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第17回国際エイズ会議 参加報告書
 

NPO法人 動くゲイとレズビアンの会(アカー)
藤部 荒術

■ 参加目的
第17回国際エイズ会議には、事前に以下の2つの目的をもって参加した 。(1)HIV施策における同性間対策の推進と課題について、全国111の自治体に調査した自治体調査の研究結果の発表、(2)各国のゲイ/MSM(男性とセックスを行う男性)を対象とした予防介入に関する最新の動向の観察し、国内のゲイ/MSM予防啓発のプログラムに還元する。

■ MSM関連トピックに関する会議の概要
世界中から2万人以上の会議登録者を集めて、メキシコのメキシコ市で開催された今回の国際エイズ会議では、全体として「エイズ治療」をHIV感染の「予防」としても位置づける、といったテーマや、NNRTIやアバカビルなどエイズ治療薬の副作用の問題などが、大きく取り上げられた。そんな中、世界規模の国際エイズ会議としては初めて、「ゲイMSMの問題」が会議のキー・テーマとして言及されたことの意義や今後への影響は非常に大きく特筆に価する。会議期間を通して、ゲイ/MSMに対するスティグマや差別が、感染の拡大を引き起こしており、これまで無視されてきたゲイ/MSM層に対する組織的で、さらに拡大・深化した介入実践が必要である、というメッセージが繰り返し確認された。そのような流れを受けて、会議では(1)国連組織等のハイレベルな政策におけるMSM問題の正式化、 (2)アフリカ諸国や中南米など、MSMに対する予防活動や支援を行う国・地域の拡大、 (3)ゲイMSM啓発が実施されてきたアメリカ合衆国、カナダ、西ヨーロッパ、オーストラリアなどの先進国の事業でも、手法・アプローチ・対象層の多様化 などの3つの動向が、ゲイMSMを対象とした介入において見ることできた。

■ 「自治体調査研究」について発表
“Mobilizing, Building the Capacity and Researching on Gay, Transgender and MSM Issues”というPoster Discussion Session(8月6日の13時~14時)において、全国自治体のHIV施策における「同性間対策の推進と課題に関する研究」について以下のような内容を発表・報告した(“Japan’s local governments’ measures targeting MSM and its difficulties ?from the results of 111 local government survey-”)。

発表を受けて、ブラジル、カメルーン、米国、インドなどのMSMを対象としたHIV予防・啓発活動に関わる各国発表者との間のディスカッションが行われた。ディスカッションでは、以下のような観点について、有意義な意見交換を実施することができた。

■ 発表のチェック
各国のMSM/ゲイ男性を対象としたHIV予防理論を、国内で開催するゲイ男性向けHIV予防プログラムの企画立案・実施に還元するためアブストラクト・セッション、ポスター発表のチェック、スキルズ・ビルディング・ワークショップのチェックを行った。国内プログラムに還元するための観点から参考になったものを以下に一部紹介する。

●ゲイ・カップルを対象にした予防啓発
多くMSM向けの啓発は、介入の対象として個人をターゲットしたものであるが、カップル間での感染のリスク要因などを調べた“HIV-specific social support (HIV-SS) predicts discrepancy in reporting sexual behavior with primary partners in a sample of gay male couples ”(MOPE0454) 以下の米国の研究は注目に値した。

●インターネットを使った介入: 
日本を含む先進国のゲイ・コミュニティにおいて、チャットルームやインターネット、携帯電話を通じて性的パートナーを探すことが90年代半ば以降急速に普及しており、インターネットがHIV感染率とどのような関係にあるのか、インターネットに注目した研究が数多くなされている。 “Net Reach: online peer outreach to virtual communities across Australia ”(THPE0383)では、性的パートナー探しのための多くのゲイが集まるチャットルームを介入の場として着目したオーストラリアの研究であった。

●先進国ゲイ・コミュニティ内のマイノリティ:
米国、カナダ、ヨーロッパなど先進国内において、アジア系・ラテン系・アフリカ系などのエスニック・マイノリティ・コミュニティ内での同性間性的接触を通じての感染が上昇していることの背景や要因を指摘する研究が多く発表された。ゲイ・アイデンティティの持ち方など、日本国内においても参考になる実践を多く含んでいた。
“Differences in correlates of drug use among recent and non-recent immigrant Hispanic MSM”(TUPE0887)、“Giving thought: recommendations for prevention programming with black men who have sex with men”(TUPE0790)、“Identity and sexual health among ethnic minority men who have sex with men(MSM) in Britain: a qualitative study”(WEPE0722)、“The impact of gender role conflict and Black racial identification on the sexual risk behaviors of Black men who have sex with men in the United States”( WEPDD104)などがその代表的なものである。

●HIV感染者に向けた予防啓発や感染者の経験を使った予防啓発
以下の発表が参考になった。
“Risk reduction strategies among HIV positive men who have sex with men (MSM) in Canada”(TUPE0307)、“Conflicting images of HIV and AIDS foster sexual risk behavior among MSM in Germany”(MOPE0842)、“Changing trajectories of drug use among aging MSM”(TUPE0882)

●途上国のMSM予防のコンテクスト
途上国におけるMSM予防のコンテクストでもMSMに関する研究・事業の地理的拡大が見られまた。西アフリカのトーゴ“HIV prevention with men who have sex with men (MSM) in Togo, West Africa: an ethnographic study”(MOAC0102)、

今回の国際エイズ会議で得た成果を還元すべく具体的には以下のことを実施予定である。

  1. 各発表を通して得た各国のMSM/ゲイ男性のリスク行為の背景にある多様な社会的・文化的要因や実際のさまざまな予防活動を比較、検討、分析して、国内で開催するMSM/ゲイ男性向けHIV予防プログラム『ライフガード』の今後の企画立案・実施に還元
  2. HIV感染者の生活および予防行動の問題については、感染者当事者との間での情報・意見交換を目的とした、一連の報告会・学習会の企画
  3. 感染者・MSMを含んだコミュニティ向けの会報およびWebマガジンにに特集記事を投稿。

最後に、6日間におよんだ会議参加を通して、実り多い、充実した時間を過ごすことができました。このような会議への参加というチャンスを与えてくださったエイズ予防財団にこの場を借りて感謝を申し上げます。