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第15回国際エイズ会議参加報告書

慶應義塾大学文学部訪問研究員  Genaro Castro-Vazques

 

・ 専門分野でのセッションの概要

D02. Quality of life and well-being of PWAs
  エイズ患者の生活の質について議論されたセッションだった。患者が薬を飲み続ける戦略について考えさせられた。社会及び経済的要素に基いて、患者の生活を見直すことに関する議論が行われた。さらに、HAARTの時代において男性同性愛者と自殺に関する経験が語られた。

D04. Involvement of people living with HIV/AIDS
  このセッションでは、HIVに感染している人がAIDSの予防教育と疾病政策に対して、どのように有効的な教育参画ができるかが議論された。被差別とスティグマを戦うこと、また感染者のEmpowermentとより活発な参加が必要であるということが示された。

Sy04. The important role of people living with HIV/AIDS (PLWHA) in decision making and response to the pandemic-?“inclusivity vs. tokenism”
  このセッションにおいては、エイズに関する政策がHIV感染者のためになっているかどうかが活発に議論された。特に、今回のエイズ会議の開始式でのドラッグ・ユーザーの感染者の発表の時、すでにタイの公衆衛生省の代表などは退席していたため、エイズ会議の代表者のエイズに関する政策はTOKENISM(建前主義)であるのではないかという疑問が提示されていた。

D08. Sexual violence, trafficking and HIV/AIDS
  幼児期の虐待、性的暴行、暴力は、HIVに感染する確率を高めるのかどうかが、このセッションの議論だった。M. C. Smith はハイチにおける母体健康とHIVに関する発表を行った。Smithの発表では、貧しさと暴力のために母子健康と家族計画を達成することはできず、性感染症が増えるということが示された。

SB216 Making sex work safe in Asia and the Pacific
 このスキルビルディングセッションでは、セックスワーカー(sex worker)の教育者としての役割が強調された。より安全なセックスワーク(sex work)をするための、具体的な教育介入の現場を見学することができた。アジア太平地域においてセックスワーカーの言葉による壁のため、セックスにおける安全性を保つのは難しい。しかし、セックスワーカーによる教育的な介入によって、言葉の壁を超えることができるらしい。”Don’t let language barriers stop your voice”(言語の壁によってあなたの声が届かないことはない)というメッセージが強調された。

Sy15 Reproductive health: Vital for an effective response
 国連人口基金による提唱で、このセッションにおいてはリプロダクティブヘルスに関する議論が行なわれた。性感染症とリプロダクティブヘルスの関係についての研究に基いて、エピデミックと戦うための性教育の必要性が強調された。スウェーデンのLennarth Hjelmakerによる発表では、既にリプロダクティブヘルスとエイズに関する資料、ガイドライン、宣言書、発表、告白が十分に作成されているが、コンプライアンス(compliance)がないため、状況が良くならないということが報告されていた。

CO8 Do we have a choice? HIV risk among MSM
 Barebacking and the Internet(コンドームをしないセックスとインタネット)という発表があり、非常に興味が深かった。インタネットを通して研究することによる、様々な方法論と倫理的問題点があげられた。最近、男性同性愛者の間でコンドームをしない性行為が見られるということが述べられ、このような研究が今後期待される。Cybersex(コンピュータを使用してセックスすること)と言われる文化が近年流通しているため、インタネットを研究対象として見る必要があるかもしれない。

Sy22 Challenging exclusion and stigmatisation: access for mobile and displaced populations
 アジアにおける人身売買、移民、出稼ぎに関する現象の問題点が挙げられ、Irene Fernandezの発表はとても勉強になった。私はこのセッションに、友人の在日ラテンアメリカ人と一緒に参加したが、発表における言語の壁のために途中でこのセッションを退席しなければならなくなった。エイズと移民に関するセッションでは、通訳がないと当事者としての移民者に対して差別を助長するおそれがあると思った。

SB401 Beyond migration: empowering migrants against HIV/AIDS
 このスキルビルディングのセッションでは、HIV/AIDSにおける移民者のための予防教育プログラムの作成と実施が目標にされた。ネパールにおいて行われているエイズに関する研究が事例として発表されたが、常識的なことが多くて、あんまり面白くなかった。

SB401 Listening our sexual voices ?addressing the sexual and reproductive health (SRH) needs of HIV positive
 HIVに感染している人々のリプロダクティブヘルスに関する議論が行なわれた。HIV陽性の人とHIV陰性の人の比較に基づいて、セックスに関する抑圧と要求が明らかになった。国籍と出身によって異なるHIV陽性の人のリプロダクティブヘルスに関する権利について述べられた。HIV陽性の人のリプロダクティブヘルスに関する権利を保護する具体的な教育的戦力があげられて、とても勉強になった。

 

・ 会議の成果を国内で還元する具体的計画

  慶應大学でのエイズに関する研究班の樽井班で、会議において学んだ経験と情報を発表する。HIVに感染している人々のリプロダクティブヘルスに関して集められた情報を、個人的研究におおいに利用する。個人的研究の成果は、日本エイズ学会と第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議で発表する。

 


・ 会議の感想

  今回の会議では、革新的な研究成果が少なかったため、期待が裏切られた感じがした。コミュニティーに関する報告者が述べていたが、”Sex, lies and AIDS Conferences”(セックスと嘘とエイズ会議)と言う発言は、今回のエイズ会議の状況を的確に表しているように思われた。