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第19回国際エイズ会議 参加報告書
 

SWASH
要友紀子

IAC2012(国際エイズ会議) セックスワーカープログラム報告

アメリカとインドでIAC2012セックスワーカープログラムが同時開催された経緯

 今回のワシントンエイズ会議には、政治的な理由で参加できなかったセックスワーカー支援団体メンバーらと、同じく政治的な理由で主体的に参加をしなかった同志たちがたくさんいた。各国のほとんどの団体は、インドで同時開催されたThe Sex Worker Freedom Festival: the alternative International AIDS Conference 2012 event for sex workers and allies(21 to 26 July 2012,organesed by Durbar, supported by NSWP)に集結した。

 政治的な理由とは主にアメリカ政府の政策に対する異議申し立てがある。

 第一に、越境組織犯罪防止条約の締結と国内法整備を世界各国で推し進めたアメリカ政府は、テロ、麻薬、人身売買等を取り締まるため、多くの国々の性産業およびセックスワーカーの取り締まりの厳格化と、セックスワークの不安全化(アングラ化)を招いた。この一連の流れの中でアメリカ政府は、セックスワーカー支援団体/ネットワークの幹部メンバーらについて、「売春を助長し、人身売買犯罪組織に加担する組織のメンバーである(トラフィッカー)」と看做し、入国拒否のブラックリストに入れた。

 一連の法整備では、人身売買被害者と認定された人は保護の対象となり救済や支援を受けられることになったが、基本的に条約を軸とした性質を持っていることを押さえておく必要がある。つまり、働いているセックスワーカーたちの被害防止や搾取の禁止、人権保護、安全保障、環境改善という観点からの取り組みは視野になく、実際、人身売買禁止法制定に伴う、風営法、入管法、法務省の基準省令の改正等は、取り締まりや捜査・管理体制、罰則の強化という観点が強調されて行なわれており、事実上、犯罪組織の捜査と摘発を目指す内容となっている。セックスワークを一掃することが、人身売買の問題の解決方法であり、治安維持、社会不安の解消であるという論理だ。こうした越境組織犯罪防止政策のグローバル化に対抗する意思を示さなければいけないという強い異議申し立てがある。

 第二に、ここ数年来エイズ会議で何度も言われてきているPEPFAR(米国大統領エイズ救済緊急計画)における反売春誓約書問題がある。これは、売春に反対するという誓約書を書かなければアメリカ政府から助成金が得られないという、セックスワーカーのエイズ予防啓発活動(特にアフリカなど)にとっては極めて深刻な影響のある問題である。PEPFAR kills Sexworkerは近年のセックスワーカーイシューにとって主要なスローガンとなっている。

 第三に、これも長らく解決されない問題であるが、セックスワーカー枠でのエイズ会議参加のスカラシップが得にくいこと、エイズ会議参加費が高くて参加できないなど、当事者参加をないがしろにしているとしか思えない会議設定の問題がある。

 このためSex Worker Freedom Festival(カルカッタ)とワシントンエイズ会議をつなぐセックスワーカープログラムの構成は、カルカッタへの片方向中継のセッション、ワシントンエイズ会議のみのセッション、カルカッタとワシントン双方向中継のセッション、相互中継を融合させたグローバルビレッジでのショータイムなど、カルカッタにいる参加者たちも、(一部ではあるが)ワシントンエイズ会議のセッションの質疑応答に参加することができ、また、ワシントンエイズ会議の一般参加者の間にも、Sex Worker Freedom Festivalの同時開催と意味を周知させることができた。ワシントンに来ていたセックスワーカームーブメントのアクティビストたちは、アメリカで活動する団体のメンバーか、プレゼンや国際機関との交渉等の公的役割があるため参加していた他国の団体/ネットワーク団体の幹部らで、みんなセッションを始める前には、ワシントンエイズ会議に参加できずにカルカッタに集まった同志たちのことを説明するようにしていた。私たちSWASHメンバーは、インドとアメリカの二手に分かれ、両方の会議に参加した。

