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第18回国際エイズ会議 参加報告書
 

公益財団法人結核予防会 国際部
竹中 伸一

現在、公益財団法人結核予防会・国際部に所属して、アジアやアフリカ諸国の結核(以下、TB)及びHIV/エイズ対策プログラムに携わっている。今回、TB/HIV対策プログラム実施の現状と課題について、情報収集をおこなった。またあわせて、TB/HIV対策プログラムの最新の取り組みについても情報を収集した。参加したTB/HIV関連の主なセッションは次のとおり。

セッション

1. 現状と課題

2008年、940万人が結核(以下、TB)に感染・発症しており、この内140万人がHIVとの重複感染である。この内80%の人々がサブサハラ・アフリカに暮らしており、さらにこの50%は南部アフリカ9か国となっている。この140万人のTB/HIV重複感染の内、52万人が結核治療中に死亡している。 このようなTB/HIV蔓延し対して、対策は遅く、小さく、未調整であった。この理由としては、いろいろあるものの、大きな違いとして、この2つのプログラムの思想の違いがあげられている。この違いは、HIV/エイズ対策プログラムが、人権に軸足をおき、HIV感染予防やHIV検査に重点をおく一方で、結核対策プログラムは、公衆衛生に軸足をおき、発見・治療を重点においている。

2004年来、この2つのプログラムをつなげるため、3つのイベントが開催された。第一に、TB/HIVの負担を減らすための連携活動(collaborative activities)の概要を書いた、WHO政策文書が発行されている。但し、15ページのこの文書は、目的をはっきりさせるべく改定が求められている。続いて(第二に)、HIV感染予防やHIV関連結核予防のための抗レトロウイルス薬(ARV)の使用の議論がはじまっている。このことは両プログラムにとってたいへん重要な出来事である。第三に、HIVによる、多剤耐性結核及び超多剤耐性結核の蔓延があげられる。

しかしながら、2つのプログラムの連携が求められているにもかかわらず、十分に連携ができていない状況にある。以下、各観点からの課題をあげる(以上、シンポジウム「TB and HIV Management in High HIV-Prevalence Setting: From Coordination to Integration」の前段から)。

2. 各観点からの課題と提案

(1)コミュニティ(L. Chesire)
 TB/HIV対策で拡大が必要なコミュニティ活動は次のとおり。 この他に、TB/HIVの二重の偏見・差別の撤廃や、TB/HIV関連サービスへの障害(barriers)の除去等の活動がコミュニティで課題となっているとのこと。

(2)フィールド(G. Van Cutsem)
 TB/HIV統合の目的と目標は次のとおり。
   目的(Aim of TB/HIV integration)
  • 死亡と感染の削減
  • サービスの効率の改善(適切な人材育成や重複感染患者マネジメントの競争性の増加を通じた)
   目標(Objectives of TB/HIV integration)
  • HIVケアへの介入口としての結核患者間でのVCT増加
  • HIV感染者への早期結核診断の実施
  • TB/HIV重複感染者へのART遅滞の削減
  • TB/HIV重複感染者への包括ケアの提供:1患者、2疾病、1プログラム(同じ受付/カウンセラー/看護師/医師)
  • ワン・ストップ・サービスの構築
  • 患者中心アプローチを通じたTB/HIV重複感染者及びTB患者の治療率の改善
  • ARV治療のモニタリングを標準化のためのTBプログラム経験の活用

 「国境無き医師団(MSF)」の南アフリカ及びレソトでのTB/HIV活動経験からのまとめは次のとおり。
(3)科学的観点(G. J. Churchyard)
 本セッションでは、WHO policy on collaborative TB/HIV activitiesの3Isの効用を紹介。3Isの実践と拡大を強調。
   Decrease the burden of TB in PLWHIV(3Is)
  • TBケース発見強化(ICF; Intensified tuberculosis case finding)
  • イソニアジド予防内服(IPT; Isoniazid preventive therapy)
  • 院内感染予防(IC; Infection control)
   まとめ
  • TB及びHIVの統合は不十分ながらも改善している。
  • ケース発見強化(ICF)及びイソニアジド予防内服(IPT)、院内感染予防(IC)の拡大(3Isの拡大)
  • 医療施設を訪れるすべての人々の結核スクリーニングの実施(HIV高蔓延国於)
  • IPT及びTB治療とART統合の拡大
(4)政策的観点(K. M. De Cock)
 先述のとおり、TB及びHIVは違う価値観の下、実施されてきた。TB/HIVの政策(Policy)形成において、学術的データ等の証拠(evidence)に基づき、人権や社会正義等の価値(value)に配慮した、バランスのとれた政策がもとめられる。HIV高蔓延状況でのTB/HIVをすすめるにあたって、重要な項目は次のとおり。 3. まとめ

サブサハラ・アフリカ(HIV高蔓延地域)でのTB及びHIVサービスの統合が求められており、アサービスの統合・アクセスは向上してきている。しかしながら、さらなるサービスの拡大がもとめられているが、ここ数年課題は変わらないままである。保健医療人材不足は未だ解決されておらず、タスク・シフティング等の対応が取られているものの、抜本的解決には至っていない。このような状況下で、TB/HIVサービスを拡大するためには、強い政治的コミットメントの下、保健システム強化やリフォームを通じて、システムの根幹(ヒト、モノ、カネ、技術、情報)の強化が期待される。


謝辞
今回の会議では、サブサハラ・アフリカ各地でTB/HIVプログラムに携わる実務者と意見交換ができたほか、人権やジェンダーついて改めて考える機会を得、クライアントの人権に配慮したHIV対策プログラムと公衆衛生アプローチ重点をおいてきた結核対策プログラムのアプローチの違いを確認した。今後、この違いを乗り越えて、TB/HIVプログラムを実践するにあたって、今回の知見を役立てたいと思う。また、会議の成果は、研修や講義を通じて青年海外協力隊(エイズ対策等)や研修生等に還元していくほか、機会あれば、JICA等のプロジェクトへも還元していく予定である。最後に、この機会を与えていただいた(財)エイズ予防財団に謝意を表す。