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第15回国際エイズ会議参加報告書

国立病院機構九州医療センター免疫感染症科医師  南 留美

 

・ 専門分野でのセッションの概要
担当させていただいたTrack B (Clinical research,Treatment and Care)について概要を述べたいと思います。Track Bはポスター発表を含め。かなりの演題が発表されていました。治療法の進歩と共にHIV感染者の生命予後が改善されてきており、今回のエイズ会議においても、(1)新しい治療法、治療薬の開発、 (2)ARVに伴う副作用への対処、(3)HIV感染に伴う合併疾患について、の報告が多くみられました。(1)においてはCCR5antagonistであるEnfuvirtideについての評価、新しいCCR5antagonistのUK-42.857についての報告、STI(structured treatment interruption)、IL-2投与療法の成績(ESPRIT)の報告がありました。また、最近日本でも承認されたatazanavir(ATV)やtenofovir disoproxil fumarate(TDF)により可能になったI日一回投与法を始め、TDFを組み合わせた種々の治療プロトコールの評価についての報告も多くみられました。(2)においては、ARVによる高脂血症におけるATVの評価、リポジストロフィーに対する成長ホルモンやビオグリタゾンの効果、リポジストロフィーを最小にするためのARVプロトコールの研究、骨粗鬆症、骨壊死についての報告がみられました。(3)においては、日本でも問題になっているウイルス性肝炎の合併について、HBVではTDFの抗HBV効果、HCVではpegylated-tnterferonとribavirinの効果についての報告がありました。またCD20陽性非ホジキンリンパ腫に対する抗CD20抗体療法の高い治療効果についての発表もありました。一方、開発途上国において特に問題になっている母子感染(MTCT)や、resource limiting countriesにおけるCD4測定法の開発についての研究報告も多数みられました。

・ その他参考となった研究発表の内容と理由
Access for all、 3 by 5といった今回の会議のテーマとは若干、離れているのですが、やはりNovel HIV Therapyのシンポジウム(Sy11)は、現時点ですぐに治療に直結するわけではないのですが。ワクチンに遺伝子(IFN-??gene等)を組み込む治療(TuSy172)やRNAiを用いたHIV増殖抑制(TuSy173)、Toll-like receptorやfusion protein、adaptor proteinをtargetにした治療、personalized therapyとしてlipodystrophyに関与するTNF-αやAbacavirアレルギーに関与するHLA B5701をtargetにした治療(TuSy174)等は今後の治療の方向性を考える上で参考になりました。また抗ウイルス効果のある陰性荷電をもつhuman lysozymeの大量生産法の開発 (WePeA5628)の発表では、コンドームとの併用により、安くて安全で効果のある感染予防が期待できるのではと思いました。その他、レモン、ライム果汁、オリーブの葉エキスの抗HIV効果についての研究には、地域の特色が出ていて興味をひかれました。

・ 選考基準となった会議における公的役割の成果
今回、「Elevated serum levels of RCAS1 are associated with immunological prognosis in HIV-1-infected patients」(血清中のRCAS-1濃度はHIV?1感染患者における免疫学的予後と関係する)というタイトルでポスター発表を行いました。
RCAS1はもともと腫瘍マーカーとして発見され、種々の悪性疾患の予後を反映すると言われています。一方、アポトーシス関連因子でもありT細胞やNK細胞など、RCAS1receptorをもつ細胞にアポトーシスを誘導すると報告されています。そこでHIV-1感染患者におけるT細胞のアポトーシスに関与しているか調べるため、患者血清中のRCAS1をELISA法にて測定しました。その結果、HAART導入後、CD4の回復が不良の患者では良好の患者に比べRCAS1が高値であることがわかりました。このことは何らかの形でRCAS1がHIV-1感染患者のT細胞のアポトーシスに関与していることを示唆すると考え、今回の会議で報告させていただきました。

・ 会議の成果を国内で還元する具体的計画
今回の会議で発表された様々な研究は、今後、臨床を行っていく上で直接応用出来るものも多く見られました。特に日本で承認されて日が浅いATVやTDFについての知見は、今後、患者さんの治療を進めていく上で非常に参考になりました。
私自身が発表させていただいた研究に関しては、HIV-1患者血清中のRCAS1測定の症例数を増やし、様々な病態(免疫再構築症候群、long-term non-progressor等)での検討を重ね、病態への関与、意義をさらに検討していく予定です。また、その結果を国内での学会にて報告するとともに論文として発表していく予定です。

・ 会議の感想
今回が初めての参加でしたが、多くの国の多くの職種の人々が様々なテーマで論議するという、今までに参加してきた学会とは全く異なり、毎日が驚きの連続でした。特に、今日問題になっている、アフリカ、アジアでの爆発的なHIV-1感染者の増加に対する、その地域の人々の真剣な取り組みには、感銘を受けました。日本でも年々、HIV-1感染者が増加しており、私の勤務する病院においても明らかにHIV-1感染者が増加しています。予防啓発活動の大切さを改めて実感しました。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。