ワシントンエイズ会議セックスワーカープログラムでの発表ハイライト

 7月23日パネルディスカッション「A Labour Rights Approach to HIV and Sex Work: Working with Sex Workers to Protect Human Rights, Prevent and Eliminate Violence and Sexual Harassment and Promote Equal Access to Protection Schemes」(ILO、労働に関する国連関連機関主催)

 このパネルでは、セックスワーカーの安全で公平な労働状況の構築のための労働権ということに焦点を当て、セックスワークの労働の尊厳を伴った法的枠組みの実現について話し合われた。

 ILOは2、3年前に、性産業を、工業、農業、商業などと並ぶ世界の主要な産業のひとつ“セックスセクター”としての認識を示し、2010年のRecommendation 200: Recommendation concerning HIV and AIDS and the world of workにおいても、セックスワーカーは他の労働者と同じように権利が守られるべきであり、セックスワークは労働であるという見解を明確に打ち出している。

 こうした進展についてAPNSW(Asia Pasific Network of Sex Workers)のCheryl Overs氏は、「私がムーブメントに参加して30年の間に、プロスティチューション(売春)からセックスワークという言い方が普及するまで意識改革が進んでうれしい」と、ILOを評価した上で、それでも、イタリアでは、性売買は犯罪ではないが、店舗営業は違法であるために、ナイジェリア人の女性が摘発を逃れて森の中にマットレスを敷いて働いている劣悪な労働環境の映像資料を紹介して例に挙げ、セックスワークの合法化の必要性を訴えた。

 さらに、合法化を阻む人々の意識として、1、セックスワーカーが犯罪者扱いされるのはおかしいが、PIMP(ひもや中間搾取をする経営者や客の斡旋業など)を犯罪者扱いすべきだという考え方 2、「客を逮捕すればいい」という考え方、の2つの間違った考え方があるとした。これについてCherylは、他の職場と同じように、なぜPIMPは普通のビジネスマンとしてみられてないのか、また、客の逮捕についても、セックスワーカーが望んでいない、もし客が逮捕をされる対象になったら、セックスワーカーも客が逮捕されないようにする責任を負いながら働かなければいけなくなると、具体的な影響について説明し、理解を呼び掛けた。客の処罰化はいわゆるスウェーデンモデルと言われ、アングラ化による問題が指摘されて久しい。近年隣国の韓国でも客の処罰化が導入されており、その波及は他国や日本にも少なからず影響するかもしれないという懸念がある。客の処罰化後のモニタリングは、当事国だけでなく、世界各国のセックスワーカームーブメントが明日は我が身の思いで注視しなければならない。

 最後にCherylは、法律のベネフィットの実現の難しさについて述べ、合法な店舗でも搾取が可能だから、合法か非合法かが問題ではなく、法律および制定プロセスにプレッシャーを与えないといけない、セックスワーカーが安全な場所で働けるように、ロビーイングが重要になってくる、法律の実現にILOは役割を果たせると、ILOへの期待を寄せた。

 タイのEmpower・Noi氏は、ここ数年の間にEmpowerで実践したセックスワーカーのためのドロップインバー・Can Do Barの労働方針を例に挙げ、セックスワーカーの生活と生計を改善するための7つの労働ガイドラインを紹介した。1、法定最賃またはそれ以上の賃金の支払い 2、一日8時間労働 3、残業の自発性の確保 4、病気休暇の確保 5、社会サービスへのアクセス 6、いなかる理由であろうと罰金を科さないこと 7、労働組合づくりの権利。Noiは、HIVの問題は、労働条件の整備の問題であると強調。また、アメリカ政府の入管政策についても言及し、「セックスワーカーが入国する際、なぜテロリストや麻薬運びと同じカテゴリーなのか?」と苦言を呈した。

