HOME >> 資料室 _ 関連学会情報 >> 第18回国際エイズ会議(オーストリア)/2010年 >> 参加報告書

第18回国際エイズ会議 参加報告書
 

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科
若林チヒロ

第18回国際エイズ会議は、2010年7月18日から23日まで、オーストリアのウィーンで開催された。国会議事堂や市庁舎には巨大なレッドリボンが飾られ、ウィーンの街のあちこちで学会を盛り上げていた。

今回の会議は、東欧・中央アジア地域を意識して開催されており、言語は、ロシア語と英語が併用して用いられていた。ドラッグ使用や女性セックスワーカーなど、地域の主要な課題が多く取り上げられていた。

全体のプログラムは、「基礎」、「臨床」、「疫学・予防」、「社会・行動科学」、「経済・保健医療システム」、「政策・法・人権・政治」に分類されていた。「基礎」「臨床」「ケア」などの医療面の報告は、かつてはそれが中核の学会というイメージであったが、今回は、演題数も少なくなっているようであった。全体に、世界各地の健康水準を平等に確保するという国際保健の視点が強く、より脆弱な属性の人々や集団、国、地域への配慮を重視する姿勢が感じられた。途上国への支援や予防対策が主要なテーマであり、演題や発表者もそれら地域のものや人がより多く含まれるよう配慮されていたと思う。

一方、先進国の陽性者の生活問題については、口頭発表はでほとんど取り上げられておらず、ポスターを中心に発表されていた。ニューヨークの男性同性間性的接触のHIV陽性者を対象とした調査では、陽性者の高齢化に伴う問題が報告された。中高年が多くを占め、独居率が高いという人口・世帯構成を背景に、家計・貧困、保険、雇用、住宅、介護、メンタルヘルスなどの生活問題の発生が指摘されていた。フランスの陽性者を対象にした調査では、職場で病名を開示したことを後悔している人が多いという報告がなされており、病名を開示するタイミングはよく考慮すべきという指摘がなされていた。カナダの支援団体からは、陽性者の就労支援のための企業向け対応ツールが開発されていた。これら欧米の陽性者の生活問題や支援方法は、今後の日本でも参考になると思われた。

全体に、学会として、臨床や地域での実践活動を評価したり一般化したりして、知見や方法を他者と共有することに具体的に取り組んでいる点も印象的であった。若年の活動家など新規の参加を促進しているものと思われるが、演題を提出する段階で、発表のための丁寧なマニュアルが提供されていたり、個別にアドバイスを受けられるシステムが設けられたりしていた。日本でも、同じような支援体制をとっている学会はあるものの、参考になる点は多いと思われた。

個別の発表内容だけでなく、学会全体の姿勢や雰囲気、対策の方向性なども感じることができ、よい経験となった。貴重な機会を提供していただき、感謝している。