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第15回国際エイズ会議参加報告書

レッドリボンさっぽろスタッフ 大西奈穂
(北海道医療大学大学院看護福祉学研究科看護学専攻成人看護学分野 修士課程)

 

 タイ・バンコクで開催された第15回国際エイズ会議で、私が注目した点は、

・ 各国における人々、特に若者のHIV感染の認識
・ 各国の若者へのエイズ教育プログラムや地域社会の支援
・ 各国における日本のHIV感染者・エイズ患者動向と対策への評価

であり、それらから日本でのエイズ教育、支援のあり方を検討することであった。

 若者がHIV感染をどれほど自分の問題として捉えているか。札幌では、感染者が比較的少ないためか若者のエイズへの関心や危機感は非常に薄い。感染者の比較的少ない地域での予防活動をどのように行えば若者に危機感を持ってもらうことができるのかと、日々の活動を通じて考えることが多いため、この点に注目した。アフリカ、タイ、アメリカなど感染者の多い地域から参加したYouthの発言は、彼らの危機感や切迫された状態を感じるものであった。

 Youthのセッションの中で、Henry Hudsonというウガンダから参加した男性は、(1)若者は正しい情報に欠けリスキーな性行動をとりやすい、(2)性に関して率直に話すことへの抵抗が若者にも成人にもある、(3)若者が必要とする治療に応じる健康サービスが不足している等若者が脆弱な存在である理由をあげ、「PWHAをケアできる組織を大学内で作るべきだ。学校でのエイズ対策を具体化させよ」と声を大きくした。教師へのHIV/STIや性に関する教育・訓練と、学生主体のHIV/AIDSに関する組織(PEER EDUCATIONなど)を立ち上げる必要性を述べており、この点は日本でも同様に考えられていることで共通している。しかし、学生自身が求めて訴えているのと、外野が訴えているのとでは、やはり危機感が違う。

  その男性に日本のエイズ動向を説明し、周囲に感染者がいない地域での予防啓発についての意見はないかと質問したが、明確な意見や回答は得られなかった。パキスタンから参加していた医師に同様の質問をしたところ、この医師の住んでいる地域でも感染者がそれほどおらず、焦っているのは医療関係者だけであると答えた。

 結局のところ、若者自身が危機感を感じたのも、自分が感染しているか周囲に感染者が多くいたからである。HIV感染者が比較的少なく危機感が薄い地域での予防教育は、エイズだけに焦点を当てても身近さや危機感を感じることは出来ず、教育の効果は少ない。

  日本では学校保健と母子保健事業が連携して‘健やか親子21’と題した思春期保健に取り組みをはじめ、またNGOや一部の教職員、保健医療従事者の地道な活動でエイズ教育が行われている。自らの性や体を守ることに脆弱でありながらセックスをする機会を持つ十代~二十代前半の多くの若者が集合する学校でのエイズ教育/健康教育を根付かせることができれば、性感染症だけでなく生活習慣病や精神疾患など様々な病気への予防にもつながっていくと考えられる。

  しかし現在のところ、長期間・定期的に関わりを持つことは難しく、一回の授業や講演を聞くだけで終了したり、対象の実態調査や評価を十分にできないのが実情であろう。

  私の修士論文では、エイズの授業や講演の機会をより効果的なものとするために、HIV感染予防の講演の参加者に、事前に、自らのHIV感染をどう認識しているか、実際に予防行動をとっているかという内容を調査して、その結果に基づき講演内容をアレンジできるような質問紙を作成している。

 日本で大々的な感染爆発が起こる前に、HIV感染やSTI、ひいては病気全般への危機感と自己管理能力をもたせる健康教育と、今日にでも使える具体的なネゴシエーションスキル(セックスの断り方や、コンドーム使用をめぐる交渉など)を共に考えたり、正確なコンドームの使用方法を教育する機会をできるかぎり広げていくことの重要性を再確認した。質問紙を完成させ、当団体の講演活動やワークショップで実践していくことが微力ながら今の自分にできることであると考えている。

 NGO展示館の前で行われていた「Condom Project」という団体(http://www.thecondomproject.org)のブースは活気があり、すぐにでも札幌でも使えそうな内容であった。コンドームの包装ビニールの片面におしゃれな和紙を張り、ピンをつけてバッチにするのだが、もう片面をひっくり返すと中のコンドームが見えるため、アフリカなど人々にコンドームが知られていない地域でコンドームの普及活動をする際にきっかけになるとのことであった。また、Gloval Villedgeで展示されていたコンドームのドレスなども、とても美しいデザインで目を引くものだった。

         
 これらの企画は札幌や北海道で開催されるライブやイベント、学校での学園祭やイベントの時に応用できるし、なにより堅苦しくなく、おしゃれにコンドームに触れたり、性に関して話すことができるきっかけを提供できると企画だと思った。学生同士が作業をしながら楽しい雰囲気で性について話すことができるというのは、医療系の学生に集中して行われがちなピア・エドゥケーション等に、まったく違う分野の学生を巻き込むチャンスにもなるのではないだろうか。早速、当地で実施できる機会を探っていきたいと思うし、次回のICAAPでもこのようなデザイン性の高い作品を和風にアレンジして作成できれば面白いと思う。

  最後になりましたが、初めての会議参加でしたが多くの日本人とも知り合うことができました。これから是非とも横のつながりを強め、この問題への取り組みを続けていきたいと思っています。このような機会を与えて下さり、本当にどうもありがとうございました。