 その他の演者からも、「いまのところ、“trafficking”は刑事司法の用語で、意味がわからない人がほとんどだ。搾取とか被害者だけを探していることから、人権のフレームが変わってくる。反人身売買団体は、当事者の声を聞かないのに、どうしてその人たちの話を自分の目的に使っているの?セックスワーカーの犯罪化はアメリカの政府の人権侵害と同じだ」と、アメリカ政府批判が続いた。

 反人身売買政策のセックスワーカーへの悪影響についてはカンボジアからも報告があった。カンボジアでも反人身売買政策の余波は深刻な問題となっている。人身売買・性的搾取防止法(2008年)の制定に伴い、プノンペンではセックスワークの大規模な一掃摘発が行われ、多くのセックスワーカーたちが、ホームレスらと同じ施設に強制収容された事件は記憶に新しい。今回カンボジアの状況について発表したAPHEDA- Union Aid Abroadは、プノンペンのセックスワーカー支援団体の老舗・CWDAらの協力を得て、世界金融危機(以下、GFC)と、時期を同じくしてできた人身売買・性的搾取防止法が、セックスワーカーたちに及ぼした影響について調査した。結果、GFCは、プノンペンで新たに21,463人の女性の性産業への参入を促し、法制定は、セックスワーカーたちの労働現場を売春宿から娯楽産業(カラオケ・マッサージ・ホステス・ウェイトレスなど)に変えた。

 それによって、アルコールハラスメント的なことがカンボジアの娯楽産業の労働者において大きな問題となった。ワーカーたちは給料よりもセックスを売ることやチップのほうで収入を得ており、ある女性は毎日1ℓのワインを仕事で日常的に飲んでいる。客のグループを喜ばせるためにスコッチのボトルを仕事で飲む。ある二人は前後不覚になるまで飲むことを強制された。こうした労働形態、給料体系がワーカーたちをハイリスクな状況に追い込んでいるという。

 このような、娯楽産業における労働環境・条件整備不足がセックスワーカーも含むワーカーの脆弱性の根底にあるので、契約書、公正な条件、賃金、セキュリティーといった基本的な労働者保護の改善と構築が求められた。

7月24日オーラルセッション「Criminalizing Sex Work」

 フランスのFrench National AIDS Councilの L. Geffroy氏は、2003年に客の勧誘、場所の提供(PIMPの仕事)が犯罪化されたことによる影響について報告した。調査してわかったのは、セックスワーカーの逮捕者数が10倍増えたのに、PIMPの逮捕者数はあまり上がっていないということであり、この事実は、PIMPの犯罪化は、セックスワーカー逮捕のためであったことを表している。また、法律の一部に被害者保護が含まれているが、2009年に警察によって684人が人身売買被害者として認知されているのに、56人の被害者しか被害者サポートサービスを受けておらず、被害者らのビザに関しては、10年の在留許可を得られたのは1人だけで、79人は、被害者として看做されることでかろうじて許可が下りる最短の半年間の在留許可が認められただけだった。さらには、政府の予算の使途87%が緊急保護や保護施設、売春の予防、残り13%だけがエイズ予防活動に使われる。政府の本音は売春をなくすことだ。

 続いて、Human Rights WatchのM. McLemore氏からは、アメリカにおけるコンドーム所持の犯罪化について報告がなされた。アメリカでは、警察にコンドーム所持が証拠と看做されることで、セックスワークの仕事の中断、家宅捜査、逮捕、逮捕の脅迫、起訴されるなどの被害が勃発。LAPD(ロサンゼルス警察)の言によれば、「平均的な一般市民は、コンドームなんか持ち歩かない」とのことだ。この問題について、Human Rights Watchは、被害のあるNY、LA、ワシントンDC、サンフランシスコの4か所において4年間の調査を行った。

 逮捕による懸念は特に移住労働セックスワーカーたちにとっての入管問題や、警察によるセックスワーカーへの嫌がらせ、虐待がある。また、さまざまな噂も流通し、たとえば、「コンドーム3つ以内であれば大丈夫」とか、「いくつコンドーム持ってたら捕まらない」といった憶測が広がったりしている。

