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第20回国際エイズ会議 参加報告書
 

SWASH
水嶋かおりん

2014年7月20日~25日オーストラリアのメルボルンにて行われた国際エイズ会議に参加してきた。

まず初めに、今回の会議に参加予定の方々が搭乗していた、オランダからマレーシアに向かう途中の飛行機が、ウクライナ上空で追撃事故に遭遇し、エイズ研究・NGO関係者6名 が亡くなってしまいました。不慮の事故に遭遇した方々に心からご冥福をお祈り申し上げます。また、世界の紛争状態における国々が一日でも早く平和が訪れることを心から願っています。

今回のエイズ会議のテーマでは、「だれもおいていかない。」というスローガンが掲げられた。

全体の様子と、私自身がセックスワーカーでもあることから、key-population (エイズ予防の鍵となる人々。日本では個別施策層)のセックスワーカーグループが行っている、世界のセックスワーカーサポートや衛生管理、行政の取り組みなどについてレポートします。

セックスワーカーコミュニティの会議にはオーストラリアを始め、パプアニューギニア・東ティモール・インドネシア・ミャンマー・タイ・バングラデシュ・スウェーデン・フィンランド・アメリカ等、世界30カ国からの参加があった。そして、オーストラリアで結成されているセックスワーカー労働者連合スカーレットアライアンスが主体となって各国々への対応に尽力したことによって素晴らしいセッションの数々が行われた。

エイズ会議に先立ち行われたセックスワーカープレカンファレンスでは、アドボカシー(政策提言)・ファンディング (資金調達)・メディカル(コンドーム使用ケアや新しい治療について)・マイグラント(移住労働者)・スティグマ(差別や偏見)について話し合われた。私が参加したメディカルな分野についてのグループディスカッションでは、コンドームエビデンス(セックスワークが犯罪化されている地域ではコンドームを証拠に逮捕される)に模した、PrEPエビデンスが行われた場合の問題が話し合われ、感染予防の投薬に関しては効果があっても社会環境的予防策には逆効果であり、セックスワーカーがコンドームを一番に考えて予防に取り組もうとする動きが考慮されなくなるのでは?という懸念が指摘された。また、プレカンファレンス全体の中で尊重されていたことが、英語のわかる人々が主体となって物事を決めて行くのに対し、英語が分からない人々にこそ発言する機会をもっと増やしていくことも必要なことという考えで、本会議でのステイトメント発表の際はあえて英語を母国語としない国の人が読んで、多様性についての主張を体現していた。

セックスワーカーステイトメント:
「生物学医学的アプローチのために、セックスワーカー主導のセックスワーカーのための介入プログラムの資金が削減されていることを、セックスワーカーは懸念する。許可なしの検査が重要視されること、法律的な壁、スティグマと差別の影響、治療やサービスを受けることへの壁により、道徳的判断がされず、質が高く、自由意思による検査、治療、ケア、サポートやサービスを、セックスワーカーが受けることが難しくなる。情報とアクセスは、包括的で、簡単に理解できるものでなくてはならない。セックスワーカーの壁となっている差別的な法律の存在を考慮しないので、現在実施されている生物学医学的アプローチは、失敗するだろう。HIVの迅速検査の導入によって、HIV、STD、BBV(血液によって感染するウィルス)検査が強制され、検査結果の情報を私達がコントロールできなくなるかもしれない。生物学医学的な対応は、職場の健康やセックスワーカーの安全を考慮せずに、押し付けられることが多い。職場の健康やセックスワーカーの安全は、実施の前に検討されるべきである。セックスワーカーは、自分達に益するのかどうか、どのように益するのかを選択するための相談や十分な情報なしに、関与することを強制されている。セックスワーカーは、検査するようにという圧力を政府から受け、既存のセーフ・セックスの方法の代わりに、PrEP(暴露前予防投薬)を使用するようにという圧力を客から受けている。新しいアプローチは、セックスワーカーのニーズには合っていない。セックスワーカー主導のセックスワーカーのためのプログラムのための資金援助を維持し、増額することが必要である。セックスワーカーが直面する法律的な壁は、重要課題である。この問題がまず解決され、セックスワークが非犯罪化されなくては、予防としての治療や検査は、セックスワーカーにとっては意味のない、抽象的コンセプトでしかなく、有効なアプローチから資源を奪うだろう。予防としての治療が重要とされるなら、私たちに得るものはないというのがセックスワーカーにとっての現実である。PrEP(暴露前予防投薬)や早期治療は、コンドームと同様、警察によって証拠として使われるだろう。迅速検査は迅速な犯罪化である。セックスワーカーは言う。これはサポートのためではなくコントロールのための検査である。」

今回、医学雑誌「ランセット」ではセックスワークの非犯罪化がHIV予防にとって急務であると報告されたことがエイズ会議の中でも注目されていた。社会環境の構築によって人命が守られることへの明確なエビデンスが提示されたと言っても過言ではない。

