HOME >> 資料室 _ 関連学会情報 >> 第15回国際エイズ会議(バンコク)/2004年 >> 参加報告書

第15回国際エイズ会議参加報告書

せかんどかみんぐあうと代表  大石敏寛

 

 私自身、HIV感染者として10年以上エイズの活動をしてきた立場から、今後のエイズ対策に必要なことはなにかを、今回の会議で見てきました。日本国内においては、予防について、あまり重要視されていない感染者からの提言ですが、今回の会議では、感染者・患者の担う役割についての議論がありましたので報告いたします。

■ Positive prevention - positive sex

  これまで、予防について多くのことが議論されてきました。特に、世界中から多くの人々が集まる会議では、具体的な話も飛び出しました。この「Positive prevention - positive sex」では、特に、感染者の側からの視点で、予防とセックスの議論がなされました。

1)性の否定
 米国のTerje Anderson氏は、自分の経験を踏まえ、これまで、HIV感染者の性行動は、世間から否定的に扱われてきたという話がだされました。それは、HIVの感染が予防をしないで行われる性行為によってもたらされたからでした。

2)置かれている状況の違い
 オーストラリアのSusan Paxton氏は、アジア地域で行った人権調査から、アジア地域における感染者の置かれている状況についての報告がありました。この調査では、性別によって置かれている状況が異なるという報告でした。例えば、インド、タイ、インドネシア、フィリピンの4カ国で行われた調査では、男性の46%が独身であるのに対し、女性の50%は、夫を亡くした未亡人であったとのことです。そして、産婦人科を訪れた45%の女性は、今でも妊娠を避けるようにアドバイスを受け、妊娠している場合は、中絶を強要されたりする場合も少ないとのことでした。感染することで、家族からの財政的な援助を受けられなくなった男性は、5%であるのに対して、女性は11%という結果。

3)二次感染の責任
 タイのOod Yuppadee Chinna氏は、二次感染の責任は、感染者側の責任のみに注目するのではなく、非感染者側も適切な配慮を行うべきだという発言でした。タイでは、感染者・患者への治療が少しずつ広がってきており、それによって、感染者は健康な状態で生活を送るようになってきているとのことです。そして、それによって、これまで、否定してきたセックスの必要性について認識しはじめてきており、今後、今まで以上に活発な性行動を行うことが予想されると示した。

4)感染者のセックス 罪と責任
 会場との討論では、多くの参加者から、自分のHIVステイタス(感染していること)を開示するかどうかという問題に関する発言が相次ぎました。特に、イギリスやアメリカ、オーストラリア(ただし、オーストラリアの場合は州によって法律が異なる)からの参加者からは、自分が感染しているということを開示せずにセックスを行うことで、訴えられ、イギリスでは投獄されている例(現在5名が収監されている)も存在するため、事実上、自分が感染している事実をセックスのパートナーに伝えることが強制されていることが伝えられました。そして、

  1. HIV感染者・AIDS患者が、自主的な情報開示がHIV予防につながることを認識すること、
  2. ただし、感染していない側も同じように感染の責任を負担する必要があること、
  3. 更に、感染者・患者にとって、自分が感染していることを相手に伝えることは、感染者・患者自身の性的なニーズを満たすためにあり、そのために交渉能力の開発が必要である。

というまとめがありました。

5)考察
 日本においても、感染のひろがりが問題になっています。ひろがりの原因は様々ですが、人々の関心の薄さの中には、感染者・患者が性行為を自粛することで、解決するのではないかという意識もあると考えられます(以前、行った調査でも、感染者の存在は受け入れられるが、感染者が性行動を行うことに対して否定的だという調査結果が出た)。そして、今でも、感染していることを告白することで、感染者自身の性的な欲求を妨げる原因に結びつく例も少なくありません。

  注目をしたいのは、感染者が自分のHIVステイタスを相手に伝えることで予防につながるという見解を示したことですが、それは、感染していることが性的欲求を満たす妨げにならないことが前提だと言えます。そのために、感染していない人々の予防に対する責任感が重要であると考えます。
そして、感染者・患者が性的パートナーにスムーズに伝えるための交渉能力をいかに持ってもらうかも、今後の課題だといえるでしょう。相手に伝える交渉能力は、成長過程の中で教育の中で身に付けていくものであり、感染を伝える交渉能力は、その応用編です。そのためには、感染者にパートナー告知の必要性を説くだけでなく、スキルアップのためのトレーニングを具体的に示す必要があるでしょう。

6)神戸会議に向けて
 エイズ予防の問題は、感染者側の意見も重要だと考えられます。この「Positive prevention positive sex」の議論は、神戸会議でも是非行いたい。