 公衆衛生への影響としては、セックスワーカー当事者らが語るエピソードから、その深刻さが窺える。「コンドームを持って歩くのが怖かったから、たくさん無防備なセックスをした」、「逮捕された後、いつも怯えてた。コンドームを持たないようにしたときが何回もあって、でもコンドームが必要だったから、私はコンドームの変わりにナイロン袋を使った」。

 こうした状況に必要なこととして、1、セックスワーカーたちの経験を追跡調査し、ローカルな支援者をつくること 2、コンドームを売春の証拠と看做さないことの立法化 3、警察と地域の弁護士たちが、コンドームを売春の証拠として看做してはいけないことを呼び掛けること 4、警察へのHIV予防に関する研修の実施 5、市の首脳陣に公衆衛生への努力の妨げを止めさせる約束を交わすこと、を提言した。

 発表の際に披露された短編ドキュメンタリー「Cops Arrest Sex Workers for Carrying Condoms」(Human Rights Watch制作)は、インターネットでも観ることができる。
http://www.youtube.com/watch?v=ajxFEnenxN8&feature=player_embedded#! 

 最後に、東ヨーロッパ のマケドニアのセックスワーカー支援団体・HOPSで活動する弁護士、H. Shterjova Simonovikj氏から、多様なセクターのエキスパートたちとの協働による支援の取り組みについて報告があった。

 マケドニアでは、売春のレベルによって罰則も異なる。売春は罰金だけで懲役刑はなく一番軽い罪となっている。しかし、警察に脅されたり暴力を受けるなどの被害があり、行政に信用がないので、セックスワーカーたちは人権侵害を受けても通報しない。ある摘発のケースでは、23人のセックスワーカーが逮捕、拘留された。その間お手洗いも行けなかったなどのハラスメントを受けた。また、無理やりに合意なしにHIV/HCV(C型肝炎ウィルス)の検査を強要された。そのうち7人がポジティブだった。マケドニアで性病をうつすのは刑事罰の対象となっているので、その7人は刑事罰を受けた。

 この事件についてHOPSが取り組んだのは、法的・心理社会的サポートモデルの開発だった。まず、弁護士、アウトリーチワーカー、ソーシャルワーカー、精神科医のチームを形成。モチベーションのプロセスにおけるそれぞれの役割の重要性を確認した。4人のこのチームでセックスワーカーらにインタビューを実施。それはとてもよかった。なぜなら、弁護士は権利について、ソーシャルワーカーは社会的保障や支援についてなど、様々な側面からのサポート、ケアが実現できてよかった。結局、二つの民事裁判を起こすことになり、一つは勝訴し、7人は刑務所行きを逃れることができた。また、拘留され強制検査を強要されたセックスワーカーの半分以上は、国の施設に入れられることを拒否して現在も裁判で闘っている。闘いにおいて障壁となっているのは、政治とメディアからの抑圧と、裁判の長期化である。そのため、ポジティブな方向にメディアを巻き込むこと、運動の持続可能性の追求、サポーターや運動内でのピアな関係構築が課題となっている。

 H. Shterjova Simonovikj氏はHOPSの支援活動を通して、セックスワーカーたちが、法的手段を含む自由に使えるメカニズムを駆使できるようになることが、暴力や人権侵害を告発するモチベーションをつくり、社会的に脆弱なグループと協働する組織のための国民的および地域的な成功モデルの促進に繋がるとの活動理念を導き出した。延いては、こうした結果が正義を求める我が国マケドニアのセックスワーカーたちのエンパワーになると結論づけた。

