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第17回国際エイズ会議 参加報告書
 

wAds/ 早稲田大学教育学部
今野 大一

テーマ: 「予防啓発活動における必要不可欠な二つの自覚」

はじめに

新規HIV感染者の4割をユース世代が締め、またユース世代はエイズの無い世界を知らない。また、2001年の国連エイズ特別総会 において、ユースが特定のターゲット世代に指定されたことは、歴史的に鑑みて極めてユニークな出来事である。本報告では、国際エイズ会議で得た、世界的なユースの予防啓発活動との比較における日本のユースに不可欠な二つの「自覚」について詳述する。

日本で活動するユースは1、効果測定(Monitering and Evaluation)の視点と、2、二つのコミュニケーション能力醸成の必要性を「自覚」すべきである。

(1)効果測定(Monitering and Evaluation)の視点

今後日本で活動するユースは、自身の予防啓発活動に対しての効果測定の視点の必要性を「自覚」すべきである。なぜならば実施する予防啓発活動が人材・時間・資金といった観点からいかに効果的に作用しているか、またそれがエイズ問題全体にどのように効果を挙げているのかという説明が、その活動自体に説得力をもたせユースによる政策提言につながっていくからだ。

本会議の発表したセッションにおいて、特にデジタルデバイスによるIT技術を用いた教育プログラムや予防啓発が、その方法のユニークさ、ユースのネットユーザーの到達人口の多さからの有用性を主張するセッションがいくつかあった。全世界で38億もの携帯電話が存在するという到達人口の多さ、地方自治体のレベルから国のレベルまでダイレクトに情報伝達ができるというメリットがあり、特にルワンダ共和国のプログラムにおいて人材・時間・資金面からコストエフェクティブだったという成功事例を聞くことができた。

ユースにとってデジタルデバイスは極めて身近なものであり、ウェブサイトを使った啓発の可能性の大きさを再確認できた。コミュニケーション面でのメリットは理解しつつもその一方で、ブログなどのウェブサイトを使った啓発手法が、IT技術を用いない啓発手法に比べてユースのエイズ問題にどのように効果的なのか、どんな実績があったのかという説明には疑問も残った。例えば、1億500万人のネットユーザーを有するラテンアメリカでは、メキシコのPUNTO  Jというサイトが省庁から資金を受け、ユースと医療をつなぐ役割を果たしている。ユースが作成するユースのためのサイトで、だれでも性の悩みを投稿することができ、ユースによって啓発目的の漫画なども描かれている。このようにユースによるサイトは、時に間違った情報や主観的な経験が混在する可能性があり、受け手側が正しい情報とそうでない情報を判断しなければならないというデメリットも存在する。そのようなサイトがより説得力を持つには、効果測定の視点を持つことが不可欠だ。本会議のplanaryセッションにて、ドミニカ共和国のユースElizabetは「レトリックではない、ユースの多様性に応じた科学的に実証された性教育と情報へのアクセスが不可欠」と述べた。科学的に実証された性教育と情報へのアクセスは効果測定の視点の自覚があって初めて成立する。その意味で、世界銀行のGlobal AIDS Monitoring and Evaluation teamのスキルビルディングセッションにおけるUNAIDSの12のコンポーネントを使った効果測定システムは興味深く、今後自身のキャンペーンに生かせるリソースになると考えている。

(2)二つのコミュニケーション能力醸成

さらに、日本で活動するユースはグローバル言語である英語運用能力とメディアへの発言能力という二つのコミュニケーション能力醸成の必要性を「自覚」すべきである。なぜならば、成功事例を伝える際に、これらの能力が身についていなければどんなに効果的でユニークな活動を展開していても、それを世界に対して発信することができないからだ。

1、英語運用能力

例えば前述のようにウェブサイトを用いた啓発手法は、膨大なユースへの到達人口を有するが、英語に翻訳されていなければその到達人口は極めて狭いものとなってしまう。前述のPunto Jはスペイン語のサイトだが、我々日本人にとってはスペイン語を勉強しない限りその内容を吟味することはほぼ不可能だ。ましてや私たち日本語のサイトは国内以外に向けては発信することができない。もしEnglish pageを立ち上げることができれば、その間口を途端に広げることができ、かつ異なる文化や背景から見たフィードバックが可能になる。そこで視野を広げることも可能なはずだ。今後wAdsの啓発キャンペーンにおいて少しずつだとしても、ウェブサイト・報告書・啓発資材などあらゆるものをグローバル化させていく必要性を感じた。

2、メディアへの発言能力

1の英語運用能力を前提とした上で、政策提言としてのメディアへの発言能力の情勢も必要だと実感した。開催地のメキシコにおいて、日本人というのは非常にユニークに見られ、日本人というだけでメディアからのインタビューを受けやすいということがあった。

その際に、15秒から30秒で、自分たちの活動やその意義、自分の意思を適切に伝える力を事前にトレーニングしなければならない。これは、メディアからのインタビューを受けた際に「この三点だけは伝える」ということを、事前にユースの参加者内で共有しておけば解決することができる。

以上、「1、効果測定の視点」と「2、二つのコミュニケーション能力醸成」への「自覚」が日本のユースの予防啓発活動にとって必要不可欠である。

終わりに

「1、効果測定の視点」と「2、成功事例を伝えるためのコミュニケーション能力醸成」の必要性を「自覚」できたことは本派遣事業に参加したことで得られた大きな成果だった。今後のwAds2008でのキャンペーンにおいて、UNAIDSの効果測定に関わる資料を用いプロジェクト・マネジメントを進め、ウェブサイト・啓発資材などのグローバル化を進めていきたいと考えている。また世界各国のユースと出会えたことは個人的に今後の活動のモチベーションにもなり、ここで得た人的・情報的なリソースをwAdsキャンペーンで 十分に還元させていきたい。