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第18回国際エイズ会議 参加報告書
 

独立行政法人 国立国際医療研究センター
エイズ治療・研究開発センター
土屋 亮人

自分が関わっている分野を中心とした報告

今回の国際エイズ会議のTrack B: Clinical Sciencesは、臨床研究の分野で大変興味深い研究報告が多数見られた。特に、Clinical trialおよびCohort studyの結果や新規薬剤、新規治療法の結果などについて新しい知見が得られた。

Antiretroviral Therapy: New Drugs and Novel Strategiesでは、新しい抗HIV療法の可能性として、核酸系逆転写酵素阻害剤(Nucleoside reverse transcriptase inhibitor; NRTI)の代わりにインテグラーゼ阻害剤(Integrase strand transfer inhibitors; INSTI)を用いたRegimenが報告されていた。Antiretroviral therapy(ART)- naïveの患者をプロテアーゼ阻害剤(Protease inhibitor; PI)であるKaletra(Lopinavir/Ritonavir; LPV/r)400mg/100mg 1日2回服用とINSTIであるRaltegravir(RAL)400mg 1日2回服用の組み合わせ、LPV/r 400mg/100mg 1日2回服用とNRTIであるTruvada(Tenofovir disoproxil fumarate/Emtricitabine; TDF/FTC)300mg/200mg 1日1回服用の組み合わせ、の2群に分けて治療を行ったところ、48週目のHIV-1 RNA < 40 copies/mlの割合はそれぞれIntent-to-treat(ITT)analysisで83%、85%と両群ともほぼ同等であった。また、48週目のCD4細胞の上昇数もそれぞれ215 cells/mm3、245 cells/mm3とほぼ同等であった。この結果から、NRTI の長期服用による副作用などを考えた場合、LPV/r + RALの選択も可能であることが示唆された。

続いて、PIからINSTIのRALに変更する際にRAL 400mg 1日2回服用とRAL 800mg 1日1回服用の2群に分けた結果も示されていた。この場合もやはり両群とも治療成績は良好で、RALの細胞内濃度の半減期が長いことから、RAL 800mg 1日1回服用の治療も可能であることが示された。

また、新しい抗HIV薬としてDual chemokine receptor 5/ chemokine receptor 2 (CCR5/CCR2) antagonistのTBR-652や新しいINSTIのS/GSK1349572も報告されていた。特にS/GSK1349572はRAL耐性のHIVにも効果を示すため、非常に期待の持てる抗HIV薬である。

その他参考となった研究発表の内容と理由

Mechanisms of Transmissionでは、DC-SIGNの遺伝子多型によって母子感染のリスクが上昇するとの報告があった。DC-SIGNプロモーター領域のp-336Cとp-201Aは母子感染のリスク上昇との関連性が強く示唆され、また、Exon 4のR198Q、E214D、R221Q、L242Vの変異、その中でも特にR198QとL242Vは母子感染のリスクを上昇させることが示されていた。

また、Complications of HIV Disease and Antiretroviral Therapyでは薬物トランスポータの遺伝子多型とTDFのCreatinine clearanceとの関連性、Impact of co-factors/viral clade/tropism/genetic factorsではCCR5 G2459TとARTにおけるウイルス学的成功までの期間との関連性、そしてPharmacogenomicsでの各発表など、ヒトの遺伝子多型から抗HIV療法を解析した報告が多数あったことが非常に興味深かった。

会議の成果を国内で還元する具体的計画

今回の会議で得られた多くの知見は、日本国内でのHIV/AIDS治療および臨床研究の中心機関である独立行政法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センターのリサーチ・カンファレンスにおいて報告する予定である。また、この会議から今後の研究に役立つ情報も多数得られたことから、国内の学会発表や論文発表時にAbstractを参考文献として用い、広く国内外へと報告したいと思う。

会議の感想

今回、8年ぶりに国際エイズ会議へ出席したが、前回と同様に、この会議は基礎医学から臨床医学、疫学、社会科学など幅広い分野の方々がそれぞれの専門領域を越え、エイズという世界的な問題に立ち向かい、共に解決して行こうとする姿勢がとても素晴らしいと感じた。最後になりましたが、第18回国際エイズ会議派遣事業に採択して頂きました財団法人エイズ予防財団へ深く感謝致します。