7月26日プレナリーセッション「Dynamics of the Epidemic in Context」

 APNSWのCheryl Overs氏による発表「The Tide Cannot Be Turned Without Us: HIV Epidemics Amongst Key Affected Populations」では、近年の反人身売買対策によるセックスワーカーへの締め付けを象徴する、"Save us from the saviors!"(私を救済しようとする人たちから私を助けて!)というスローガンが印象的であった。つまり、間違った人身売買の“救済”活動は、よりセックスワーカーを苦しめている。その証拠映像も紹介されるなど、センセーショナルかつ説得力のあるプレゼンだった。以下、Cherylの発表概要を紹介したい。(インターネットでも視聴が可能。
http://globalhealth.kff.org/AIDS2012/July-26/Dynamics-of-the-Epidemic.aspx 

 今回のエイズ会議のテーマは、「Turning The Tide Together」。同じようにセックスワーカー運動でぶつかってることは、セックスワーク/ワーカーの社会的統合、権利・人権、家族に認められてない問題、貧困、コンドームの不足、暴力被害、メディカルトリートメントへのアクセス不足、暴力的施設、コンドーム所持が逮捕の証拠になること、警察ややくざなどへのみかじめ料・わいろ、子どもを保護するサービスがない、薬が高いなど。この津波のような波を押し返すためには、セックスワーカーのコミットメントなしで成し遂げることはできない。

 最近は、予防としてのトリートメントが新しい枠として立ち上がってきた。今回の会議でも、将来的な広がりと共に不安を感じる。医学的なものを中心に据えるだけだと、コミュニティによるレスポンスや啓発をしないと無意味だ。つまり、とても効果的な薬というのはいいけど、この薬は客とセックスワーカーのあいだの力の差を埋められるのか?たぶん埋められないでしょう。例えば、最近できたウイルス消滅作用のあるピル、それはひとつの効果的ツール。だけど、お客さんは「セックスワーカーがピルを飲んでるからこれから生でやらせてもらう」とか、これはもう客のインターネット掲示板にいろいろこういうことが載ってる。それだけでは状態はあまり変わらない。

 アウトリーチワーカーもいろんな複雑な情報をセックスワーカーに説明もしないといけない。例えばピルなどいろんな薬があるが、ある薬は何日効果あるとか効果的な使いかたがあるとか、それを知ってないと心配。その新しい薬とかは、保健所が半分払ってくれるとか、新しい薬を少し安くしてもらっても、全体的にみてみると、必要なツールキットの値段が上がっていく。いうまでもなく、新しい薬の責任は、客の責任じゃない。HIVエイズの30年間の歴史に、届けられにくいグループはお客さんだ。いま聞いてる人たちの中にも何人も何百人もいるはず。どうやって認知させるか。最近は検査もすぐに結果がでる。検査が無料で受けられても、保健所に通ってるバスは無料ではないし、検査費免除の職場で働いていなかったらコストがある。

 職場での検査についても、いろんな問題がある。そのうちひとつは、もしポジティブの結果がでると、個人情報の守秘義務が期待できないことだ。あるアメリカの州では、もしセックスワーカーがポジティブの結果がでたら、犯罪になる。いまアメリカでは売春は中ぐらいの犯罪だけど、もしHIVだったら一番悪い犯罪だから、もし職場で検査をしてポジティブで、通報されたらセックスワーカーにとって危険なことだ。ひどいケースでは、行政がポジティブのセックスワーカーの写真をインターネットで載せた。それは予防の対策としてやっていた。

 将来的にいろんな問題を想像できる。例えば、検査を受けることに、賛成するセックスワーカーだけがトリートメント(治療)を受ける。新しい開発が完全に悪いというわけではないけど、セックスワーカーからのインプットの感想とかアドバイスが含まれてなければいけない。もちろんセックスワーカーの権利がなければないほどいろんなツール、薬、トリートメントの効果がない。成功の可能性が下がる。感染エピデミックは、ツールの不足が原因ではなく、セックスワーカーが抑制されてる、差別されていることが原因だ。

 セックスワーカーの人権を一番落としたりすることは法律だ。それは、法律が就職とサービスへのアクセスを、ほかの市民と比べればとてもむつかしくするから。(映像をみて)これは携帯でとった動画、セックスワーカーたちを“レスキュー”する場面。でもセックスワーカーにとって一番怒っていることは、まちがって偏ってみられている搾取の話とかまちがってる人身売買の話、それらの話はセックスワーカーに対する、非常に悪い法律と暴力的な摘発を正当化するから。動画のように。だからこそ、英語を話すセックスワーカーがよく言うのは、"Save us from the saviors!"