今回の会議で特に注目すべきところは、key-populationの中のMSMやSW(Sex Worker)の分野でしか語られず、MSMであれば男性的に、SWの中ではセックスワーカーとしてだけの扱われ方に特化されてきたトランスジェンダーの人々が、「自分たちをMSMの中に押し込めないで欲しい」、と徹底した姿勢をとっていたことである。ムスリム(イスラム)の国での厳しい差別の中に生きている人は、吊るし首にされ石を投げられリンチされる状況を語り、彼ら、彼女らへの健康支援の前に人道的、宗教的、国際的な支援の必要性を訴える場面を大変多く垣間見て、多くの共感と理解を得ていた。国連機関やヒューマンライツウォッチ、UNWOMANのパネリストとのセッションで悲惨な状況を語っていた。

どんなに言葉の壁があっても悲しみの感情のテレパシーは人種や国境を超えるのだと感じた。

ドラッグユーザー側では、国の支援を受けるためにあえてHIVポジティブの人の注射の使い回しをする人がいるためにHIV感染者が増えている、という誤った報告が上がり、それに対してドラッグユーザーコミュニテーでは大きな反論がおこった。

また、セックスワークが犯罪化されている国々ではコンドームエビデンスで不当な逮捕をうけるセックスワーカーがいることでコンドームの所持が危うく、プロテクション無しのセックスワークをしなければならなくなることについてセックスワークのdecriminalization(非犯罪化)を訴えてきた。そしてさらに加えて、PrEPというHIV治療薬を事前に内服する感染予防手法をとる、予防のための取り組みがあり、セックスワーカーであることやMSMであることが犯罪化されている国や地域では、PrEPの所持によって疑いをかけられる可能性がでて危険をはらむ。それだけではなく、PrEPの普及によりセックスワークユーザーのリテラシーが落ち、コンドーム使用に対する取り組みを徹底してきたセックスワーカーコミュニティにとっては、健康ケアへの期待がセックスワーカーに対してのみ高まり、ユーザー側からコンドームの不使用を要求するようになるという懸念が叫ばれていた。

私はSWASHのメンバーとしてピアエデュケーションワークショップに参加し、日本におけるスキルズビルディングや活動について発表した。

「ピアエデュケーション」では、セックスワーカーによって自分の身を守ったり、安全に働くための知恵を提供して支え合いの関係を作ることや実際にどのように自分の身体を守りながら仕事をしていったらいいのかという講習を受けた。

生理の時には黒いコンドームを使うこと、ローションは常に持ち歩くことなど基本的なことから高度なスキルを学んだ。またトランス女性のセックスワーカーは、サービスをしながらお客さんの身体をくまなくチェックするために「お互いにカラダの見せあいっこしましょう」と言って病気がないかよくみるという。タイの女性は左手で睾丸を、右手では性器やそのまわりを触るようで、男性器に触れた手は最後まで相手の身体に触れないことを教えてくれた。

会議に参加して

警察、行政、司法や社会福祉などの関係機関にコネクトしてサポートの連携を図ること。国のルールによって衛生管理の方法が異なるため、普及しなければいけないことは、優位な立場に立てるようになるためカラダのケアやメンタルのサポート、セックスワーカーに対する暴力への自衛力、安全性の向上を図るための当事者からの具体的なルールの提案や、危険性やトラブル対応に対して警察に堂々と訴えられることができること、社会保障や保険や労災を提供するための組織化も可能であること。肉体的な安全だけではなく「精神的、社会的安全の確保に繋がり、セックスワークを労働と認めることで守られる命の存在がある」ということを学んだ。

スカーレットアライアンスとILO(国際労働機関)の方などが参加したセッションでは、「セックスワークがまともな仕事じゃないなんて言うけど、まともな仕事かどうかは、どうしたらまともな仕事になるのかと考えたところからまともな仕事である」という言葉に大変な勇気をもらった。「安心安全に働きたい」と思うのはどんな状態で働いていようが労働者としてどの仕事においてもどんな状態においても安全に、セーフティーでいたいという思いは同じであると思った。

「日本におけるセックスワークの労働安全を求める働きかけは人権主張が大きい面倒な人間として扱われ、煙たがられる傾向にあり、社会全体で労働者の権利意識は低く働きがちなので日本全体の労働者の権利に繋がる」と意見したところ、「それならセックスワーカーが日本の労働者のために働きかけをすることでみんなの役に立ち、それからセックスワーカーの労働安全の問題について提言していく、日本の労働者のオピニオンリーダーになってはどうか」という有難い返答に大変な衝撃を受けた。

終わりに

今回このような貴重な機会を得られたことから、この経験や知識を一般市民とセックスワーカーコミュニティに対して還元していくことに尽力したい。