどうかも調べた。 しかし、感染者人数(n=50)が少ないので、異なったMDR1 3435遺伝型の患者の間にCD4 細胞数の変化および血中ウイルス量の減少の差が見られなかった。そして、今後大規模な臨床研究は必要である。
専門分野の発表

#TuOrA1105:RANTESのプロモーター単塩基多型(SNP)-403A/G、-28C/GがHIV感染の病態を修飾することを明らかにした。また、これらのSNP遺伝型の頻度は人種によって違う。本研究は中国人のSNP遺伝型を決定し、HIVの感受性および血中RANTEの量を調べた。結果:中国人の-403G頻度は他の人種と違い、-28G頻度は他の人種より高い。非感染者よりエイズ患者は、-403G対立遺伝子およびhaplotypeI(-403G/-28C)の頻度が高い。無症状の患者より徴候的な患者の-28Gの頻度が高い。結論:SNP-403Gを持つ人は、HIVに感染しやすい。また、-28Gが迅速な疾病進行と相関すると分かった。

#TuOrA1107:コレセプターCCR5のopen reading frameに32塩基の欠失のホモ接合体を持つ人がHIVに暴露されても感染しないと分かった。HIVに暴露されたベトナムの麻薬使用者とカンボジア人のHIV感染者のパートナーに対して、PCR、シーケンスでCCR5の変異を調べた。結果:、5種のCCR5変異を見つけた。そのうちの2種の変異はCCR5の低発現、および細胞融合の減少、HIV低感受性に係わると分かった。そして、これらのCCR5変異はアジアの人口中のHIV抵抗性に係わると示唆した。

#TuOrA1108:Vpr の活性の抑制因子であるHsp70の機能を調べた。具体的に、それぞれVpr発現と欠損の293T 細胞でHsp70を発現させた後、MLV Env-psudotyped HIV-1 を293T 細胞を感染させて、HIVの増殖がどうなるかを調べた。結果: Hsp70 の発現はVpr によるG2 期細胞の拘束を減らし、またVpr の核局在化を阻止することが観察された。T 細胞とマクロファージについて、Hsp70 はVpr 発現のウイルスの増殖を抑制した。結論: Hsp70 がVpr の活性を弱めることによって、HIV-1 の増殖を抑える働きがある。

終わりに

会議を通していろんな領域の研究者たちと交流のチャンスを得た。また、口頭セッションおよびポスター展示の場で自分の関心の分野からたくさんの情報を得ることができた。私は主にHIV病態、抗HIV治療効果に影響する宿主の遺伝的多型についての研究をしており、今回の会議ではこのような研究報告が多く発表されていたので、今後研究が進展すれば期待しうるものである。そこで、今後この研究に力を入れ、特に日本人における宿主の遺伝的多型とHIV感染者・エイズ患者の病態、治療効果の関係についての研究を続きたい。最後に、今回の貴重な機会を与えていただいた(財)エイズ予防財団に深く感謝申し上げます。