 刑事法が性産業の形を決める。例えば、ナイジェリア人が使ってるマットレスの写真。刑事法は、どんなピル薬があっても、危険をゆるくできない職場をつくる。ナイジェリア人の女性はこのような働く環境にいてとてもよくないと思う。それはだれでもわかるけど、みんなはそんなセックスワーカーたちをどこに送ればいいか。ある人は刑務所、ある人は工場にという、ある人は施設にという。いま必要なのは、非常に危険な環境からセックスワーカーを救い出す安全な職場で働ける法律が必要。いまセックスワーカーが守られないことをみんなが自分の利益に使う。新しい薬ができても、それはいいことだけど、必要なのは、セックスワーカーが参画でき客にも届くプログラムでないと効果がない。

●最後に

 今回アメリカとインドで同時開催された両方のエイズ会議にSWASHメンバーらは参加し、知恵と経験を共有することができ、世界のセックスワーカームーブメントの最先端の取り組みを知ることができた。

 セックスワーカーを取り巻く法的環境は、人身売買政策と、PIMP・客の処罰化(withセックスワーカーの保護対象化)の台頭によって新たな局面を迎えている。同時に、ムーブメント、アクティビストたちはそれに伴い、政策立案者たちや人々に、正しい問題のコンテクストやスペクタクルを提示しようとする。失策や政治の擬制の告発は、主要な国際機関が集まる格好のロビーイングの場であるエイズ会議等で功を成さなければならない。問題の真髄を突いたスローガン、キャッチコピーはまさに、言葉、意味、理解の普遍化/敷延化を促す。エイズ会議は、単なる活動とモニタリングの発表会ではないのだ。

 セックスワーカーたちが抱える複雑な問題を、伝えたい相手に、また、誰にでもわかりやすく提示するにはどうしたらいいかということを常に考えている。そういうことを日々考え闘っている同じような仲間が、苦悩して言葉を生み出し、それを社会化する時間と空間に立ち会えるのはこの上なく幸せな時間で、これを日本社会で還元していく機会を持たせてもらえることも同じくらいうれしい。

 今回のレポートは、定期的なセックスワーカー向け相談会カフェやイベント、10月に行われるエイズ文化フォーラム(京都)で配布を行うなど、当事者だけでなく、エイズ予防・支援にかかわる関係機関の方々に広く共有させていただく。また、研究会開催を通じて、この分野の研究者や社会活動家のみなさんと深く掘り下げ、研究の偏在化、セックスワークの問題共有の社会化の一助としたい。オンライン上でも、WebサイトやFacebookを通じて配信し、多くの方にシェアしてもらいたい。活動面においては、政策提言のロビー活動や、行政機関のプログラム開発の際に、海外のデータ資料、実践例として紹介、使用させていただきたいと思っている。

 最後に、今回ワシントンエイズ会議への参加についてご支援いただいたエイズ予防財団に心から感謝を申し上げたい。

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<付録(カルカッタ会議のレポート)>

●IAC 2012 Kolkata-The Sex Worker Freedom Festival: the alternative International AIDS Conference 2012 event for sex workers and allies(21 to 26 July 2012,organesed by Durbar, supported by NSWP)のハイライト

