HOME >> 資料室 _ 関連学会情報 >> 第15回国際エイズ会議(バンコク)/2004年 >> 参加報告書

第15回国際エイズ会議参加報告書

特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター(リサーチレジデント) 伊藤麻里子

 

<はじめに>

  バンコク空港に到着すると、第15回エイズ国際会議のシンボルである赤色の象の看板が空港内に大きく掲示されているのが目に飛び込んできた。国際会議のボランティアたちが、会議参加者を温かく迎えてくれた。空港から市街地に向かう大きな通りには商業広告に負けないくらいの大きな看板が貼り出されていた。会議参加者として、迎え入れられているという雰囲気を十分に味わうことができた。また、会議全体への期待も大きく膨らむことになった。今回が初めての国際会議参加となる私にとって、ひとつひとつのことが驚きであり、刺激的な事ばかりだった。

  幸運にも私はポスター発表の機会を与えられ「日本における外国人AIDS患者・HIV感染者・家族の現状と他機関との連携(The social services for PWH/A and their families in Japan and cooperation between NGOs and other services)」について内容、グローバルビレッジ、ユースラウンジで行った日本の若者相互の啓発プログラムの実演・意見交換・交流について報告する。

 

<ポスター発表>
 ポスター発表した「日本における外国人AIDS患者・HIV感染者・家族の現状と他機関との連携」では、PWHAとその家族110名(うち外国人20名)についての福祉サービス・諸機関との連携状況について検討した結果を報告した。まさしく今回の国際会議のテーマである「ACSSES FOR ALL(援助やケアを誰でも利用できるように)」に繋がる内容であった。日本ではHAART療法の導入によりHIV感染症は慢性疾患となりつつある。寿命までを含め、生活の質が課題となってきている。HIV感染者の生活の質に大きく影響すると考えられている福祉サービスの現状と、その内容と課題を明らかにすることを目的として、2000年5月~2003年12月にNGOのHIVと人権・情報センターの2名のソーシャルワーカーがサポートを開始した、感染者・家族110名(感染者本人54名、外国人20名)の主訴、医療・社会福祉サービスの利用状況と、関係機関との連携状況について検討した。

  社会福祉サービスの申請では、窓口での差別やプライバシーにたいする不安を対象者全員が抱えており、手続きの代行や付き添いなどのサポートを行った。(身体障害者手帳の申請31名、医療費の公費負担申請30名、医療費以外のサービス申請25名、障害年金申請16名、税金控除14名)ソーシャルワーカーが窓口担当者と連携を図ることで、感染者・家族のプライバシーが守られるだけでなく、迅速に手続きを進めることができた。また、診療だけでなく社会福祉サービス等の利用制限のある外国人へは、関係機関(入国管理局10件、外務省8件)との連携を図り、法律や制度の整備などについて働きかけを行った。また、外国人のほとんどが発症まで感染に気づかないケースも多く、検査や治療・サポート等の情報はかなり不足していることが明らかになった。

  NGOと行政・医療機関など関係機関の連携が進むことで、感染者の生活の質がより高まることが予測される。サポートの開始は、電話相談を通して面談へと繋がることが多い為、NGOの電話相談は感染者が社会福祉サービスを得るための窓口になりえていると言える。

 ポスター発表を通して、アメリカ・中国・タイ・香港・ブラジル・ドイツなどの国の人々と意見交換をすることが出来た。日本のPWHAにたいする福祉制度については、福祉制度の代行システムは、特別な配慮がされていてすばらしいとの意見があった。(その背景には薬害エイズ裁判があり、HIVの身体障害認定にはPWAの大きな働きがあり実現したことも、日本の特徴として伝えることができた。)また、経済大国で教育的にも進んでいる日本にとって、AIDS問題はそれほど深刻な問題なのかという質問もあった。抗HIV薬が感染者に行き届かず死亡率の高い地域から見ると、日本は基本的な条件はクリアできているように日本は見えるようである。日本が抱える問題点として、国民がAIDSにたいして無関心であり、自分の問題と感じている人が少ないこと、特定の人の病気というスティグマが、感染者にたいする差別を助長していること、感染者は確実に増えているにも関わらず、全体ではまだ検査経験者が少ない現状などを伝えた。国際会議で日本の発表が少ないことからも、日本の現状は他国からは見えにくいというのが、ポスター発表での意見交換で感じたことだった。

