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第15回国際エイズ会議参加報告書

はばたき福祉事業団情報処理担当職員  溝田友里

 

はじめに

 第15回国際エイズ会議における、Track D : Social and Economic Issuesを中心とした報告を以下に行います。

1.コミュニティ

 会議で印象的だったことのひとつに、「コミュニティ」の参画があげられる。ここでのコミュニティとは、感染者、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)、ドラッグ・ユーザー、セックスワーカー、移民労働者などのエイズ独自のコミュニティである。偏見・差別などそれぞれのコミュニティが抱える問題や取り組みが、ポスターセッションやオーラルセッションで数多く報告され、会場も、NGOブースやGlobal Villageなど、コミュニティとコミュニティに関わる市民社会に大きなスペースが割り当てられていた。特にGlobal Villageは、会議の登録者でなくても無料で入場できるようになっており、コミュニティから多くの出展がなされ、展示やビデオの上映、物品の販売、討論会など活動が盛んに行われていた。

 しかし、新聞などのメディアにも取り上げられ多くの批判を受ける結果となったが、開会式では、開会式のスピーカーのうち唯一のHIV陽性者で、タクシン首相の対麻薬政策を批判しているタイ・ドラッグ・ユーザーズ・ネットワークのパイサン氏のスピーチを妨害するような演出が行われた。コミュニティの参加を推進しているはずの開催者側がこのような批判封じの演出を行うことは、会議の取り組みと逆行する残念な行為であったが、逆にこのことで、閉会式で再びスピーチを行うことになったパイサン氏の発言への注目が高まり、また、形だけでない真のコミュニティの参画にはまだまだ課題が残されていることを認識する機会となったように思う。

 一方で、日本のエイズ問題において欠かすことができない血友病というコミュニティに関する出展や報告があまりみられなかった。HIV感染している血友病患者の掘り起こしやHIV感染、HCV感染、血友病と三重の疾患を抱える患者のQOLなど、各国が抱えるさまざまな問題や取り組みについてより活発な議論が行われる必要があることを改めて感じた。

 

2.開発途上国

  今回の会議で印象的だったことの2点目に、アフリカなどの開発途上国からの参加者が多く、活発な活動が行われていたことがあげられるNGOブースやGlobal Villageでの展示に加え、ポスターセッションやオーラルセッションでも多くのプレゼンテーションが行われ、開発途上国におけるエイズへの偏見・差別の実情や、治療薬の不足、人材の先進国への流出などの医療に関する問題、貧困、剥奪、戦争など患者を取り巻く環境に関する問題などと、それらに対する取り組みが報告された。また、先進諸国のプレゼンテーションに対する質疑応答で、開発途上国が自国の困難な状況をアピールする場面も少なからずみられた。このような開発途上国の積極的な参加によって、エイズの問題が開発途上国の開発における重要な課題であることが強調されたという印象を受けた。一方、開発途上国の存在が大きくクローズアップされるなかで、先進諸国が抱えている諸問題についても今後より深い議論を行っていく必要があるように感じた。

 

3.当事者参加型リサーチ(Participatory Action Research)

 当事者参加型リサーチとは、従来、研究の対象者でしかなかった当事者が、調査研究の主体者、すなわち共同研究者として参加し、調査の計画・立案から結果のまとめにいたるまで一貫して当事者と研究者の協議・共同で行うリサーチである。

  今回の会議の、社会疫学的研究における調査研究方法論に関するプレゼンテーションのなかで、当事者参加の調査についての報告もいくつか行われていた。当事者が、単に面接調査のインタビュアーとしてのみ調査に参加するものから、調査の計画・立案の段階から当事者と研究者が共同して行うものまで、当事者の参加の度合いはさまざまではあるが、それらを通じ、当事者が参加することによって対象者から協力が得やすくなったことや、バイアスのかからないより率直な回答が得られたこと、調査の質や妥当性が高められたことなどが長所としてあげられていた。

  当事者参加型リサーチの方式をとることにより、当事者の抱える問題やニーズへの理解が深められ、それらの解決や実践に寄与する調査研究が期待できるとともに、調査の過程を通じて、当事者および研究者の双方が学習し問題意識を高めるというようなエンパワーメントも期待できる。センシティブな内容を扱うことが多いHIV/AIDSに関する社会疫学的調査研究においては、この方式が極めて有効であると改めて認識した。

 

おわりに

 最後になりましたが、本会議への参加という貴重な機会を与えてくださった(財)エイズ予防財団にお礼申し上げます。今後、さまざまな機会を通じて、今回の会議で学んだことを活かしていきたいと思います。ありがとうございました。