オープニングセレモニー

 次に、カルカッタで同時開催されたオルタナティブエイズ会議の報告をしたい。
 オープニングセレモニーには世界から41カ国が集まり、会議は800人が座れる会場で、立ち見の場所も人やメディアでいっぱいだった。
 参加者には、セックスワーカー支援団体の他、西ベンガル政府関係者、運輸省官僚、インド政府関係者、医師会会長、映画監督などがきていた。
 インド政府関係者で、ソナガチ州というインドで一番大きいレッドライトエリア出身者の方はウェルカムメッセージで、「インドにセックスワーカーがいることは全く問題ない。広いインドの中でもカルカッタでセックスワーカーフリーダムフェスティバルを開くことを選んでくれて嬉しい。世界で大きくて大事なセックスワーカーの問題だ。来てくれてありがとう。今、インド政府だけでなく州政府ごとに問題を取り上げるようにメディアや国に訴えている。これは州政府の責任であり、やらなければならないことだ。セックスワーカーが子どもを人身売買させている、連れて行っていると言われないようにさせていきたい」と述べた。
 インドでは、99年セックスワーカーの50%がHIVに感染していたのをきっかけに、違法なセックスワーカーの仕事に政府が目を向け考え出している。セックスワーカーやその子どもに対する教育やHIV予防の活動に対して、警察は動いてくれないどころか壁となっており、警察がハラスメントをせず人権を守るように働きかけるようになったのもそのころである。
 また、今回のフェスティバルをオーガナイズしたAPNSWのAndrew Hunter氏は、アメリカ政府およびワシントンエイズ会議の問題について次のように語った。「ワシントン会議でアメリカはHIVもセックスワーカーもないことにし、お金がない人やビザがとれない人たちに対しても何も行動を起こしてくれなかった。ワシントンエイズ会議組織委員会は、セックスワーカーにお金を出してると言っているが、アメリカ政府は、セックスワークを辞めることを前提にお金を出している。今、特にカンボジアと韓国はアメリカからアビューズを受けている。フィリピンもプレッシャーを受けてきた。問題を考えるということをせず圧力をかけるだけだ。それに対してインド政府はセックスワーカーに敬意を示し、問題意識を感じ、受け入れてくれてありがとう。薬もアメリカと違い、安く手に入れられるようにしてくれてありがとう。アメリカ政府に対してインドで成功したことを見せたい」。
 その他、30年近く働いていて、お客には女も男もいるスウェーデンのセックスワーカーは、「フェミニストで勘違いをしているやつらに批判したいことは、かわいそうな人を守るという人権擁護や、セックスワークを辞めさせるということは言うが、生活のためにセックスワークをしている人たちへのフォローは一切ないということ。この会議の存在や意味を知らせたい。また、セックスワーカーは子供を売ってるとか搾取されてると言いがちだが、そうじゃないことを示す。」と意気込みを語った。

インドでのセックスワーカーの状況を示す事例

 カルカッタのソナガチではセックスワーカーの仕事がうまくいくように毎年6月に馬車フェスティバルという名のお祭りをしている。
 カーストが残る中で親の仕事を代々つがないで新しい仕事をする人も増えている。村から町へ出稼ぎに移動する人は特に増えている。
 まだまだ被害に遭うことは多く、逮捕されることもよくある。しかし警察だけではなくメディアもセックスワーカーに対して危害を与える側にいる。
 あるセックスワーカーは、逮捕された2日目にメディアがインタビューをしにきたが、嘘の報道や写真が出されてしまい、夫や子供に愛想尽かされた。セックスワーカーと分かったら家を借りられない。セックスワーカーの大変な状況を報道するのではなく、セックスワークは怖いということを伝えるだけで、メディアのせいで社会から追放されることが多い。
 メディアの被害に遭った例として他に挙げられるのは、ヒンドゥ教の中には13才まで神殿にいるバラモン専用セックスワーカー(カーストがまだ存在する)が、神様への祈りのために儀式で川に浸かることがあるが、メディアはただ女性の裸をとって世に報道するだけで、状況や背景は載せないのである。

演劇「セックスワーカーの1年」

 プログラムには会議の他、カルチュラルプログラムもあり、1時間に及ぶ演劇「Vampworks unlimited」を演じたグループは、西インドでセックスワーカーの人権のための闘争や自分の価値の主張の仕方、運営の仕方、生計の立て方などを学べるグループだ。映像ではお見せできないので、以下、劇中の場面描写になるが紹介したい。
セックスワーカーのための銀行USHA

