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第15回国際エイズ会議参加報告書

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野教授  木原正博

 

(1)会議における公的役割の成果

  今回の会議には、第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(7thICAAP)の事務局長として、基礎医学、臨床医学、疫学、予防、コミュニティ活動、政治的動向など、エイズ問題をめぐる世界・アジアレベルでの最新の知見や情勢を把握し、2005年の7thICAAPの置かれる文脈を的確に把握することを主な目的として参加した。 併せて、会議の開会・閉会式、各種プログラムの細部を調査するとともに、会議出席者に7thICAAPについてのPRや、7thICAAPに対する各団体・組織の支援の可能性を探求することも時間の許す範囲で行った。

 会議では、開会式、プレナリー講演、グローバルビレッジ、トラック別のまとめ報告、閉会式を中心に見聞し、膨大な数の口演・ポスターセッション、多数にのぼるシンポジウムにはできる限り参加した。こうした活動の結果、アジアにおける流行の現状や今後の予測などの疫学分野の最新情報、ワクチンやマイクロビサイド開発、新しい抗ウイルス薬の開発、ジェネリック薬の普及状況や治療効果などの医学分野の最新情報を把握することができた。また、最近WHOの3by5イニシアティブで急速に開発途上国に広まりつつある抗ウイルス治療の展望に対する国際機関関係者間の微妙な評価のずれ、グローバルファンドの活動への様々な評価や国際社会からの援助の遅れ、保健大臣閣僚会議が実現しなかったことに象徴される政治的リーダーシップの遅れ、アジア地域におけるvulnerable集団に対する根強い差別や偏見の存在、国際会議における微妙あるいは露骨なポリティクスの存在などが、理解もしくは実感されることとなった。また、会議出席者に行った7thICAAPのPRに関しては、会議参加者から非常に高い関心を呼び、2000部用意したアナウンスメントのうち1800部を配布することできた。7thICAAPに対する各団体・組織の支援の可能性についても積極的に探求した結果、国際機関や国際NGO、一部の国の関係者との接触に成功し、予期した以上の成果をあげることができたと考えている。

 

(2)成果を国内で還元する具体的計画

 これらの成果は、7thICAAPのプログラム委員会において、7thICAAPをバンコク会議と差別化し、魅力ある会議とするための情報として活用される。具体的には、プレナリーの内容やスピーカーは7thICAAPのプレナリープログラム開発の重要な参考情報となる。また、開会式、閉会式のスピーカーに関する情報は、7thICAAPの開会・閉会式の企画を立てる上で極めて参考となる。グローバルビレッジはバンコク会議で初めて開催されたが、極めて盛況であり、会議と市民やコミュニティを結ぶ、非常に有用な企画であった。7thICAAPでのその取り入れを検討する。また、今回の会議を通して、多くの個人、団体、組織と接触したが、これらのネットワークを通して、7thICAAPへのPRを行い、参加拡大につなげる予定である。

 

(3)会議の感想

 今回の会議は、参加者2万人という国際エイズ会議史上最大の会議となった。今後アジアのエイズ問題に世界の大きな関心が寄せられていることを象徴するものと言えよう。しかし、会議は、刹那的希望の後の破局への不安をことさら押し殺したような、期待と不安がないまぜになった複雑な雰囲気の中で行われたように見えた。3by5イニシャティブでWHOは治療普及というカードを切ったが、その達成自身を危ぶむ声、保健医療インフラの未整備のために生じる耐性ウイルスへの不安、治療が予防対策のリソースを消費し流行拡大につながることへの不安などが渦巻いていた。これまで、多くの国際エイズ会議に出席してきたが、今回の会議ほど、エイズ問題が人類の最大の難題であることを痛感させられた会議はない。また、国際会議のあり方も考えさせられた。高額な登録料、交通・宿泊費と膨大な会議運営費を費やして行うこのような会議以外に、情報交換や政治的コミットメントの舞台はありえないのかについて、今後十分な再検討が必要であると思われる。