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第15回国際エイズ会議参加報告書

JaNP+ 神谷浩樹

 

1)第15回国際エイズ会議参加の目的

 私にとって、第15回エイズ会議の参加の目的は、大きく以下の3つにわけられる。
1)JaNP+ブースでの接客・対応
2)セッションの参加
3)「HIV/AIDSの現在」の体感

 JaNP+ブースでの接客・対応は、JaNP+のメンバーとして派遣されているため、当然の義務ではあるが、世界各地から参加した人々と直に接触できる、貴重な機会だと考えている。ブースでの接客の合間を見て、今後のJaNP+の活動に活かせるようなセッションに積極的に参加して知識を吸収し、また他のブースや会場に日参することで、様々な地域におけるHIV/AIDSの現状を肌で感じることが、今回のエイズ会議に参加した目的であり、またミッションでもあった。

2)JaNP+ブースでの対応

 シンプルで、特に目を引くような配布物もないJaNP+のブースではあったが、大変多くの方々に来訪していただけた。

 やはりアジア圏の方が多く、それぞれ違った問題意識を持っておられた。私たちが想像もしてなかったような質問を投げかけられる度に、自らの視野の狭さや社会・文化の違い等、蒙を開かれる思いがした。確かに日本は他のアジア諸国と比較して、治療や社会制度など様々な面で進んでいるが、私たちが彼らに学ばなければならないことはまだまだたくさんあると、改めて感じた。

 また、JaNP+が準備した「Treatment Litteracy for PWA/PWH」は非常に好評だった。これは、陽性者が病気についての知識を身につけ、Self-esteemを下げることなく、積極的に治療を進めるための、パワーポイントで制作したプログラムである。元は日本人向けに日本語で制作したものであるが、今回のために英語版を準備し、「これは日本向けに制作してあるので、それぞれの国の事情に合わせて適宜修正して利用して欲しい」の但し書きを添えた。PCでプログラムをプレゼンテーションしていたので「ぜひ分けて欲しい」とたくさんの希望を頂いたが、十分な数のCD-Romを準備していなかったので、その声に応えることができなかったのが残念でならない。

 逆に、JaNP+は欧米諸国からの参加者の興味は特に引かなかったようで、来訪者の数が非常に少なかった。彼らと経済や医療の水準が同じである日本には、特に関心を寄せることもないのだろう。ただ、Fund Raisingの問題だけはどの国のNGOにとっても一大事であり、貴重な欧米からの来訪者は全てその件について私たちにいろいろと尋ねてられた。Fund Raisingについて日本はまだまだ遅れていると再認識させられるばかりであった。

3)セッションの参加

 酷暑の中、慣れない異国でJaNP+のメンバーもだんだん疲労がたまっていき、参加したいセッションも出られないこともあった。だが、一つも出ないで帰国するのはあまりにももったいない。なんとか力を振り絞って他のメンバーにブースの番を頼み、「Prevention, access and choices: MSM in a developing country context」のセッションに参加した。

 アフリカ南部・西部、南アジア、ラテンアメリカにおいて、MSMの置かれている現状と、今後の対策をそれぞれのプレゼンテーターが説明し、質疑応答が行われた。先進国での状況ばかり伝わってきていて、その他の地域ではまるで存在しないかのように扱われてきたMSMだが、実は発展途上国でもMSMは先進国同様に存在し、文化的にDiscriminationやStigmaが非常に強く、また警官にレイプされた経験のある男性が多いなど、目を剥いてしまうような報告が淡々とされていた。

 上記の地域で、MSMに対する啓発や支援活動はようやく端緒についたばかりだという。今後の活動報告を楽しみに待つと同時に、文化の多様性やHIV/AIDSの持つ意味など、非常に多くのことを考えさせられたセッションであった。

4)「HIV/AIDSの現在」の体感

 地域差を考慮せずにHIV/AIDSを語ることは意味がない。セクシャリティの文化的コンテクストや医療水準など、それぞれの地域にそれぞれの問題がある。それらの問題を会議場で実感できたのは非常に大きな収穫であった。

 例えば、アフリカ圏からの参加者は男女比率がほぼイーブンに見えたのに対し、先進国はMSMの問題が大きいのか、男性が多いような印象を受けた。また、タイで感染者のターミナルケアをしているお坊さんとお話しする機会があり、宗教的なIssueもかいま見ることができた。

 また、経済力や医療の他にも、政治的な力が必要であることを象徴するような出来事があった。開会式でタイの感染者がスピーチをする予定だったのだが、その前に全てのVIPが演説し、エンターテイニングな出し物も終わり、あたかも開会式が終わったかのように演出され、大半の参加者が帰ってしまった後、ようやくタイの感染者のスピーチがなされたのだ。スピーチをした方はDUで、タイのタクシン首相はHarm Reductionを進めるとは言いつつも、昨年「対麻薬戦争」で密売人や利用者を2500人も殺害したことで名が通っている人物。この演出とスピーチの順番はタクシン首相の意に添ってこのようになったのだと、会場では誰もが話していた。

 HIV/AIDSの問題は政治、経済、医療、文化、性など、あらゆるものを含んでいる。それを、目で確かめ、耳で聞き、肌で感じることができたのは、とても幸甚であった。

5)結語

 NGOのメンバーとして、この会議に参加できたことは、今後の活動に非常に多くの示唆を与えることは間違いない。ブースに見えた方々や、セッション、開会式、PWA Loungeなど、あらゆるところから、視野の広がり、コミュニケーションの技術、「共感」することの意義など、多くのことを学ぶことができた。この経験を元に、JaNP+の活動をより豊かな実りあるものにしていきたい。このような機会を与えてくださった(財)エイズ予防財団に改めて深謝する。