 インドやバングラデシュなど貧しい国で働くセックスワーカーたちにとって、コンドームを買うことは容易ではない。ましてや、深刻な経済的困難を抱えているセックスワーカーであれば、コンドームを使いたがらない客の要求とチップの誘惑に勝つのは難しく、ハイリスクなサービスを提供せざるを得ない場面が多々ある。このように貧困の問題はHIV予防と大きな関わりがあり、この問題の前では、「コンドームを使いましょう」という啓発は無意味だ。HIV予防的なセックスワークを実現するためには、根本的な生計の問題を解決することが何よりも重要である。その答えの一つが、セックスワーカーのためにお金を貸してくれる銀行USHAだ。
 USHAは、セックスワーカーが運営する、アジアで最大の財政機構で、セックスワーカーが共同で所有し、運営している。インドの西ベンガル州において、投資の回収率の高さではトップクラス(90%以上)。コミュニティーによって運営されている組織community-managed organizationに対して、この国で最大の社会的市場経済で、コンドームを年間350万個配布している。最近では、17,082人のセックスワーカーがメンバーとして参加している。取引高は年間270万USドル、固定資産は100万USドル以上あり、年に4,000から5,000人のメンバーが貸し出しを受けている。
 USHAができるまでは、セックスワーカーという肩書では、銀行口座を開いたり、銀行からお金を借りたりすることはできなかった。セックスワーカーたちは、賃貸の領収書、電話料金書等、いかなる有効な書類も持つことができず、彼女らが仕事をするために部屋を借りることを、この土地の法律(ITPA法)が妨げる。そのため、ことあるごとに、彼女らは夫を連れていくか、もしくは偽の夫をでっち上げて銀行口座を開くよう要求された。
 緊急事態においては、セックスワーカー達はよく売春エリアを訪れる金貸しに頼らねばならなかった。それらの金貸しは個人それぞれが金融機関とつながっているわけではないので、かれらは沢山の「取引先」を開拓する必要がある。しかしこういった「取引」の利息率は最低でも300%に達する。
 一度HIV/STDに感染したセックスワーカーは、たくさんのお金を健康維持サービスに使うことになり、金貸しからローンを組まされることになった。
 こうした背景が、セックスワーカーのための財政的機構を作ることにつながり、USHAが創生した。
 USHAが提供するサービスは、信用組合として機能し、メンバーにお金を貸すこと以外に、HIV/STD予防介入プログラムやリプロダクティブヘルスプログラムを行っているさまざまな団体にコンドームのソーシャルマーケティングを行っている。また、セックスワーカーのための職業訓練を提供し、market linkageを確立する。
 その他コミュニティとの関わりでは、様々な活動に財政的な支援を提供し、セックスワーカーとその家族を元気づける(能力形成と社会活動)こと、SWの子供に教育機会を作ること、HIV陽性女性を支援すること、ARTのトリートメントと食べ物のサプリメントを提供することなどがある。
 USHAがセックスワーカーコミュニティーの政治的闘争の一部分をなしているという部分では、セックスワーカーの「政策決定連合フォーラムthe joint policy making forum 」の一員である、ということである。フェスティバルをオーガナイズしたインドの団体Durberを取り仕切っている構成団体には、ほかセックスワーカーの共同団体も含まれる。つまり、DMSC、Amra Padatik、komal GandharとSathi Sangathanである。
 現在、数十のメジャーな金融機関(銀行、保険会社等)がセックスワーカーにアプローチし、サポートを申し出ている。セックスワーカー集団は彼ら(金貸し)が利息率を明かす前に、取り分を記録するよう条件をつけることができた。セックスワーカー集団を含む、国内の小数派集団も、USHAの専門家を雇うことにより同様の実践を行った。そして、USHAは国民協同組合連盟(Federation of National Cooperative Union)のメンバーとなった。