 また、バンコク都庁保健局のAIDS/NGO担当者と話をする機会を得て、タイでの若者への啓発についての話を聞くことができた。タイでは若者への啓発は全国的に保健局と教育関係が一緒にチームを組んで行っており、(日本で言えば厚生労働省と文部科学省がチームを組んでいるということになる。)小学校から始まる基本的な保健教育もチームで学校へ出向いて行っているとのことだった。内容としてはAIDSの基礎知識と予防方法としてのコンドーム教育であり、教師の中にはコンドームを教育することに難色を示す人もいるが、大半は必要なことと認識されてトラブルはほとんどないとのことだった。

 

<グローバルビレッジ>

  国際会議場の中には、グローバルビレッジというNGOのブースやコミュニティマーケット、ステージなどがあり会議の登録証がなくても入ることが出来る大きなスペースがあった。色々なNGOなどがパフォーマンスやワークショップを行っていた。

  私はHIVと人権・情報センターの中で若者相互の啓発プログラムに関わっていることもあり、若者への啓発事業への取り組みを行うNGOをいくつかたずねた。

  パソコンソフトを作って学校での授業に活用しているNGOや、絵とクイズによるビンゴゲームなどによる啓発を行うNGOがあった。また、農村地域で若者がグループを組んで他の若者達と交流を図りながら健康教育と性教育を行っているNGOなどもあった。農村地域でこれまで行われていた健康教育をベースにして取り組まれていて、若者だけに対象を絞ったものと、誰にでも提供しているものがあった。

 

<ユースラウンジ>

  グローバルビレッジ内にある、カフェやインターネットコーナー・フリースペースから成り立っている「ユースラウンジ」は主にタイの若者のグループが運営していた。ビーズクッションが置いてあるリラックスして過ごせるフリースペースは色々な人と交流できるスペースだった。そこでは常時、Tシャツの作成を通して寄付をする活動を参加者に呼びかけていたり、AIDSに関するビデオが流されていた。このスペースを使ってHIVと人権・情報センターが開発したYYSP(ヤング・フォー・ヤング・シェアリング・プログラム)を紹介するDVDを上映し、英語版にアレンジしたYYSPを実施する機会を得ることができた。

 

<YYSP(ヤング・フォー・ヤング・シェアリングプログラム)の実演>

  YYSPとは感染予防と共生を考える参加型ワークショップであり、日本国内ではこれまで約200回、約2万人以上にたいして行ってきた。保健所・教育機関等とNGOが連携して実施しているプログラムである。プログラム内容としては世界と日本のAIDSの状況、感染についての基礎知識、性行為における感染の可能性の有無、セーファーセックスの講義、コンドーム実習、愛情表現ワークや共生ワークなどがあり、対象者によってオーダーメイドでプログラムしている。

  今回は、感染についての基礎知識、性行為における感染の可能性の有無、セーファーセックスの講義、コンドーム実習などを約1時間程で行った。プログラムは基本的に参加型であり、基礎知識などを考える際にも「体の外に出る体液は?」などの問いにたいして参加者たちは英語・タイ語を交えて答えてくれた。ぬいぐるみを使って性行為の中での感染の有無を考えたり、ペニス模型を使用してコンドームの装着方法を実演していくと関心を持って参加してくれていた。

  ユースラウンジに集まっていた若者達は、タイの様々な地域の若者であり、英語の出来ない人も多かったが、参加者との距離が近かったので、ぬいぐるみやコンドームの実物を使い、装着方法などを説明して行くと具体的な質問なども出てきて、交流しながら進めることが出来た。

 

<神戸会議に向けて>

  非常に印象に残ったのは、英語版YYSPの準備を別の会場で行っていたところ、会場ボランティアのタイの若者達が関心を示して手伝ってくれて、小道具の説明文をタイ語に訳してくれたときのことである。そのまま、会場ボランティアと一緒になってコンドームの装着の練習を行うことができ、たくさんのボランティアとも交流することができた。

  神戸会議では、たくさんの会議参加者をNGO・ボランティアとして迎え入れる立場となる。今回の国際会議に参加できたことで経験したことをいかして、神戸会議参加者に快く会議に参加してもらえるように協力していきたいと感じた。

 

謝辞

  最後に、このような貴重な機会を与えていただいた(財)エイズ予防財団にたいして深く感謝し、心からお礼申し上げます。今回のことを広く一般の方達にたいしてお伝えしていきたいと思います。ありがとうございました。