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第16回国際エイズ会議参加報告書

慶應義塾大学文学部 
Genaro Castro-Vazquez

「移民とHIV/AIDSに関する情報」

トロントで行われた第16回国際エイズ会議での内容のうち、移民とHIV/AIDSに関するセッションとワークショップを中心とした報告を以下に行う。
『HIV/AIDS and population mobility: Innovative approaches to HIV prevention and care for mobile populations in various regions of the world』と『Migrant, Mobile Populations and Refugees: Key Challenges』 という2つのセッションでは、次の2つがメインポイントとして挙げられた。
一つ目は、現在の移民に関する状況である。

a) 今日、グローバリゼーションのうねりとともに、多くの人間が、この地球上を国から国へと移動している。このような状況の中、必然的に、移民とHIV/AIDSに対する国際的論議が続いている。

b) 移民という言葉ひとつにしても単純に定義づけができておらず、人が移動する理由や要因は複雑化し、多様化してきている。また、資格保持・登録と資格外・未登録の分類が存在する。

c) 移民という存在を単なる労働力としてではなく、人間として、関心を払っていく必要があるだろうという主張に賛成した。移民も人として、権利を持つ。この権利は、個人やグループの基本的な自由や人間としての尊厳を侵害する行為に対し、法的に保障され、保護されるべきものであり、市民権、文化権、経済権、政治権、社会権などあらゆる範囲で、すべての人間に適用されるものである。

d) 入国管理、差別や言語・文化の壁、法的地位、経済的・社会的困難に直面し、公的サービス・社会保障の行き渡らない社会の辺縁に置かれることで、移民の健康問題に対する脆弱性が作り出される。


二つ目は、HIV/AIDSと移民に関わる論点である。
a) 移民・人口移動と同様に、HIV/AIDS も地球規模の問題であることを認識し。さらにHIV/AIDS と移民の問題も注目した。特に、移民の視点から議論がなされ、なぜ移民がHIV に感染しやすい状況に置かれ、AIDSに対してより弱い立場に立たされるのかということを明確にした。

b) 今でも、実際に移民に対して与えられているHIV/AIDS 予防やケアに関わる資源・取り組みは、十分ではない。HIV/AIDS と移民の関係についての関心は、多くの場合、入国してくる移民が国内にHIV を持ち込むという恐怖心に基づくものである。これに対し、多くの移民に関する専門家は、“AIDS”と根拠なく結び付けられる人種差別や負の烙印に対して、憂慮を抱いている。

c) 移民のHIV/AIDS の問題への対応は、排斥的な方向ではなく、保健・医療・予防へのアクセスを促すような移住者に対して協力的な方向へ進んでいかなければならない。そのためには、移民の尊厳を認め、まず、移民が直面するHIV/AIDS に対するリスクや移民の脆弱性を明確にしていく必要がある。移民のHIV/AIDS に対する脆弱性は、移民の生活の中で共有されうる種々の社会的要素である。

一方、Best Practice Models for Service Access Advocacy for Immigrants, Refugees and Non-status PLWHA in North Americaというワークショップでは、タイやカナダで行われている、移民に対する対策や戦略が議論された。移民に対するサービスは十分でないところが多いことが明らかになった。特に、移民に強制的にHIV/AIDS抗体検査を課していることに関して反対意見が述べられた。

国際団体CARAM-Asiaのセッションは、Pre departure programs for migrants focusing on HIV/AIDS informationというサテライトシンポジウムと、Impact of HIV Testing on Migrants and Refugees というチャットセッションで構成されていた。話し合いの中で移民にとってのHIVの課題は、医療へのアクセス、抗HIV剤へのアクセス、強制検査の中止であると提起された。問題点について「外国人が持ってきた病気」という偏見、HIVに感染している移民の強制退去、在留資格がない移民の問題、移民の健康保険の加入、実質的な医療サービスなどについて議論された。