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第20回国際エイズ会議 参加報告書
 

独立行政法人 国立国際医療研究センター病院
エイズ治療・研究開発センター
土屋 亮人

自分が関わっている分野を中心としたテーマの報告

今回、私が報告させて頂く第20回国際エイズ会議のTrack B: Clinical Researchは、臨床研究の分野で大変興味深い研究報告が数多く見られた。特に、Clinical trialやCohort studyの結果、そして新規治療法などについて新しい知見が得られた。

Antiretroviral Therapy: Not All Strategies Are Created Equal(TUAB01)では、核酸系逆転写酵素阻害剤(Nucleos(t)ide reverse transcriptase inhibitor: NRTI)の代わりにCCR5阻害剤(CCR5 inhibitor)であるMaraviroc(MVC)を1日1回服用するMODERN Studyが報告されていた(TUAB0101)。HIV RNA量が1000 copies/ml以上、薬剤耐性のないAntiretroviral therapy(ART)- naïveの患者をMVC 400mg 1日1回服用とプロテアーゼ阻害剤(Protease inhibitor: PI)であるDarunavir/Ritonavir(DRV/r)800mg/100mg 1日1回服用の組み合わせ群(n=396)とNRTIであるTruvada(TVD)(Tenofovir disoproxil fumarate/Emtricitabine: TDF/FTC)300mg/200mg 1日1回服用とDRV/r 800mg/100mg 1日1回服用の組み合わせ群(n=401)との2群に分けて治療を行ったところ、48週目のHIV-1 RNA <50 copies/mlの割合はそれぞれ77.3%(396例中306例)、86.8%(401例中348例)とTDF/FTC + DRV/r群の治療効果の方が高い結果となった。また、48週目のCD4陽性細胞の上昇数はそれぞれ195.3 cells/mm3、193.9 cells/mm3とほぼ同等であった。MVC + DRV/rは通常ではあまり使用しない組み合わせではあるが、NRTI-sparingとしては使用することのできるレジメンの1つになりうる可能性があると考えられた。

続いて、SAILING Studyで薬剤耐性歴のあるインテグラーゼ阻害剤(Integrase strand transfer inhibitors: INSTI)未治療患者のDolutegravir(DTG)を用いた治療の報告があった(TUAB0104)。HIV RNA量が400 copies/ml以上で、少なくとも2つのクラス以上に薬剤耐性歴のあるINSTI 未治療患者において、INSTI であるDTG 50mg 1日1回服用とバックグラウンドとして2つのNRTI服用の組み合わせ群(n=354)と同じくINSTI であるRaltegravir(RAL) 400mg 1日2回服用とバックグラウンドとして1~2つのNRTI服用の組み合わせ群(n=361)との2群に分けて治療を行ったところ、48週目のHIV-1 RNA <50 copies/mlの割合はそれぞれ70.9%(354例中251例)、64.0%(361例中230例)とDTGを含む群の治療効果の方が有意に高かった(p=0.03)。そしてINSTI への耐性の出現数は、DTGを含む群で1.1%(354例中4例)、RALを含む群で4.7%(361例中17例)とRALを含む群の方が有意に多かった(p=0.003)。この結果から、2つのクラス以上の薬剤耐性歴のあるINSTI 未治療患者において、DTGはRALに比べて治療効果がやや高く、INSTI への耐性の出現頻度は低いことが示されていた。

また、Clinical trialの報告としては、1日1回1錠服用の合剤Stribild(STB)(Elvitegravir/Cobicistat/Emtricitabine/Tenofovir disoproxil fumarate: EVG/COBI/FTC/TDF)に関する報告(WEPE060、WEPE063)や同様に1日1回1錠服用の合剤Complera(Rilpivirine/Emtricitabine/Tenofovir disoproxil fumarate: RPV/FTC/TDF)とAtripla(Efavirenz /Emtricitabine/Tenofovir disoproxil fumarate: EFV/FTC/TDF)との比較(WEPE064)、DTGの治療効果のMeta-analysis(WEPE061)など優れた治療成績を発表したものが多く、ポスター会場でも多数の人が集まっていた。抗HIV薬血中濃度の報告としては、Pharmacokinetics: Here to Reassure(THPDB01)において、やはり新しいINSTIであるEVGに関連した発表が目を引いた(THPDB0102、THPDB0104)。
参考となった研究発表の内容とその理由

Avant Garde ART: Novel Targets and Gene Therapy(TUPDA01)では、化合物ライブラリーからの新しい非核酸系逆転写酵素阻害剤(Non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor: NNRTI)のスクリーニングの報告があった(TUPDA0102)。既存のクラスの新しい抗HIV薬は予防投与に使用できる可能性もあることから、このような優れた方法で候補となる薬剤を探索することは重要であると感じた。また、induced pluripotent stem cells(iPSCs)からのマクロファージの作成の報告(TUPDA0103)では、HIVの感染実験に用いるマクロファージを必要な分だけ作成できることなど面白い研究の報告であった。

また、Immune Effector Mechanisms(THPDA01)では、サルを用いた実験において、Gagを発現させたセンダイウイルスワクチンを使用して特異的CD8陽性T細胞を誘導し、ウイルス量を減少させた報告があった(THPDA0102)。HIVのワクチン開発は非常に難しいが、この研究成果は今後に期待が持てる内容であった。
会議の成果を国内で還元する具体的計画

今回の会議で得られた多くの知見は、国内でのHIV/AIDS治療および臨床研究の中心機関である独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センターのリサーチ・カンファレンスにおいて報告する予定である。また、この会議から今後の研究に役立つ情報も多数得られたことから、国内の学会発表や論文発表時にAbstractを参考文献として用い、広く国内外へと報告したいと思う。
会議の感想

今回は4年ぶり3回目の国際エイズ会議への出席であったが、前回や前々回と同様に、この会議は基礎医学から臨床医学、疫学、社会科学など幅広い分野の方々が一堂に会し、それぞれの専門領域を越えてエイズという世界的な問題と立ち向かい、共に解決して行こういう姿勢がとても素晴らしいと改めて感じた。ただ、基礎医学や臨床医学の発表が年々少なくなってきているように思われ、これらの分野の発表が増え、もっと活発な議論ができるようになれば良いと思った。