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第15回国際エイズ会議参加報告書

特定非営利活動法人動くゲイとレズビアンの会  鳩貝啓美

 

 はじめに、第15回国際エイズ会議への参加の機会を与えてくださった(財)エイズ予防財団に感謝を申し上げます。6日間の会期、約2万人もの世界各国の研究者、コミュニティ実践者、市民と共に、街の空気同様、熱を帯びた学びのときを過ごすことができました。以下、まず時系列でダイジェストに、後半1つに焦点を当てご報告したいと思います。

 12日は、ゲイ・レズビアン・異性愛カップルを対象に性的健康・リスクに関して、ジェンダーやカップルタイプでの比較をした、米国のベースライン調査報告がありました。(MoPeD3962)特定の関係内でリスクを低く認識する傾向はゲイが最も高く、レズビアンは性的リスクの高い行為を最もよく理解していない、という指摘がありました。関係性に着目した興味深い研究でした。

  この報告は、lesbianやWSW/women who have sex with womenを題名に含む発表9件の1つです。この発表のように女性間の性感染リスクはあるにも関わらず、当事者は正確な認識がなく、研究も目立ちません。今会議のレズビアンに関する発表は、大別して予防介入・包括的サポート実践と、性行為・STD/HIVの実態調査でしたが、「WSWにもHIV予防のニーズがある」という問題提起は、レズビアン/WSWの現状を示すものです。女性間の性的健康の情報収集として、こうした現状を知り、研究発表すらままならないこの対象への探索を進めていく課題を再確認しました。

 13日は、示説演題にて“Research on barriers to accessibility to medical/health services among MSM/gay men in Japan”と題した発表(TuPeD5117)を行いました。保健医療機関とNGOの協力関係を提起した報告ですが、他にこの種の報告の対象としてはユース、CSW、移民が目立ちました。脆弱な対象層へのアプローチとしてわが国には個別施策層の概念がありますが、同様に各国で積極的な議論があることは大変励みになります。発表を通じて、アジアの公衆衛生の研究者やNGOの活動家、南・北米の大学研究者と交流ができ、大変有意義でした。国内の保健医療とNGO連携を検討する上で、これら人的交流を今後も継続し活用したいと思います。

 14日は、精液を飲むオーラルセックスでも感染例がなかったという米国での約1400人の調査データが報告されました(PpC03)。こうした結果は今後議論を呼ぶと思われますが、新たな知見をもとにまたさらに研究が進むでしょう。

  また、中国やスペイン、インド等のMSMの現状を学ぶこともできました(C08)。特にインドの報告では、コンドーム使用の意識についてのベースライン調査が紹介され、約27%がコンドームが嫌い・約24%が使用に無自覚という数字も、固定した相手とはコンドームを使わないという傾向も、日本の実態に近いと感じました。さらにコンドーム使用へ向けた主張スキルの例が示され、私たちが着目してきたコンドーム使用に向けた意識変容や主張スキルの向上といった観点は、国境を越えて共通し、主張スキルの促進に向けた研究を深化できる期待がもてました。

 最後に、一番印象に残った7月12日のSkills Building Workshopについて述べます。 “Training for Adaptable and Effective Intervention with Sexually Minority Youth/Young Adults/YMSM”と題したこのワークショップは、NYのコロンビア大学/HIVセンターのジョイス・ハンター教授が主催したものです。

 ジョイス・ハンター教授はLGBTユースへの介入を長年研究し実践もしている(D.S.W.)、著名なレズビアン研究者です。”Working It Out”という、ハンター教授とCBOとの協力で作られたビデオを用いた介入手法が紹介され、実際に視聴する機会を得ました。このビデオは、10代のLGBへの調査面接を元にした14本のリアルなストーリーから成ります。2,3人の様々な関係の人物が登場し、例えば友だちがドラッグをやろうと言う傍ら困惑するレズビアン、いい雰囲気の年上と若いゲイふたりがセイファーセックスするかどうか、レズビアンとゲイがセックスをするまで(レズビアン感染経路の一つ)の場面などが描かれています。このプログラムは、LGBTユースがストレスフルな人生上の出来事に対処できるスキル、自己決定、関係性、問題解決能力などの発達支援を含めて、予防介入をとらえており、日本でも活用できると思いました。

  私の所属機関ではここ数年この手法に注目をしてきましたが、今回は解説付きで全編を通し、希望者を募っての模擬介入まで見学でき、一層理解を深めることができました。まず、ユースという発達上の理解に加え、LGBTユース特有の心理社会的テーマをカバーし、理論的根拠のあるプログラムの開発と実践がなされていることが、大変参考になる点です。そして、2時間のセッションの中で活用される参加・成長促進/保護するための工夫(情緒の温度計、サンキューカードなど)や、有資格ファシリーテーターの養成に3日間を費やす厳密さも、プログラムの提供に必須の部分と実感しました。

  ひとつのプログラムがCBOとの協力のもとに丁寧に開発され、開発された後もなおきめ細かなフォローをしながら活用を拡げていく努力は大いに学びたいものです。今後はファシリテートについて実践的に学ぶなど、ハンター教授と交流を続け日本の現場に活かしていきたいと考えます。

 今回の国際会議参加で得た情報・経験は、所属機関および他のNGOの方々との勉強会、来年の神戸ICAAPへ向けた関わりなどの中で、還元し拡げていきたいと考えます。